ITエンジニアは客先常駐しかない?自社開発・社内SEという選択肢

  • はてブ

「ITエンジニアのキャリアは、本当に客先常駐しかないの?」と、将来のキャリアに不安や不満を抱えていませんか。

頻繁な環境変化や正当に評価されにくい状況に、焦りを感じている方も多いかもしれません。

この記事を読めば、客先常駐以外の多様な働き方の選択肢を知り、あなたに合ったキャリアパスを見つける具体的なヒントが得られます。

本記事では、自社開発や社内SEといった働き方の実態から、安定して働ける優良企業の見極め方、後悔しないための転職ポイントまでを解説します。

ITエンジニアのキャリアは客先常駐しかないという思い込みを捨て、あなたが本当に望むキャリアを歩み始めましょう。

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TOPICS

ITエンジニアの仕事は客先常駐しかないのか?

客先常駐エンジニア

ITエンジニアのキャリアを考える上で、客先常駐という働き方は非常に一般的な選択肢です。

この章では客先常駐の具体的な実情、その背景にある理由、そして存在する他の働き方について解説します。

  • IT企業の90%以上が客先常駐を実施している実情
  • IT業界に客先常駐が多い3つの理由
  • 客先常駐ではない企業がある現実

IT企業の90%以上が客先常駐を実施している実情

多くのITエンジニアにとって、客先常駐はキャリアの中で一度は経験する可能性が高い働き方です。

その実態は、複数の公的な調査結果で明らかになっています。

厚生労働省の調査では、IT企業全体の92.3%が客先常駐を実施しているという結果が出ています。さらに深刻なのはその内訳で、約28.8%の企業では、所属する開発エンジニアの7割以上を客先常駐で補っているのが実情です。

また、情報労連が2021年に公表した別の調査結果でも、IT企業の約8割が客先常駐者を受け入れていると回答しました。

この調査によると、約3割の企業では所属するITエンジニアの6割以上が客先常駐で働いており、一部の技術者だけでなく多くの人が会社の外で業務に従事している現状が分かります。

常駐期間を見ても、この働き方が一時的なものではないことが明らかです。

最も多い常駐期間は2年から5年で全体の約4割を占め、6年以上の長期常駐者を含めるとその割合は半数を超えます。

これは、プロジェクトが終われば自社に戻るという単純なサイクルではなく、キャリアの大部分を顧客先で過ごすエンジニアが多いことを意味します。

自社との関係性が希薄になることも問題です。自社への出社頻度は月に1回程度という回答が半数を超えており、数ヶ月に一度しか帰社しないケースも珍しくありません。

このように、多くのIT企業で客先常駐が常態化しており、エンジニアは長期間にわたって自社から離れた環境で働くことが一般的です。

出典:厚生労働省「働き方・休み方改善ハンドブック」
   情報産業労働組合連合会「ITエンジニアの労働実態調査」

IT業界に客先常駐が多い3つの理由

IT業界で客先常駐という働き方が広く浸透している背景には、主に3つの構造的な理由が存在します。

これらの要因が複雑に絡み合うことで、客先常駐が便利な仕組みとして定着しています。

  • 日本特有の多重下請け構造
  • 慢性的なIT人材の不足
  • セキュリティと情報管理の問題

日本特有の多重下請け構造は、客先常駐が広まった大きな要因です。

これは元請け企業が受注した業務を、二次請け、三次請けへと再委託する仕組みです。元請け企業は必要な時に必要な人材を外部から確保でき、自社で技術者を過剰に抱えるリスクを避けられる利点があります。

慢性的なIT人材の不足も、客先常駐を後押ししています。

技術の進化が速く、新しいスキルを持つエンジニアの需要は常に高いため、多くの企業は自社だけで人材を確保することが困難です。結果として、特定の技術を持つエンジニアを必要な期間だけ外部から調達する客先常駐の形態が活用されています。

セキュリティと情報管理の観点も、客先常駐が必要とされる理由です。

金融機関のシステムや企業の機密情報を扱う開発では、情報漏洩リスクを最小限に抑える必要があります。社外へのデータ持ち出しを厳しく制限する顧客は多く、必然的に顧客のオフィスで作業しなければなりません。

これらの要因が組み合わさり、客先常駐はIT業界で合理的な働き方として広く採用され続けています。

客先常駐ではない企業がある現実

客先常駐が一般的という現実はあるものの、すべてのエンジニアがその道を選ぶわけではありません。

実は、自社内で腰を据えて働ける企業の数は多く、その需要は年々高まりを見せています。

厚生労働省の調査によれば、客先常駐者の割合が30%未満という、自社勤務が中心の企業はIT業界全体の約4割にも上ります。これは10社のうち4社は客先常駐に依存しない働き方を実現していることを示しており、転職市場には想像以上に多くの選択肢が存在するのです。

この流れを力強く後押ししているのが、一般企業におけるIT人材の内製化という大きなうねりです。

情報処理推進機構の報告を見ると、過去10年間でIT企業に所属する技術者が約31%増えたのに対し、一般企業に所属するIT人材は約34%も増加しました。

この数字は、多くの企業がIT部門を外部委託から自社の中核事業へと転換しようとしている明確な証です。

その背景には、経済産業省が警鐘を鳴らす2025年の崖といった課題への対応や、全社的なデジタルトランスフォーメーションの推進があります。

結果として、自社の事業を深く理解した社内SEのような人材への需要が、今まさに急拡大しています。

具体的なキャリアとしては、自社のWebサービスを育てる自社開発企業やSaaS企業がまず挙げられます。

さらに、病院内で情報システムを支える院内SEという専門職も、安定した働き方を求めるエンジニアから大きな注目を集めています。

このように、客先常駐以外のキャリアパスは決して特別なものではなく、社会的な需要の増加と共に、その門戸は確実に広がり続けているのです。

出典:厚生労働省「働き方・休み方改善ハンドブック」
   独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2021」

客先常駐のメリット

客先常駐で顧客と会議するエンジニア

客先常駐という働き方は多くの課題を抱えていますが、エンジニアの成長につながる明確なメリットも存在します。

この章では、多様な経験とコミュニケーション能力の向上という、客先常駐がもたらす2つの大きな利点について解説します。

  • 多様な現場で幅広い経験が積める
  • 人脈やコミュニケーション力が身につく

多様な現場で幅広い経験が積める

客先常駐の大きな魅力は、一つの企業に所属するだけでは得られない、多種多様な経験を短期間で積める点です。

プロジェクトごとに業界や技術環境が変化するため、エンジニアは常に新しい知識と技術を吸収する機会に恵まれます。

例えば金融業界のプロジェクトに参加すれば、ミッションクリティカルなシステムに求められる極めて高い堅牢性やセキュリティ対策を学べます。そこでは、厳格な品質管理や障害を未然に防ぐ設計思想を、実践を通じて深く理解できるでしょう。

また、Webサービス系の企業に常駐した場合は、全く異なる技術課題が待っています。

大量のアクセスを処理するためのスケーラビリティを重視したインフラ構築や、利用者の満足度に直結するUIUXの改善などに取り組むことになるのです。

さらに製造業の生産管理システム開発に携われば、工場の業務フローを深く理解し、ハードウェアと連携するIoT技術に触れる貴重な経験もできます。

このように、異なる業界のプロジェクトを渡り歩く経験は、それぞれのビジネスルールや技術要件への深い理解を促します。

結果として、特定の技術領域に偏らない多角的な視点と、応用力の高い技術スキルを養える点は、客先常駐がもたらす大きな価値なのです。

人脈やコミュニケーション力が身につく

客先常駐のもう一つのメリットは、技術力と並行して、ビジネスの最前線で通用するコミュニケーション能力を養える点にあります。

自社の同僚だけでなく、顧客企業の社員や他社のエンジニアなど、様々な立場の人々と協力して仕事を進める経験は、エンジニアとしての視野を大きく広げてくれます。

例えば、ITに詳しくない顧客担当者へシステムの仕様を説明する場面は日常茶飯事です。専門用語を避け、相手の目線で言葉を選ぶ訓練を繰り返すことで、論理的で分かりやすい説明能力が自然と磨かれていきます。

また、プロジェクトの会議では、部署や役職によって異なる利害を調整し、全員が納得するゴールへと導く重要な役割を担います。利害が対立する中で合意形成を図る経験は、実践的な交渉力と調整能力を育むでしょう。

こうした対人スキルは、単独で開発するだけでは得難いものです。

技術力とビジネス遂行能力を兼ね備えた人材は市場価値が非常に高く、将来的にプロジェクトリーダーや社内SEといった役職を目指す上で、客先常駐で得た経験は強力な資産となるのです。

客先常駐のデメリット

デメリットを感じているエンジニア

客先常駐には成長機会がある一方で、多くのエンジニアが直面する見過ごせないデメリットが存在します。

この章では、勤務環境、評価、キャリア形成という3つの観点から、その具体的な問題点を解説します。

  • 勤務地や勤務時間が安定しない
  • 給与や評価が上がりにくい
  • スキルアップやキャリア形成が難しい

勤務地や勤務時間が安定しない

客先常駐の働き方がもたらすデメリットは、勤務地や労働環境が自らの意思と関係なく変動し続ける不安定さです。

エンジニアはプロジェクトの契約期間が終了するたびに、次の常駐先へ移動することを余儀なくされます。その契約がいつ終了するかは顧客の都合次第であり、常に先行きが不透明な状況に置かれます。

新しい常駐先が自宅から通勤可能な範囲である保証はなく、時には片道2時間以上かかる遠隔地へ通うことになるケースも珍しくありません。

勤務時間や休日といった労働条件も、常駐先の企業の就業規則に従うことになります。

そのため、以前の現場では定時退社が当たり前だったにもかかわらず、次の現場では長時間労働が常態化しているという環境の激変も起こり得ます。

有給休暇を取得する際にも、自社の上司と客先の責任者の両方から承認を得る必要があり、気軽に休みを取りにくいという精神的な負担も大きいです。

このような環境の不安定さは、特に家庭を持つ年代のエンジニアにとって、プライベートの計画を立てにくくさせる大きなストレス要因となります。

給与や評価が上がりにくい

客先常駐では多重下請け構造による中抜きと評価の不透明さにより、努力に見合った給与アップや適正な評価を受けることが困難です。

多重下請け構造では、エンドユーザーが支払った開発費用から、元請け、二次請けといった上位の企業がそれぞれ中間マージンを差し引いていきます。そのため、実際に現場で開発作業を行う下層の企業のエンジニアに支払われる報酬は、本来の市場価値よりも低くなる傾向です。

例えば、顧客がエンジニア一人あたり月額80万円を支払っていたとしても、複数の企業を経由するうちに、エンジニア自身の給与はその半分程度になってしまうこともあります。

さらに、評価制度の不透明さも昇進や昇給を妨げる大きな要因です。

評価を行うべき自社の上司は、エンジニアが日常的に働く客先の現場にはいません。月に一度の帰社日などで業務報告をするだけでは、現場での成果や貢献度を正しく理解してもらうことは困難です。

どれだけ客先で高い評価を得ていても、それが自社内での昇進や給与アップに結びつかず、長年にわたってモチベーションが削がれてしまうのです。

スキルアップやキャリア形成が難しい

客先常駐という働き方は、エンジニアが思い描くキャリアプランの実現を時に阻みます。

その背景にあるのが、所属企業のビジネスモデルです。

多くの場合、個々のエンジニアの成長よりも、会社の利益、つまりエンジニアの稼働率を最大化することが最優先されてしまうのです。

その結果生まれるのが、俗に言う案件ガチャという状況です。

技術者の希望やスキルセットとは関係なく、その時に空いているプロジェクトへ機械的に割り当てられることが頻繁に起こります。

例えば、設計や開発といった市場価値の高いスキルを磨きたいと願っていても、テストや保守運用といった下流工程の案件に長期間従事させられることもあります。

また、世の中では新しい技術が次々と生まれているにもかかわらず、古いシステムを扱うプロジェクトに固定され、時代遅れの技術者になってしまうリスクも潜んでいます。

Web開発を志して入社したはずが、COBOLシステムの保守やExcelでの資料作成に明け暮れる、という話も決して珍しくはありません。

このように、自身のキャリアを会社に委ねてしまうと、意図しない方向へ時間が過ぎてしまう危険が伴います。

数年後に市場価値が上がらないままになっていた、という事態を招く可能性も十分に考えられるのです。

客先常駐以外のIT企業での働き方

IT企業ではたらくエンジニア

ITエンジニアのキャリアは客先常駐だけに限られるわけではなく、多様な選択肢が存在します。

この章では、以下の4つの代表的な働き方について、その特徴と魅力を解説します。

  • 自社開発企業での勤務スタイル
  • 受託開発企業での業務形態
  • 一般企業の社内SEとしての働き方
  • プライム案件を担当する大手SIerの働き方

自社開発企業での勤務スタイル

自社開発企業での働き方は、自社が企画する製品やサービスを、自分たちの手で作り上げていくスタイルです。

エンジニアは単なる開発者ではなく、事業の成長に直接貢献する重要な存在として位置づけられます。

この働き方の最大の魅力は、一つのプロダクトに深く関与できる点です。企画の初期段階から、設計、開発、リリース、そして運用後の改善まで、一貫して携わることができます。

ユーザーからのフィードバックを直接受け取り、それを次の機能開発に活かすといったサイクルを繰り返す中で、プロダクトと共に自分自身も成長していく実感を得られるでしょう。

エンジニアの技術力が企業の競争力そのものであるため、多くの企業は技術への投資を惜しみません。

最新のプログラミング言語やフレームワーク、クラウドサービスなどを積極的に採用する文化があり、エンジニアは常に新しい技術を学び続けられる環境に身を置くことができます。

また、勤務地は自社のオフィスに固定され、同じ目標を持つチームメンバーと長期的に関係を築きながら開発を進めます。そのため、チーム内での知識共有も活発で、一体感を持って仕事に取り組めます。

外部の顧客の都合に左右されることなく、自分たちの裁量で開発スケジュールを調整しやすいため、ワークライフバランスを保ちやすいことも大きな利点です。

プロダクトと共に自分自身も成長させたいと考えるエンジニアにとって、非常にやりがいのある働き方です。

受託開発企業での業務形態

受託開発企業での働き方は、顧客企業からシステム開発の依頼を受け、そのプロジェクトを自社のオフィスで完結させる業務形態です。

客先常駐とは異なり、勤務地が自社に固定されているため、安定した環境で働くことができます。

この働き方の特徴は、客先常駐のように多様な業界のプロジェクトに携われる点と、自社開発企業のように安定した開発環境で働ける点です。

例えば、金融機関向けの堅牢なウェブアプリケーション開発を終えた後、次は製造業向けの生産管理システム、その次は医療機関向けの予約システムといったように、短期間で様々なドメイン知識と技術スキルを習得できます。

プロジェクトは基本的に自社のエンジニアで構成されたチームで進められます。

自社のプロジェクトマネージャーの指揮のもと、慣れ親しんだ同僚と共に、自社の開発プロセスやツールを使って作業に集中できます。

技術的な課題が発生した際にも、社内の他の専門知識を持つエンジニアに気軽に相談できるため、問題を迅速に解決しやすい環境です。

また、勤務時間や休日のルールは自社の就業規則に従うため、労働環境がプロジェクトごとに変わる心配がありません。有給休暇の取得も社内での調整のみで完結するため、プライベートの予定も立てやすいです。

多様な経験を積みながらも、腰を据えて働きたいと考えるエンジニアにとって、非常にバランスの取れた選択肢です。

一般企業の社内SEとしての働き方

社内SEとは、IT企業ではなく、メーカーや金融、小売といった様々な事業会社の情報システム部門などで働くエンジニアのことです。

客先常駐とは対照的に、自社の事業をITの力で支え、発展させることが主な役割です。この職種の需要は、企業のデジタルトランスフォーメーション推進の動きに伴い、急速に高まっています。

社内SEの業務内容は多岐にわたりますが、中心となるのは社内システムの企画や要件定義、開発、運用保守です。時には外部のIT企業に開発を委託する際のベンダー管理や、会社全体のIT資産を管理する役割も担います。

開発の対象は自社の業務システムであり、ユーザーは同じ会社の社員です。

そのため、ユーザーの業務を深く理解し、感謝の言葉を直接聞く機会も多く、事業に貢献している実感を強く得られます。

外部の顧客からの厳しい納期に追われる場面は比較的少なく、社内での調整が業務の中心となるため、残業時間が少なくなる傾向があります。

安定した雇用環境と規則正しい生活リズムを実現しやすく、ワークライフバランスを重視するエンジニアにとって非常に魅力的な働き方です。

プライム案件を担当する大手SIerの働き方

大手SIerでプライム案件を担当するという働き方は、顧客企業から直接プロジェクトを受注する元請けの立場で、システム開発の最上流工程から関わるスタイルです。

客先常駐で問題となりがちな多重下請け構造の弊害を受けることなく、プロジェクト全体を主導する役割を担います。

この働き方の醍醐味は、社会的な影響力が大きい大規模なプロジェクトに、中心的な立場で携われる点です。

例えば、大手金融機関の次世代基幹システムの構築や、官公庁の国民向けオンラインサービスの開発など、数多くの人々の生活や社会インフラを支えるシステムの誕生に深く関与できます。

主な業務は、顧客の経営課題をヒアリングし、それを解決するためのシステムを企画する要件定義や、システムの全体像を描く基本設計といった上流工程です。

プログラミングなどの実装作業は、協力会社である下請け企業に委託することが多くなります。

そのため、個別の技術力以上に、プロジェクト全体を俯瞰し、多くの関係者をまとめ上げるプロジェクトマネジメント能力や、顧客と交渉するコンサルティング能力が求められます。

協力会社のエンジニアへの技術的な指導や進捗管理も重要な仕事の一つです。

多くの人を動かし、大規模なプロジェクトを成功に導く経験を通じて、エンジニアとしてだけでなく、ビジネスパーソンとして大きく成長できるキャリアパスです。

客先常駐なしのIT企業を見分ける方法

面接で自社開発サービスの詳細を聞くエンジニア

客先常駐ではない企業への転職を成功させるためには、求人情報や企業サイトからその実態を正確に見抜く必要があります。

この章では、自社勤務の企業を見分けるための5つの具体的なチェックポイントについて、その理由とともに詳しく解説します。

  • 求人票で勤務地・勤務時間が明記されているか確認
  • 自社サービスの開発・運営を行っているか調べる
  • オフィス規模と社員数が見合っているかチェックする
  • 取引先に同業者が多いかを確認する
  • 求人サイトや企業サイトで仕事風景の写真を見る

求人票で勤務地・勤務時間が明記されているか確認

求人票に勤務地と勤務時間が具体的かつ確定的に記載されているかどうかは、客先常駐企業かどうかを判断するポイントです。

自社勤務の企業であれば、勤務地は自社のオフィスに固定されているため、具体的な住所を明確に記載できます。

例えば、東京都渋谷区〇〇ビル12Fのように、番地やビル名まで特定して書かれている場合、自社勤務である可能性が非常に高いと判断できます。

一方で、客先常駐がメインの企業は、エンジニアがどのプロジェクトに配属されるかによって働く場所が変わるため、勤務地を特定できません。

そのため、本社またはプロジェクト先、首都圏各地、都内23区といった曖昧な表現を用いざるを得ないのです。

このような記載がある求人は、客先常駐の可能性が高いと考えられます。

勤務時間の表記にも注意が必要です。

自社勤務であれば、10:00から19:00のように具体的な就業時間が記載されますが、客先常駐の場合はプロジェクトにより異なる、常駐先に準ずるといった注釈が加えられることが一般的です。

また、月に1回の帰社日といった記述も、普段は社員が自社にいないことを示唆する重要なサインです。

これらの情報を注意深く確認するだけで、多くの客先常駐企業を候補から除外できます。

自社サービスの開発・運営を行っているか調べる

企業の公式サイトを訪れ、事業内容の項目を詳しく確認することは、自社開発企業を見分けるための確実な方法です。

自社の製品やサービスを開発している企業は、それが収益であるため、公式サイトで積極的にアピールしています。

例えば、フリマアプリのメルカリや、人事労務ソフトのSmartHRのように、具体的なサービス名とその内容がトップページで紹介されていれば、それは間違いなく自社開発企業です。

エンジニアの採用ページでも、自分たちが開発しているサービスの魅力や、使用している技術スタックについて詳しく説明しているはずです。

一方で、客先常駐を主な事業とする企業は、自社独自のプロダクトを持っていないことがほとんどです。

そのため、公式サイトの事業内容には、お客様のビジネス課題をITで解決、幅広い業界でのシステム開発実績といった抽象的な表現が並びます。

これは、自社の具体的な成果物ではなく、あくまで他社への技術提供がビジネスの中心であることを示しています。

さらに、事業内容の欄にSES、ITアウトソーシング、技術者派遣といった単語が明記されている場合は、客先常駐を事業の柱としていることの明確な証拠です。

これらの言葉を見つけたら、慎重に判断しましょう。

オフィス規模と社員数が見合っているかチェックする

企業の従業員数と、公式サイトに掲載されているオフィスの写真や規模感を比較検討することも、客先常駐企業を見分けるための有効な手段です。

自社勤務が基本の企業であれば、全従業員が快適に働けるだけの執務スペースや会議室、休憩スペースなどを備えているはずです。

従業員数が500名であれば、それにふさわしい広さのオフィスフロアや設備があるのが自然です。

企業の採用サイトでは、社員が生き生きと働くオフィスの様子を写真で公開し、魅力的な労働環境をアピールしていることがよくあります。

しかし、客先常駐を主たる事業としている企業の場合、ほとんどのエンジニアは顧客先で業務を行うため、自社オフィスに従業員全員分の座席を用意する必要がありません。

自社には、営業担当者や管理部門の社員など、ごく一部の人員しかいないため、オフィスの規模は非常に小さくなります。

そのため、企業のウェブサイトで従業員数が数百名と記載されているにもかかわらず、掲載されているオフィスの写真が、どう見ても数十人しか入れないような小規模な会議室や受付の写真だけであれば、注意が必要です。

この従業員数とオフィス規模の明らかな不一致は、ほとんどの社員が社外で働いていることを強く示唆しています。

取引先に同業者が多いかを確認する

企業の公式サイトに記載されている主要取引先の一覧は、その企業のビジネスモデルや業界内での立ち位置を理解するための重要な情報源です。

この一覧を注意深く見ることで、客先常駐を事業の中心としている企業かどうかを高い確度で見抜くことができます。

自社開発企業や一般企業の社内SEの場合、取引先は自社の製品やサービスを利用する顧客、あるいは原材料などを仕入れる企業になります。

例えば、トヨタ自動車、三菱UFJ銀行、ソニーといったように、多様な業界のエンドユーザー企業が並ぶのが一般的です。

これらは、その企業が顧客と直接ビジネスを行っていることを示しています。

一方で、客先常駐を行う企業の取引先一覧には、NTTデータ、富士通、日立製作所といった大手SIerや、同業のIT企業ばかりが名を連ねていることがよくあります。

これは、その企業が多重下請け構造の一部として、上位のIT企業から仕事を受け、自社のエンジニアを派遣しています。

つまり、顧客はエンドユーザーではなく、元請けや二次請けのIT企業なのです。

取引先一覧に同業のIT企業名ばかりが並んでいる場合は、その企業が客先常駐を主たるビジネスとしている可能性が極めて高いと判断できます。

求人サイトや企業サイトで仕事風景の写真を見る

企業が発信する写真や画像は、文章以上にその会社の実際の働き方や文化を正直に映し出します。

求人サイトや企業の公式サイトに掲載されている仕事風景の写真を注意深く観察することで、客先常駐が中心の企業かどうかを推測できます。

自社勤務の企業は、自社のオフィスで働く社員の様子を自由に撮影できるため、写真のバリエーションが豊富です。

エンジニアがデスクで集中してコーディングしている姿、チームでホワイトボードを囲んで議論している活気あるミーティング風景など、リアルで自然な日常を切り取った写真が多数掲載されています。

これらの写真は、その企業がオープンな文化を持ち、社員が実際にその場所で働いていることの証拠です。

一方、客先常駐がメインの企業は、顧客企業のオフィス内で自由に写真を撮影することがセキュリティ上困難です。

そのため、実際の仕事風景の写真を掲載できず、写真の数が極端に少なかったり、内容が不自然だったりする傾向があります。

例えば、フリー素材と見間違えるほど綺麗なモデルが写っているイメージ写真ばかりが使われている場合は注意が必要です。

実際の開発現場の様子が伝わってくる写真が全くない場合、その企業では社員が自社で働いていない可能性が高いと判断できるでしょう。

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客先常駐から転職すると年収はどう変わるのか?

年収を計算するエンジニア

客先常駐からの転職を考える際、やはり気になるのが年収の変化です。

この章では、以下の3つについて具体的に解説します。

  • 職種別の年収アップ・ダウンの具体例
  • 給与交渉で失敗しないためのポイント
  • 年収以外の待遇面での改善点

職種別の年収アップ・ダウンの具体例

客先常駐から他の働き方へ転職した場合の年収は、選択する職種によって大きく変動します。

キャリアチェンジによって、収入が大幅に向上する可能性もあれば、逆に一時的に下がるケースも存在します。

最も年収アップが期待できる選択肢の一つが、自社開発企業への転職です。

エンジニアの技術力が事業の成功に直結するため、高いスキルを持つ人材には高水準の報酬を提示する企業が多くあります。

例えば、メルカリの平均年収は約1000万円、サイバーエージェントでは約700万円と、非常に高い水準です。

次に、安定した収入と需要の高さで人気なのが社内SEです。

dodaが発表した平均年収ランキング2023によると、社内SEの平均年収は498万円と安定しています。

さらに、キーエンスの平均年収が約2,039万円であるように、所属する企業の業績や規模によっては、極めて高い年収を得ることも可能です。

一方で、院内SEのように、高度な専門性は求められるものの、医療業界全体の給与水準から大幅に高い給与は期待しにくい職種もあります。

しかし、その分、長期的な雇用の安定性という金銭以外の大きなメリットです。

出典:openwork、年収給与制度、株式会社メルカリ
   openwork、年収給与制度、株式会社サイバーエージェント
   doda、企業情報検索、株式会社キーエンス

給与交渉で失敗しないためのポイント

客先常駐からの転職活動において、給与交渉は自身の市場価値を正当な評価に修正するための重要な機会です。

まず認識すべきなのは、多重下請け構造の中で働いてきた多くの客先常駐エンジニアは、本来の実力に見合った給与よりも低い金額を受け取っている可能性が高いという点です。

そのため、現在の年収を基準にするのではなく、自身のスキルや経験が転職市場でどれくらいの価値を持つのかを客観的に把握することが出発点となります。

具体的な交渉の場では、客先常駐で得た経験を積極的にアピールすることが有効です。

例えば、複数の異なるプロジェクトを経験したことを、高い環境適応能力や、多様な業界知識を持つことの証明として説明します。

金融、製造、小売など、関わった業界の業務知識を具体的に語れることは、特に社内SEへの転職で高く評価されます。

自身の市場価値を正確に知るためには、IT業界に特化した転職エージェントの活用が非常に有効です。

転職エージェントは、企業の内部情報や、同じようなスキルセットを持つ他のエンジニアの転職事例を数多く持っています。

彼らから提供される客観的な年収レンジの情報を参考にすることで、現実離れした要求をして機会を失うリスクを避け、自信を持って交渉に臨むことができます。

年収以外の待遇面での改善点

客先常駐からの転職は、年収という数字以上に、働き方全体の質を大きく向上させる可能性を秘めています。

それは日々の生活の質や、将来のキャリアに対する安心感といった、お金では測れない多くのメリットにつながります。

最も大きな変化が期待できるのは、ワークライフバランスの改善です。

客先常駐特有の、顧客の都合による急な残業や休日出勤が減り、自社のルールのもとで計画的に働けるようになります。

これにより、毎日決まった時間に退社して家族と過ごしたり、趣味の時間を確保したりと、プライベートを大切にした規則正しい生活リズムを築きやすくなるのです。

精神的な安定感を得られる点も見逃せません。

勤務地が自社オフィスに固定されるため、プロジェクトごとに人間関係や通勤環境がリセットされるストレスから解放されます。

同じチームの同僚と腰を据えて働く中で深い信頼関係を築き、安心して業務に集中できる環境は、日々のパフォーマンス向上にも直結します。

さらに、キャリアの見通しが立てやすくなることも大きな改善点です。

自社の事業に貢献するという明確な目標に向かい、必要なスキルを計画的に習得していくことが可能になります。

自身の成長が会社の評価に直接結びつく透明性の高い環境で、長期的な視点を持ってキャリアを築いていけるでしょう。

客先常駐を避けて転職・就職するための具体的な方法

転職活動をするエンジニア

客先常駐以外のキャリアを実現するためには、具体的な行動計画と正しい情報の収集が不可欠です。

この章では、以下の具体的な方法を解説します。

  • IT専門転職エージェントの活用方法
  • 非公開求人にアプローチする方法
  • 未経験から客先常駐なし企業へ転職する戦略と方法
  • 新卒から客先常駐なし企業に入社するためのポイント

IT専門転職エージェントの活用方法

客先常駐を避けた転職活動を成功させる上で、IT業界に特化した転職エージェントの活用は極めて有効な手段です。

専門のエージェントは、個人では知り得ない企業の内部情報や、公開されていない求人情報を豊富に保有しています。

転職エージェントを利用する最大の利点は、企業の労働環境に関する詳細な情報を得られることです。

転職エージェントは日常的に企業の採用担当者と連絡を取り合っているため、公式サイトだけでは分からない客先常駐の実際の比率や、社内の雰囲気、残業時間の実態といった具体的な情報を把握しています。

そのため、転職活動の初期段階で客先常駐中心の企業を効率的に除外することが可能です。

また、自身の経歴やスキルを客観的に評価してもらい、市場価値に基づいたキャリアプランの相談ができる点も大きなメリットです。

自分では気づかなかった強みを発見し、それを活かせる社内SEや自社開発企業の求人を紹介してもらえる可能性があります。

複数の専門エージェントに登録し、それぞれの担当者と面談することで、得られる情報の幅と質が向上します。

客観的な視点と専門的な知見を取り入れることで、客先常駐を避けた転職の成功確率を格段に高めることができるでしょう。

非公開求人にアプローチする方法

客先常駐ではない魅力的な企業の求人は、その多くが一般の転職サイトでは見つけられない非公開求人として存在します。

これらの求人にいかにしてアプローチするかが、転職活動の成否を分けます。

企業が求人を非公開にする主な理由は、応募の殺到を避けるためです。

特に労働環境の良い社内SEや、人気の自社開発企業の求人は、公開すると数百件単位の応募が集まり、採用担当者の業務が麻痺してしまいます。

そのため、企業は転職エージェントに依頼し、自社の求める条件に合致した候補者だけを紹介してもらうことで、採用活動の質と効率を高めようとします。

この非公開求人にアクセスする最も一般的な方法は、IT専門の転職エージェントに登録することです。

多くのエージェントでは、保有している求人の大半が非公開求人であり、登録者のみに紹介される仕組みになっています。

これによって、競争率の低い環境で優良な求人に出会う機会が生まれます。

もう一つの有効な方法は、スカウト型の転職サービスを活用することです。

自身の職務経歴やスキルを詳細に登録しておくと、それに興味を持った企業から直接オファーが届きます。

これも、企業が水面下で優秀な人材を探しているケースであり、非公開求人への有力なアクセス手段です。

受け身で待つだけでなく、自ら積極的に情報を取りに行く姿勢が、客先常駐ではない理想の職場を見つけるためには不可欠です。

未経験から客先常駐なし企業へ転職する戦略と方法

IT業界の経験がなくても、最初から客先常駐以外の企業を目指すことは可能です。

ただし、そのためには企業が求めるものを正しく理解し、入念な準備を進める必要があります。

まず、求人情報でよく見る未経験歓迎という言葉を正しく理解することが大切です。

これはIT業界での実務経験がなくても応募できるという意味で、学習意欲が不要というわけではありません。企業が本当に見ているのは、自ら学んで成長できるポテンシャルなのです。

その熱意をアピールするため、まずは基礎的なITスキルを習得しましょう。プログラミングスクールなどを活用して、JavaやPythonといった需要の高い言語や、データベース操作に必要なSQLの知識を学ぶのがおすすめです。

次に、学んだ知識をアピールするために、学習の成果を形にする作業が重要になります。自分自身で考えたウェブアプリケーションなどを作成し、そのソースコードをGitHubで公開してください。

このポートフォリオこそが、あなたの技術力とやる気を証明する最も強力な材料です。

また、AWS認定などの資格を取得することも、知識レベルを客観的に示す上で有効です。

もし、すぐに希望の企業へ就職するのが難しいと感じた場合は、別の道も考えられます。

例えば、教育制度が整った優良なSES企業で2年ほど実務経験を積み、市場価値を高めてから社内SEなどへ転職する方法も、非常に現実的な選択肢です。

自身の状況に合わせて適切な計画を立て、着実に行動することが成功への道筋となります。

新卒から客先常駐なし企業に入社するためのポイント

新卒の就職活動は、キャリアの中で最もポテンシャルが評価される貴重な機会です。

そのため、IT未経験者であっても、正しい準備と企業選びを行えば、客先常駐ではない優良企業に入社できる可能性が十分にあります。

新卒採用では、企業は現時点での技術力よりも、論理的思考力や学習意欲、そして企業文化への適性といった将来性を重視します。この点を最大限に活用することが、客先常駐を避けた就職活動の要点です。

具体的な行動としては、まず早期からプログラミングに触れておくことが挙げられます。大学の講義や独学でスキルを学び、簡単なものでも自分の手でアプリケーションを作った経験は、他の学生との大きな差別化につながります。

その成果をGitHubなどで公開しておけば、学習意欲の高さを示す強力なアピール材料です。

次に有効なのは、インターンシップへの積極的な参加です。

特に自社開発企業が実施するサマーインターンシップなどは、実際の業務を体験できるだけでなく、社員との交流を通じて企業文化を肌で感じることができます。そこで高い評価を得られれば、そのまま内定に繋がることも少なくありません。

そして最も重要なのが、徹底した企業研究です。

企業説明会や面接の場では、この記事で紹介した企業の見分け方を参考に、勤務地は固定されているか、自社サービスの開発に携われるかといった質問を臆せずに投げかけましょう。

自らの手で情報を集め、慎重に企業を見極める姿勢が、後悔のないファーストキャリアの実現につながります。

まとめ

本記事では、「ITエンジニアは客先常駐しかない」という不安を解消するため、客先常駐以外の働き方と、その見つけ方を具体的に解説しました。

自社開発企業や社内SEなど、安定した環境で働ける選択肢は確かに存在します。

重要なのは、求人情報からその実態を見抜く視点です。

求人票の「勤務地」の記載、企業の「自社サービス」の有無、取引先といったポイントを注意深く確認するだけで、ミスマッチは大幅に減らせます。

また、IT業界に特化した転職エージェントを活用することで、一般には公開されていない非公開求人にもアクセスでき、より多くの選択肢から理想的なポジションを見つけられます。

この記事で紹介した企業の見分け方を参考に、まずは情報収集から始めてみてください。

主体的な行動が、あなたが本当に望むキャリアを実現する確実な第一歩となるでしょう。

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