SESは良い、悪いという善悪で語るものではありません。
同じSESでも、3年後に市場価値を高めている人もいれば、案件を短期で転々としながら自信を失っている人もいます。その差を生むのは「SESという業態」そのものではなく、選び方と使い方です。
特にいまはエンジニアバブル後の採用市場です。企業も慎重になり、転職回数や職歴の質をより厳しく見るようになっています。
だからこそ、なんとなく選ぶのではなく、設計して選ぶ思考が必要です。SESを避けるかどうかではありません。どう選ぶかです。

執筆者プロフィール
合同会社エンジニアリングマネージメント 社長
久松 剛さん
慶應義塾大学大学院政策メディア研究科博士(政策・メディア)。2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。合同会社エンジニアリングマネージメント社長兼レンタルEM。ベンチャー企業3社にてIPOや組織改善コンサル、PjMなどを歴任後、2022年に合同会社を設立。
現在はスタートアップから日系大手企業まで企業規模を問わず、採用や組織改善コンサル、セミナー、執筆など幅広く活躍中。
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前提:いまは安易に経験社数を増やせる時代ではない
数年前まではエンジニア不足が深刻で、経験が浅くても転職は比較的容易でした。多少職歴が荒れていても「人が足りないから採る」という判断が多かったのです。
しかし、現在は状況が異なります。
企業は採用を厳選し、即戦力性や継続性をより重視しています。採用コストが上がり、ミスマッチを避けたいという意識が強くなっています。
いま企業が見ているのは単なる言語経験ではありません。
どんな案件で、どんな役割を担い、何を改善し、どんな成果を出したのかという具体性です。案件を短期間で何本も経験していても、中身が語れなければ評価は上がりません。
むしろ「なぜ短期間で離れているのか」という説明責任が発生します。
SESは案件単位で環境が変わるため会社を変えやすい構造でもありますが、短期離職を繰り返すと「この人は継続できないのではないか」「育成コストを回収できないのではないか」という懸念を持たれます。
いまは経験社数を気軽に増やせる時代ではありません。最初の数社は特に重要であり、最初の3年の設計がその後の選択肢を大きく左右します。
SESは“回避”ではなく“設計”の問題
SESという言葉だけで判断するのは危険です。同じSESでも、大手SIerと直接取引を持つ会社、多重下請けの末端にいる会社、教育体制を整えている会社、単価連動で個人事業主に近い会社など、構造は大きく異なります。
重要なのはラベルではなく設計思想です。
その会社はエンジニアをどう育て、どう評価し、どんなポジションに送り出そうとしているのか。若手を下流工程に固定する前提なのか、将来的に上流やリーダー層へ引き上げる設計になっているのか。
経営視点まで含めて見なければ本質は見えません。
SESというビジネス構造を理解する
商流は非常に重要です。
一次請けに近いほど顧客との距離が近く、裁量や情報量が増える傾向があります。逆に三次請け、四次請けになるほど役割は限定的になりがちです。商流が深いほど単価も圧縮されやすく、教育や還元に回せる余力が少なくなるケースもあります。
面接では「どのあたりの商流が中心ですか」と聞いてみましょう。曖昧な回答しか返ってこない場合は注意が必要です。
また、エンドと直接取引がなくても、請求単価が高ければ給与は上がります。逆にエンドと直接取引があっても、低単価しか請求できない関係であれば限界があります。
単価が高い案件は期待値も高く、裁量と責任がセットになります。若手の場合、単価だけを追うと背伸びしすぎるリスクもあります。一方で単価が極端に低い案件が中心の場合、担当できる工程が限定される可能性があります。
営業力も重要です。営業が弱い会社では案件の選択肢が少なく、待機が発生しやすくなります。待機中の扱い、給与保証の有無、評価への影響、次の案件までの平均期間などは具体的に確認してください。待機は悪ではありませんが、制度設計によってリスクは大きく変わります。
未経験・微経験者が見るべきポイント
未経験や微経験の場合、最初の案件は極めて重要です。
最初の1年で何を経験できるかが、その後の転職市場での説明材料になります。
大手企業や老舗企業との取引があるか、大口SIerとの継続契約があるか、最初からテストや監視のみにならないかを確認しましょう。
「未経験の場合、最初の案件はどのようなケースが多いですか」「開発工程に入れるまでの平均期間はどれくらいですか」と先輩の実例を求めながら具体的に質問することが大切です。
教育体制も重要です。OJTやメンター制度があるか、コードレビューの文化があるか、定期的な1on1があるかを確認してください。特に単独常駐はリスクが高く、相談相手がいない環境では成長が止まりやすくなります。
評価制度と給与制度も同様です。何をすれば昇給するのか、どのスキルが評価対象なのか、資格取得は評価に反映されるのか。「1年後にどうなっていれば評価されますか」と聞いてみることで会社の思想が見えてきます。
経験者が見るべきポイント
経験者が陥りがちなのは単価や還元率だけで判断することです。しかし重要なのは制度の持続性と透明性です。
固定給か単価連動か、単価が下がった場合の扱いはどうなるのか、昇給ルールは明確か、評価の納得感はあるかを確認しましょう。短期的な収入増よりも、3年後にどんなポジションに到達できるかを考える視点が必要です。
高還元SESは魅力的に見えますが、実態はフリーランスに近いモデルである場合もあります。待機保証の有無、社会保険や福利厚生の実態、営業担当の人数と実績、自分のリスク許容度との照合が不可欠です。
収入の最大値だけでなく最小値も想定し、生活コストとのバランスを冷静に見ましょう。
事業の多様性という観点
受託開発を持つ会社は若手育成がしやすい傾向があります。自社内でチームを組みレビューを回せるからです。
SES一本足よりも事業の幅がある会社の方が、景気変動時の耐性が強い場合があります。赤字の自社サービスを無理に続けていないか、SES収益で穴埋めしていないか、特定顧客への依存度が高すぎないかも確認しましょう。
会社説明資料や(特に上場企業であれば)決算情報を見る癖をつけることは、若手にとっても重要な市場感覚の訓練になります。
経営者との相性
SESは事業そのものや、会社の雰囲気に強い色がつきにくい業態です。だからこそ経営者を好きになれるかどうかは重要なポイントになります。
社長の発信やインタビューを見て、エンジニアをどう語っているか、人材をコストではなく投資として見ているかを確認してください。評価や育成について具体的に語っている経営者かどうかは重要な判断材料です。
最終的には、その人のもとで数年働きたいと思えるかが定着の鍵になります。
SESを成長環境に変える視点
SESで成長できるかどうかは、環境だけでなく本人の姿勢にも左右されます。
案件を消化するのではなく活用する姿勢が必要です。なぜこの設計なのか、顧客は何に困っているのか、チームの課題は何か、自分は何を改善できるのかを考えることで市場価値は上がります。
毎案件ごとに学びを言語化し、ポートフォリオや職務経歴書に落とし込める形で整理してください。受け身ではなく主体的に設計する姿勢が、同じSESでも差を生みます。
まとめ
SESは避ける問題ではありません。未経験者と経験者では見るべき軸が異なります。
構造を理解し、制度を確認し、自分のリスク許容度と照らし合わせることが重要です。いまは慎重に選ぶ時代ですが、慎重さとは恐れることではなく理解した上で選ぶことです。
SESを受け身で選ぶのではなく、キャリアの一部として設計してください。あなたの3年後は最初の数社でほぼ決まります。面接では遠慮せず構造を聞き、自分の成長戦略を持って選んでください。
いまの市場環境を理解し、主体的に動ける人から選択肢は広がっていきます。それがいまの時代のSESとの向き合い方です。
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