生成AI時代のエンジニアのキャリア戦略──「AIに置き換えられるか」ではなく「AIをどう使うか」

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この記事でわかること

  • 生成AI時代のエンジニアが考えるキャリア
  • 「AIでエンジニア不要論」が出る理由
  • 若手エンジニアへのアドバイス
編集者プロフィール
ウィルオブテック編集部

エンジニア転職に関するお役立ち情報を発信

生成AIの進化によって、「エンジニアは不要になるのではないか」という議論が繰り返されています。コード生成AIが登場し、プログラムを書く作業の一部が自動化されつつある今、将来に不安を感じるエンジニアも少なくありません。

特にこれからIT業界を目指す人や、キャリア初期のエンジニアにとっては、「このままエンジニアを続けて大丈夫なのだろうか」と考える場面もあるでしょう。

しかし実際の採用市場を見ると、エンジニアの需要が急激に消えているわけではありません。むしろ求人は依然として存在し、多くの企業がエンジニアを求め続けています。

ここで重要なのは、需要の総量ではなく需要の構造が変わっているという点です。生成AIはエンジニアの仕事を奪うというより、仕事の中身を再配分しています。

本記事では、生成AIの進化がエンジニアの仕事をどう変えているのか、そしてこれからエンジニアがどのようにキャリアを考えるべきかを整理します。

久松さん

執筆者プロフィール

合同会社エンジニアリングマネージメント 社長
久松 剛さん

慶應義塾大学大学院政策メディア研究科博士(政策・メディア)。2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。合同会社エンジニアリングマネージメント社長兼レンタルEM。ベンチャー企業3社にてIPOや組織改善コンサル、PjMなどを歴任後、2022年に合同会社を設立。
現在はスタートアップから日系大手企業まで企業規模を問わず、採用や組織改善コンサル、セミナー、執筆など幅広く活躍中。

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「AIでエンジニア不要論」が繰り返される理由

新しい技術が登場するたびに、「この仕事は消える」という議論は必ず出てきます。コンピュータの普及、クラウドの登場、ノーコードツールの拡大など、これまで何度も同じような議論が繰り返されてきました。

生成AIの場合、特にインパクトが強く見える理由があります。コード生成AIは、従来エンジニアが行っていた作業の一部を直接代替するように見えるからです。実際、簡単なコードであればAIが生成できる場面も増えています。このため、「エンジニアの仕事そのものが不要になるのではないか」という印象を持たれやすいのです。

しかし歴史を振り返ると、技術革新は仕事を消すよりも仕事の構造を変えてきました。ある作業が自動化されると、別の作業が新しく生まれます。クラウドの普及によってサーバー管理の仕事は減りましたが、その代わりにクラウドアーキテクトやSREといった新しい職種が生まれました。

生成AIでも同じことが起きています。単純なコード生成はAIが担えるようになりましたが、そのAIを使ってシステムを作り、運用し、改善していく仕事はむしろ増えています。

AI時代に起きている「職種の再配分」

生成AIによって減る可能性が高いのは、単純な実装作業です。テンプレート的なコードや比較的単純なロジックはAIが生成できるようになりつつあります。

一方で、次のような領域の需要はむしろ増えています。AIをプロダクトに組み込むエンジニア、データ基盤を設計するエンジニア、AIシステムの運用を担うMLOps、クラウド環境の信頼性を担保するSRE、AI利用に伴うセキュリティやガバナンスを整備するエンジニアなどです。

つまり、AIによって減るのはコードを書く量であり、増えるのはシステムを成立させる仕事です。エンジニアの価値は、単純なコーディング能力よりもシステム全体を理解し設計できる能力へとシフトしています。

言い換えると、AIの時代に求められるエンジニアは「AIを書く人」よりも「AIを使ったシステムを成立させる人」へと移っているのです。

エンジニアの役割は「執筆者」から「編集者」へ

生成AIの登場によって、エンジニアの役割は少しずつ変わり始めています。これまでエンジニアはコードを書く「執筆者」でした。しかしAIがコードを生成できるようになると、役割は「編集者」「監修者」に近づいていきます。

AIが生成したコードが安全かどうか、保守可能かどうか、システムとして成立するかどうかを判断するのは人間です。

AIはもっともらしい誤りを含むコードを出すこともあります。いわゆるハルシネーションです。

こうした状況では、コードを書く速度よりも、コードの品質を見抜く審美眼の方が重要になります。AIが出した結果をそのまま使うのではなく、レビューし、改善し、システム全体の品質に責任を持つ。この能力はこれからますます重要になります。

「AIを使う人」と「AIを実装する人」

生成AIが普及すると、多くの人がAIを使うようになります。文章生成や画像生成、コード生成など、AIを使うこと自体は特別な能力ではなくなっていくでしょう。

しかし、そのAIを実際のシステムに組み込み、業務やサービスとして成立させる人はそれほど多くありません。

ここで重要なのがAIインテグレーションという領域です。これは既存のAIモデルやAPIを利用し、業務ロジックやプロダクトの中にAIを組み込む仕事です。

例えば、RAG(検索拡張生成)を用いて社内ナレッジ検索を実装する、ベクトルデータベースを使って意味検索を実現する、AIを使った業務自動化ツールを構築するなどです。こうしたAIを社会に実装する仕事は、今後ますます増えていくと考えられます。

日本でAI需要が消えない理由

さらに、日本特有の事情もあります。日本は少子高齢化による人手不足が深刻です。製造業、建設業、物流、医療など、多くの産業で労働力不足が問題になっています。

この状況では、AIは人を減らすための技術ではなく、人手不足を補うための技術として使われます。つまりAI導入の目的は人員削減ではなく、生産性向上です。

日本には中小企業や地場産業が多く、IT化が進んでいない分野もまだ多く残っています。こうした企業にAIを導入する余地は大きく、AIを実装するエンジニアの需要は長期的に続く可能性が高いと考えられます。

AI時代に価値が上がるスキル

生成AIの時代に価値が上がるのは、単純なコーディング能力ではありません。むしろ次のような能力です。

問題を定義する力、システム全体を設計する力、データ構造を理解する力、信頼性を担保する力、セキュリティを考慮する力、そして運用を回し続ける力です。

AIを組み込むシステムでは、データ流出のリスク、APIコストの管理、法規制への対応など、新しい課題も増えています。こうした課題を整理し、解決できるエンジニアは今後も高く評価されるでしょう。

若手エンジニアへのアドバイス

生成AIを恐れる必要はありません。むしろ積極的に使うべきです。コード生成ツールを使えば、学習速度は確実に上がります。試行錯誤の回数も増やせます。

ただし、AIに任せきりにするのではなく、「なぜこのコードになるのか」を理解しながら使うことが重要です。AIの出力を検証し、自分の知識として取り込む姿勢があれば、むしろ成長は加速します。

キャリアセミナーなどでよく「プログラミングの勉強は不要でしょうか」という質問を受けますが、答えはノーです。AIを使う時代だからこそ、プログラミングの基礎理解は重要になります。AIの出力を理解できるかどうかは、基礎知識に依存するからです。

まとめ

生成AIはエンジニアの仕事を消しているのではありません。仕事の重心を移動させています。これから重要になるのは、AIを使うことそのものではなく、AIを社会のシステムとして実装し、運用し続ける能力です。

「AIに置き換えられるかどうか」を心配するより、「AIをどう使うか」を考える方が建設的です。生成AI時代のキャリア戦略は、AIを敵と見るのではなく、AIを前提に設計することから始まります。

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