日本では少子化の波が押し寄せ、ITをはじめとするデジタル人材の採用がいっそう難しくなっています。国内における採用競争が激化する一方で、活路として注目されているのが海外からの人材受け入れです。
しかし、言語や文化の壁など乗り越えるべき課題も少なくありません。こうした状況の中、海外人材を積極的に採用し、定着まで支援している企業のひとつがパーソルクロステクノロジー株式会社(以下、パーソルクロステクノロジー)です。本記事では、その取り組みや成功のポイントを詳しくご紹介します。
※本記事の内容は2025年2月時点のものです。

執筆者プロフィール
合同会社エンジニアリングマネージメント 社長
久松 剛さん
慶應義塾大学大学院政策メディア研究科博士(政策・メディア)。2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。合同会社エンジニアリングマネージメント社長兼レンタルEM。ベンチャー企業3社にてIPOや組織改善コンサル、PjMなどを歴任後、2022年に合同会社を設立。
現在はスタートアップから日系大手企業まで企業規模を問わず、採用や組織改善コンサル、セミナー、執筆など幅広く活躍中。
TOPICS
受け入れているエンジニアの概要
パーソルクロステクノロジーで働いているエンジニアについてお伺いしました。スキルセットやバックボーンには下記のような傾向があるとのことです。
スキルセットと経験年数
Java、Spring、Spring Boot、JavaScript、React、Angular、Kotlin、C#など、多彩な技術分野のエンジニアを採用しています。
実務経験3年以上の人材が中心ですが、若手で1年程度の実務経験しかないエンジニアも受け入れており、育成にも力を入れています。
日本語能力
実務上のやり取りに問題がないレベルの日本語力を基本条件としています。目安としてはN2になるとのことです。
ただし、技術力や学習意欲が高ければ多少の言語面での不安があっても採用を検討する場合もあるとのことです。
国籍
国籍は中国籍が最多であり、続いて韓国、ミャンマーなどのアジア圏出身者が続きます。 既に日本で就業中の外国籍エンジニアを中心に中途採用するケースが中心とのことです。
ビザやカルチャーマッチについてもギャップが少ないという特徴があります。
実際に受け入れてみて感じたこと
既にパーソルクロステクノロジーで多数活躍している外国籍人材。実際に複数の受け入れ事例がある中で、ギャップなどはあったのでしょうか。
どのような案件にアサインされるのか
外国籍エンジニアだからといって、特別な案件にばかり配属されるわけではありません。技術レベルや本人の希望に合わせて、多種多様なプロジェクトへの参画が実現しています。
たとえばWebアプリケーションの開発や、基幹システムのリプレイス案件など、日本人エンジニアと同様に幅広い業務を担当しているようです。
ポジティブなギャップ
採用担当者が特に注目しているのは、日本語のハードルがある中であってもわざわざ「日本に来たい」という強いモチベーションから来る学習意欲や向上心の高さです。 最新技術のキャッチアップやスキルアップに前向きです。
これは企業にとって大きなメリットで、プロジェクト内でも自主学習を積極的に行い、チームに好影響をもたらすケースが多いとのことです。
為替相場の変動により、日本の賃金水準が相対的に下がるとの見方もありますが、実際には「治安が良く、政治や経済が安定している国で働きたい」という理由から、日本を志望するエンジニアも少なくないこともポジティブなギャップに繋がっています。
受け入れに当たっての工夫
既に社内で外国籍エンジニアの採用実績と成功体験があれば別ですが、これから一人目を採用しようという企業では不安も多いでしょう。パーソルクロステクノロジーでの受け入れに当たっての工夫についてお伺いしました。
日本語力のサポート
日本語N2相当の基準を設けているとはいえ、実際の業務では慣れない専門用語やビジネス表現などのハードルがあります。
パーソルクロステクノロジーでは、エンジニア部門の内勤メンバーや採用担当者が協力して、職場内の語学研修を実施。日常的に日本語を使う機会を増やし、実践的なコミュニケーション能力を底上げしているとのことです。
待機期間の給与保証
プロジェクト間のブランクが生じた際、待機期間の給与を保証する制度を設けています。
これにより、「次の案件が決まるまで生活が不安…」という理由で離職につながるリスクを軽減し、安心してキャリアを築ける環境を提供しています。
キャリア支援・面談
エンジニア一人ひとりに対して、定期的な面談を実施。スキル面・希望職種・キャリアパスなどを細かくヒアリングし、適切なプロジェクト配属につなげる仕組みを整えています。
内勤部門に専任部署があり、語学面や生活面での相談にも対応しているので、外国籍エンジニアが安心して働けるようバックアップ体制を強化しています。
帰国対応
旧正月のように日本のカレンダーとは異なる大型連休があったり、盛大な冠婚葬祭といったイベントも海外では見られます。
外国籍エンジニアが帰国を希望する際は、顧客と相談しながら休みを確保する形をとっています。特別なルールを設けず、一般的な有給休暇などを活用しながら柔軟に対応するスタンスが重要です。
海外在住社向けのビザサポート
在留資格の発行など法的な手続きは行政書士法人に任せることで、企業とエンジニア双方の負担を軽減しています。
ただし、現地の領事館とのやり取りはエンジニア本人に依頼するため、相互協力体制を築くことがポイントです。
海外在住者向けの費用負担と住居サポート
入社後1ヶ月間は会社が借り上げたマンスリーマンションを無料で提供し、プロジェクトが決まるまでの間に日本での生活に慣れる時間を確保できるよう配慮しています。
こうした仕組みにより、エンジニアが初期費用などの負担を最小限に抑え、スムーズに業務へ移行できるよう支援しています。
銀行口座の開設や役所での手続きなど日常生活上の課題については外部委託サービスを活用してサポートを行っています。これにより、エンジニアが安心して長期的に活躍できる環境を整備しています。
社内ドキュメントと言語対応
パーソルクロステクノロジーでは社内文書を基本的に日本語で作成していますが、外国籍社員の利便性を考慮して生活ルールブックを英語でも用意し、イントラネット上で閲覧できるようにしています。
こうした取り組みは多言語環境への対応の一端であり、必要に応じて英訳を行うことで言語の壁を感じさせない社内体制を整えているのが特徴です。
組織の多様性を重視した取り組みが評価され「Cultural Diversity Index 」でGold認証を取得しています。さらに、全社会議など大規模な集まりでは英語による同時通訳を導入するなど、情報格差を最小限に抑え、すべての社員が公平に参加できる環境づくりに取り組んでいます。
まとめ:外国籍エンジニア採用がもたらす可能性
パーソルクロステクノロジーの事例は、外国籍エンジニア採用を成功させるために必要なポイントを具体的に示しています。日本語力やビザの問題など、ハードルは確かに存在しますが、以下のようなサポート体制を整備すれば、優秀な人材を長期的に活躍させることができるでしょう。
- 待機期間の給与保証やキャリア面談での安心感の提供
- 住居・生活面のフォローアップによる早期定着のサポート
- 日本語研修や英語資料の整備によるコミュニケーション格差の解消
- ビザ申請手続きの外部委託などによる負担軽減
- 多様性を尊重する企業文化(Cultural Diversity IndexでのGold認証など)
外国籍エンジニアは単に技術力を補う存在ではなく、多様な視点や新しいイノベーションをもたらす存在でもあります。
グローバル化が進む中、企業が持続的に成長するには、多様な人材が働きやすい環境を整え、自発的な学習意欲や成長意欲を引き出すことが不可欠です。
パーソルクロステクノロジーの事例から得られる教訓を活かし、外国籍エンジニアの採用・定着に積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。