SIerの客先常駐で働いているあなたは、「このままで本当にキャリアが積めるのか?」と不安に感じていませんか?
実際、IT企業の約9割が客先常駐を実施しており、独立系SIerではほぼ確実に常駐が前提となっているのが現実です。
しかし求人票の記載だけでは常駐の実態は見抜けず、面接でも曖昧な回答をされてしまいます。
この記事では、客先常駐の割合や仕組みから、ブラック企業を避けるための具体的な見分け方、面接で必ず確認すべき質問まで、転職成功のために知っておくべき全てを解説します。
自社勤務や在宅勤務を実現し、納得できるキャリアを築くための実践的なノウハウをお伝えします。
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SIerの客先常駐とは?基本的な仕組みを解説

SIerへの転職を考えたとき、客先常駐の実態が分からず不安に感じていませんか。
この章では、客先常駐がなぜ多いのか、その基本的な仕組みから分かりやすく解説します。
- 客先常駐の割合と業界の現状
- 独立系SIerに客先常駐が多い理由
客先常駐の割合は?業界の現状とデータ
IT業界では、客先常駐という働き方は非常に一般的です。
あなたの「客先常駐ばかりではないか」という懸念は、残念ながらデータによって裏付けられています。
厚生労働省の「働き方・休み方改善ハンドブック」によると、IT企業の9割以上が客先常駐を導入していると報告されています。
この数字は、客先常駐が一部の企業だけの特殊な働き方ではなく、業界全体の標準的な形態であることを明確に示しています。
なぜこれほどまでに客先常駐が普及しているのでしょうか。
その背景には、IT業界特有のビジネスモデルが存在します。
多くのプロジェクトは、顧客から直接仕事を受ける元請け企業から、複数の下請け企業へと再委託される多重下請け構造で成り立っています。
この構造により、開発作業が細分化され、多くのエンジニアが顧客や上位の企業のオフィスで働く必要が生じるのです。
また、エンジニアの労働時間を基準に費用を計算する人月商売という商習慣も、この働き方を後押ししています。
プロジェクトによっては同じ顧客先に2年以上常駐するケースも半数を超えており、一度常駐すると長期間同じ環境で働くことも珍しくありません。
したがって、「客先常駐が多い」というあなたの印象は、個人の感覚ではなく、統計データが示す客観的な事実なのです。
参考:厚生労働省、働き方・休み方改善ハンドブック、4ITエンジニアが働く職場の現状
独立系SIerに客先常駐が多い理由とは
SIerの中でも、特に親会社を持たない独立系SIerでは客先常駐の割合が著しく高くなる傾向があります。
その理由は一つではなく、主に以下の3つの構造的な要因が関係しています。
- 多重下請け構造で下請けになりやすい
- 顧客企業のセキュリティ要件
- 自社の営業力が十分でない場合がある
業界の多重下請け構造の影響を最も受けやすいのが独立系SIerです。
メーカー系やユーザー系SIerは、親会社から安定して案件を受注できるため元請けになりやすい立場です。
一方で独立系SIerは、そうした元請け企業から仕事を受ける2次請けや3次請けになるケースが多くなります。
下請けの立場ではプロジェクトの一部分を担うため、発注元の管理下で作業する客先での勤務が基本となります。
顧客が求めるセキュリティ要件も大きな理由の一つです。
システム開発では企業の売上データや個人情報といった機密情報を扱うため、多くの顧客企業は情報漏洩リスクを避けることを最優先します。
その結果、自社の管理が及ぶオフィス内での作業を絶対条件とすることが多く、常駐せざるを得ない状況が生まれるのです。
企業によっては、自社の営業力が十分でない場合もあります。
特に中小規模の独立系SIerの中には、自社で直接案件を獲得する力が弱いために、大手SIerにエンジニアを派遣する形でビジネスを成り立たせている企業も少なくありません。
これらの複合的な理由により、独立系SIerに所属するエンジニアは、客先常駐という働き方が中心となるのです。
SIerとSESの客先常駐の違い

客先で働くという点は同じでも、SIerとSESではその働き方の本質が全く異なります。
ここでは、あなたのキャリア選択に役立つよう、両者の違いを3つの観点から徹底的に比較します。
- 契約形態と雇用条件の根本的な違い
- キャリア形成と成長機会への影響
- 評価制度と昇進機会の仕組みの差
契約形態と雇用条件の根本的な違い
SIerとSESの最も根本的な違いは、企業が顧客と結ぶ契約形態にあります。
この契約の違いが、エンジニアとしての責任範囲や働き方を決定づけています。
SIerが主に結ぶのは請負契約です。
これは、定められた納期までにシステムやソフトウェアといった成果物を完成させ、納品することに責任を負う契約です。
一方で、SESが結ぶのは準委任契約と呼ばれます。
こちらは、エンジニアの技術力を時間単位で提供すること自体が目的であり、成果物の完成責任は負いません。
両者の違いは、下の表を見るとより明確に理解できるでしょう。
項目 | SIer(請負契約) | SES(準委任契約) |
契約の目的 | システムの完成という成果物 | エンジニアの労働力の提供 |
責任の対象 | 成果物の品質や納期達成 | 契約時間内の誠実な業務遂行 |
業務の指示 | 自社のプロジェクトリーダー | 常駐先の担当者から受けることが多い |
このように、SIerでは自社の管理者の下で成果物に向かってチームで動くのに対し、SESでは個人が客先に派遣され、その現場の指示に従って業務を遂行する形が一般的です。
このため、働き方の自由度や裁量権、プロジェクトへの関与の深さが大きく変わってきます。
どちらの契約形態が良いということではなく、求められる役割が本質的に異なるのです。
キャリア形成と成長機会への影響
契約形態の違いは、エンジニアが積める経験や将来のキャリアパスにも直接的な影響を及ぼします。
SIerとSESでは、身につくスキルの種類や成長の方向性が異なるため、自身の目標に合った環境を選ぶことが非常に重要です。
SIerは、プロジェクト全体を請け負うため、要件定義や設計といった上流工程から、開発、テスト、運用まで一貫して関与する機会が多くあります。
顧客との折衝やプロジェクトの進捗管理、チームメンバーのマネジメントなど、技術力以外のビジネススキルや管理能力を磨くことが可能です。
そのため、将来的にプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーを目指す人にとっては、必要な経験を積みやすい環境です。
一方で、SESは個人の技術力を提供するビジネスモデルであるため、様々な業界や規模のプロジェクトに短期間で関われるという特徴があります。
特定のプログラミング言語を極めたい、あるいは多種多様な開発環境や技術スタックに触れて知見を広げたいという技術志向のエンジニアにとっては、効率的にスキルを向上させる機会が豊富です。
開発やテストといった下流工程に集中することが多くなる傾向はありますが、その分、専門性を深く追求しやすいのです。
マネジメント能力を伸ばしたいならSIer、技術の専門性を高めたいならSES、というように、目指す方向性によってどちらが適しているかは変わります。
評価制度と昇進機会の仕組みの差
あなたの頑張りがどのように評価され、給与や昇進に反映されるのかという評価制度の仕組みも、SIerとSESでは大きく異なります。
この違いを理解していないと、入社後に正当な評価が受けられないという不満につながる可能性があります。
SIerの場合、自社のプロジェクトリーダーや上司が同じ職場で働いていることが多いため、あなたの日々の業務への貢献度や成果を直接観察し、評価することが可能です。
多くの企業では、自社独自の評価基準や目標管理制度が設けられており、それに基づいて定期的な面談が行われます。
そのため、評価のプロセスが比較的透明であり、成果を出せば昇進や昇給に結びつきやすい構造です。
それに対してSESの場合は、評価の仕組みがより複雑です。
自社の上司はあなたの働きぶりを直接見ていないため、評価の主な情報源は常駐先の担当者からのフィードバックや、あなた自身が提出する業務報告書になります。
客先での評価が良くても、それが自社の評価制度や給与テーブルに適切に反映されるかは、その企業の仕組み次第です。
客先での評価を自社の給与にどう反映させるかの基準が曖昧であったり、あなたの評価が営業担当の交渉力に左右されたりするなど、評価の公平性に課題を抱えているケースも少なくありません。
このため、特にSES企業への転職を考える際は、面接の段階で客先での成果をどのように自社の人事評価に反映しているのか、その具体的なプロセスをしっかりと確認することが極めて重要になるのです。
SIerにおける客先常駐のメリット

客先常駐にはマイナスの印象が伴いますが、実はあなたのキャリアにとって有益な経験も多く得られます。
ここでは、客先常訪ならではのメリットを3つの視点から解説し、その働き方の新たな可能性を探ります。
- 多様な環境で学べる学習機会
- 顧客との密接なコミュニケーション
- 未経験からでも挑戦しやすい環境
メリット(1)多様な企業文化を学べる
客先常駐のメリットは、自社にいるだけでは決して得られない多様な経験を短期間で積めることです。
プロジェクトごとに異なる顧客先で働くことは、まるでビジネス留学のように、あなたに新しい知識と視野をもたらしてくれます。
例えば、金融業界のプロジェクトに参加すれば、厳格なセキュリティ基準やコンプライアンス遵守の重要性を肌で感じることができます。
製造業の現場では、複雑な生産管理システムの業務フローを理解し、小売業ではスピーディーな市場の変化に対応する開発手法を学ぶことができるでしょう。
これらの経験を通じて得られるのは、特定の技術スキルだけではありません。
それぞれの業界特有のビジネス慣習や意思決定のプロセス、そこで働く人々の価値観など、生きた知識を吸収できるのです。
さらに、常駐先では他社の優秀なエンジニアと協力して仕事を進める機会も豊富にあります。
自分とは異なる技術的背景や問題解決のアプローチを持つ人々と共に働く経験は、あなたの視野を広げ、大きな刺激となるはずです。
こうした多様な環境への適応を繰り返すことで、どんなプロジェクトでも柔軟に対応できる、汎用性の高いエンジニアへと成長することができるのです。
メリット(2)顧客との密接なコミュニケーション
自社内での開発と客先常駐の大きな違いは、システムの利用者である顧客との物理的な距離です。
顧客と同じオフィスで日常的に働くことで、仕様書やメールだけでは伝わらない、プロジェクトの成功に不可欠な情報を直接得られます。
例えば、あなたが開発しているシステムが、顧客の日常業務でどのように使われているのかをすぐそばで見ることができます。
ユーザーがどんな点に不便を感じているのか、どんな機能があればもっと業務が効率化するのか、といった生の声を聞く機会が格段に増えるのです。
こうした現場の温度感を直接感じることで、仕様書の行間に隠された本当のニーズや、システムが解決すべき本質的な課題を深く理解できます。
その結果、あなたは単なる作業者ではなく、顧客のビジネスに貢献するパートナーとして、より的確で価値の高い提案ができるようになるでしょう。
また、日々の挨拶や雑談といったコミュニケーションを積み重ねることで、顧客との人間関係も自然と深まっていきます。
長期にわたる常駐で築かれた強い信頼関係は、次のプロジェクトの相談を受けたり、より上流の要件定義から関わらせてもらえたりする機会につながることも少なくありません。
顧客の顔が見える環境で働くことは、仕事のやりがいを直接感じられる貴重な経験となるでしょう。
メリット(3)未経験でも入社しやすい
IT業界でのキャリアをこれからスタートさせたいと考えている未経験者にとって、SIerの客先常駐は門戸が広く開かれた魅力的な選択肢です。
多くのプロジェクトは、様々なスキルレベルのエンジニアが協力して進める体制が整っており、未経験者向けの育成プログラムが充実している場合が多いからです。
客先常駐のプロジェクトでは、経験豊富な上級エンジニアからキャリアを始めたばかりの新人まで、多様なメンバーでチームが構成されます。
そのため、新人が安心して業務に取り組めるよう、先輩社員が指導役となるメンター制度や、ペアプログラミングといったOJTの仕組みが導入されていることが少なくありません。
最初は、システムのテスト作業や簡単な設定変更、ドキュメント作成といった比較的難易度の低い業務から担当することが一般的です。
そこで実務経験を積みながら、徐々にプログラミング、詳細設計、基本設計へと担当範囲を広げていくという、段階的なキャリアパスが用意されています。
このプロセスを通じて、あなたは着実にスキルを身につけていくことができます。
また、プロジェクトごとに異なる開発環境やツールに触れる機会が多いため、短期間で幅広い技術知識を習得できるのも大きなメリットです。
実践的な環境で経験豊富なエンジニアの仕事を間近に見ながら学べることは、未経験からプロのエンジニアを目指す上で、非常に効率的です。
SIerにおける客先常駐のデメリット

転職で後悔しないためには、メリットだけでなくリスクも正しく理解しておくことが不可欠です。
この章では、SIerにおける客先常駐のデメリットについて紹介します。
- 帰属意識の低下
- スキルアップ機会の限定
- 評価や昇進の不透明性
- 仕様変更による業務負荷
デメリット(1)帰属意識の低下
客先常駐という働き方は、心理的な側面で大きな課題を抱えています。
その最も代表的なものが、自社への帰属意識、つまり「自分はこの会社の社員である」という感覚が薄れてしまうことです。
毎日の通勤先は顧客のオフィスであり、自社のオフィスを訪れるのは月に一度の帰社日や年に数回のイベントの時だけ、という働き方は決して珍しくありません。
このような環境では、自社の経営理念やビジョンを共有する機会が極端に少なくなります。
自社の同僚と日常的なコミュニケーションを取ることも難しく、社内の情報共有からも取り残されてしまいます。
新しいプロジェクトに異動するたびに、新しい環境、新しいルール、新しい人間関係に適応することを繰り返すうちに、「自分は一体どこの組織に所属しているのだろう」という感覚に陥ってしまうエンジニアは少なくありません。
自社への愛着や一体感が感じられない状態は、仕事へのモチベーションを維持する上で大きな障害です。
長期的なキャリアを考えたときに、自分が所属する会社への貢献実感が得にくく、孤独感や疎外感を深めてしまう可能性があることは、客先常駐の大きなデメリットでしょう。
デメリット(2)スキルアップ機会の限定
あなたの働く環境が、自社ではなく常駐先の企業の都合に完全に左右されてしまうことも、客先常駐が抱える深刻な問題です。
自社がいかに快適なオフィス環境や充実した福利厚生を用意していても、客先で働くあなたはその恩恵を受けることができません。
例えば、常駐先によって開発に使用するパソコンのスペックや、利用できるソフトウェア、インターネット環境は大きく異なります。
作業効率の低い環境を強いられることもあれば、服装や勤務時間に関する独自の厳しいルールに従わなければならない場合もあります。
自社では当たり前だったフリードリンクや快適な休憩スペースも、常駐先になければ利用することはできません。
また、昨今多くの企業で導入が進んでいるリモートワークについても、自社が許可していても常駐先の企業が認めていなければ、あなたは毎日出社する必要があります。
このように、労働環境の良し悪しが自分ではコントロールできない「運」の要素に大きく委ねられてしまうのです。
プロジェクトが変わるたびに、こうした環境の当たり外れに一喜一憂しなくてはならない状況は、長期的に見ると大きなストレスの原因となります。
安定した環境で腰を据えて働きたいと考える人にとって、この労働環境の不安定さは見過ごせないデメリットです。
デメリット(3)評価や昇進の不透明性
プロジェクトの終了や変更に伴い、勤務地だけでなく人間関係も定期的にリセットされることは、精神的に大きな負担となります。
客先常駐では、数ヶ月から数年単位で働くチームや環境ががらりと変わることが日常茶飯事です。
新しいプロジェクトに参加するたびに、あなたは初対面のメンバーの中で、再び一から人間関係を築き上げていかなければなりません。
チーム独自の文化やコミュニケーションの暗黙のルール、キーパーソンとなる人物などを短期間で把握し、スムーズに業務を遂行できる関係性を構築する必要があります。
これは、非常に高いコミュニケーション能力と適応力を要求される作業です。
せっかくチームに馴染み、円滑な協力体制を築けたとしても、プロジェクトが終わればその関係性は途切れてしまうことがほとんどです。
そしてまた次の現場で、同じプロセスを繰り返すことになります。
この絶え間ない人間関係の再構築は、特に内向的な性格の人や、安定した環境を好む人にとっては、想像以上にエネルギーを消耗するものです。
技術的な課題だけでなく、常に人間関係という見えないコストを払い続けなければならない点は、客先常駐の働き方が持つ特有の厳しさでしょう。
デメリット(4)仕様変更による業務負荷
顧客と非常に近い距離で働くことは、時に過剰な業務負荷につながるリスクをはらんでいます。
なぜなら、顧客からの直接的かつ突発的な要求を断りづらい状況が生まれやすいからです。
同じオフィスにいれば、会議のような公式な場以外でも、「これ、ちょっとお願いできますか」といった気軽な形で追加の作業依頼が発生します。
本来の契約範囲を超えるような内容であっても、良好な関係を維持したいという思いから、つい引き受けてしまいます。
こうした小さな要求が積み重なることで、あなたの業務量は雪だるま式に増えてしまうのです。
また、プロジェクトの終盤に差し掛かった段階で、顧客の都合による急な仕様変更が発生することも少なくありません。
本来であればスケジュールや予算の再調整が必要な大幅な変更であっても、顧客との力関係から「何とかお願いします」という一言で、現場のエンジニアが無理をして対応せざるを得ないケースが後を絶ちません。
その結果、恒常的な長時間労働やサービス残業、休日出勤が常態化し、心身ともに疲弊してしまう事態に陥ります。
プロジェクトが炎上する原因の多くは、こうしたコントロール不能な要求の積み重ねにあるのです。
自分の裁量で仕事量を調整しにくいこの構造は、ワークライフバランスを重視する上で極めて大きなデメリットです。
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では、どうすれば客先常駐の少ない、あるいは全くない優良なSIerを見つけ出せるのでしょうか。
ここでは、求人情報や企業の公式サイトから客先常駐が中心の会社を避けるための、4つの具体的なチェックポイントを解説します。
- 元請案件の比率を確認する
- 自社製品開発の有無を確認する
- 求人の勤務地記載の明確性を確認する
- オフィス規模と社員数の比率を確認する
見分け方(1)元請案件の比率を確認する
企業を見分ける上で最も重要な判断基準となるのが、顧客から直接案件を受注している元請け、いわゆるプライム案件の比率です。
この比率が高い企業ほど、客先常駐の可能性は低くなります。
なぜなら、元請けの立場であればプロジェクト全体の主導権を握りやすいため、開発の拠点を自社オフィスに置き、自社の管理下で開発を進めることが基本となるからです。
下請け企業の場合は、発注元である上位企業のオフィスで作業することが多くなりますが、元請け企業はそうした制約を受けにくいのです。
この比率を確認するために、面接の場で直接質問しましょう。
例えば、「御社の受託開発におけるプライム案件の割合は、おおよそ何割程度でしょうか」と尋ねてみましょう。
もし企業側が自信を持って7割以上であると答えられれば、その企業は自社内での開発が中心である可能性が非常に高いと判断できます。
また、企業のウェブサイトに掲載されている取引実績や導入事例も重要な情報源です。
そこに大手企業や官公庁の名前が並んでいれば、直接取引を行っている元請け企業であると推測できます。
見分け方(2)自社製品開発の有無を確認する
客先常駐を避けたいのであれば、自社で独自の製品やサービスを開発、提供している企業を探すのも非常に有効な方法です。
これらの企業は、事業の構造上、客先常駐をほとんど行いません。
受託開発を主たる事業とするSIerは、顧客の要望に応じてシステムを開発するため、顧客先での作業が発生しやすくなります。
一方で、自社でパッケージソフトやSaaSなどのウェブサービスを展開している企業は、自社のプロダクトを成長させることが事業の柱です。
そのため、エンジニアは基本的に自社オフィスに勤務し、製品の企画、開発、改善に集中することになります。
企業研究を行う際には、企業の公式サイトにある事業内容のページを必ず確認してください。
そこに「自社パッケージ製品」や「〇〇SaaSの提供」といった記載があれば、その企業は自社内開発が中心である可能性が高いです。
受託開発以外の収益源を持っているかどうかは、働き方を見極める上で極めて重要な指標となります。
自社製品を持つ企業は、技術的な探求に集中できるだけでなく、事業の安定性という面でも魅力的な選択肢となるでしょう。
見分け方(3)求人の勤務地記載の明確性を確認する
求人票に記載されている勤務地の情報は、企業の働き方の実態を読み解くための重要なヒントに満ちています。
客先常駐が前提の企業は、勤務地がプロジェクトによって変動するため、その記載がどうしても曖昧にならざるを得ないからです。
安心して応募できるのは、勤務地が具体的に特定されている求人です。
例えば、「勤務地:本社 東京都渋谷区〇〇」や「フルリモート勤務可能」といった記載は、自社オフィスや自宅での勤務が基本であることを示しています。
一方で、注意が必要なのは、以下のような曖昧な表現です。
- 勤務地:プロジェクト先によります
- 勤務地:首都圏のクライアント先
- 勤務地:東京都23区内
これらの表現は、高い確率で客先常駐が前提であることを示唆しています。
具体的な地名やビル名を記載できないのは、内定後、あるいは入社後に配属されるまで勤務地が確定しないからです。
もちろん、「本社勤務」と明記されていても、入社後に常駐となる可能性がゼロではありません。
しかし、勤務地の記載の明確さは、企業が従業員の働く場所をどれだけ主体的にコントロールしているかを示す、信頼性の高い判断材料の一つなのです。
見分け方(4)オフィス規模と社員数の比率を確認する
少し意外な方法かもしれませんが、企業の物理的なオフィス規模と、そこに所属する社員数の比率を調べることも有効な見分け方の一つです。
この比率が、企業の働き方の実態を雄弁に物語っている場合があります。
社員のほとんどが自社オフィスで働いている企業であれば、当然ながら全社員を収容できるだけの座席数や執務スペースを確保しているはずです。
しかし、客先常駐を事業の基本としている企業の場合、社員の多くは日中オフィスにいません。
そのため、本社オフィスは管理部門のスタッフや一部の内勤者だけが必要な、最小限のスペースしか用意していないケースが多く見られます。
例えば、企業のウェブサイトや採用ページで社員数が100名と紹介されているにもかかわらず、オフィス訪問の際に確認した座席数が明らかに30席程度しかない場合、差分の70名の社員は日常的に社外、つまり客先で働いていると合理的に推測できます。
最近ではフルリモートを導入している企業も増えているため、オフィスが小さいことが一概に客先常駐を意味するわけではありません。
しかし、面接の際に「普段、オフィスにはどのくらいの社員の方が出社されていますか」と質問してみることで、その実態を探ることは可能です。
この視点は、企業の働き方を見抜くための補足的な、しかし強力な判断材料となるでしょう。
面接で確認すべき質問

企業研究や求人票の確認を経て、いよいよ面接という最終確認の段階です。
ここでは、入社後に後悔しないために、あなたのキャリアを守る上で必ず確認すべき質問を3つのカテゴリーに分けて紹介します。
- 配属の確定性とアサインの基準
- 常駐の比率と具体的な勤務形態
- 評価制度と昇進の機会
質問(1)配属確定性とアサイン基準
転職における最大のリスクの一つが、自身の希望やスキルセットと異なるプロジェクトに配属されてしまうことです。
これを避けるためには、面接の場で配属プロセスの透明性を確認することが極めて重要になります。
入社後のキャリアを自分の意志でコントロールするためにも、勇気を出して具体的な質問をしてみましょう。
まず確認すべきは、「内定をいただいた場合、配属されるプロジェクトは現時点で具体的に決まっていますでしょうか」という点です。
この質問に対して、もし「あなたの〇〇というスキルを活かせる△△プロジェクトを想定しています」といった具体的な回答が得られれば、企業があなたのキャリアを真剣に考えてくれている証拠です。
もし配属先が未定の場合は、「プロジェクトへのアサインは、どのような基準やプロセスで決定されるのでしょうか」と一歩踏み込んで質問しましょう。
ここでの良い回答例は、「複数のプロジェクト責任者と面談の上、双方の合意に基づき決定します」のように、候補者の意志を尊重する姿勢が示されるものです。
一方で、「入社後の研修を経て、あなたの適性を見て判断します」や「その時の会社の状況次第です」といった曖昧な回答は注意が必要です。
これは、あなたの希望よりも会社の都合が優先される可能性を示唆しています。
納得のいくキャリアを築くためには、配属のプロセスに自身が関与できるかどうかを見極めることが不可欠なのです。
質問(2)常駐比率と勤務形態
求人票に記載された情報だけでは、実際の働き方の実態までを正確に把握することは困難です。
入社後に「こんなはずではなかった」という事態を避けるためにも、面接では具体的な数字や実例に基づいた質問をすることが求められます。
まず最も直接的な質問として、「差し支えなければ、社員全体の客先常駐と自社勤務の割合を、おおよそで構いませんので教えていただけますか」と尋ねてみましょう。
この質問に対して、「客先常駐が約2割で、残りの8割は自社勤務です」のように、企業が具体的な数字で回答できる場合、その情報は信頼性が高いと判断できます。
次に、働き方の柔軟性についても確認が必要です。
特にリモートワークを希望する場合は、「客先常駐のプロジェクトに配属された場合でも、リモートワークを選択することは可能でしょうか」と質問しましょう。
「プロジェクトによりますが、会社としては週2回のリモートワークを推奨しており、多くの現場で実現できています」といった実例を伴う回答が得られれば安心です。
逆に、「それは状況によりますね」や「ケースバイケースです」といった言葉で話を濁す企業は注意が必要です。
同様に、残業時間について質問した際に「個人の裁量に任せています」といった曖昧な答えしか返ってこない場合、労働時間を適切に管理する体制が整っていない可能性があります。
自身の希望するワークライフバランスが実現可能か、その実態をしっかりと見極めましょう。
質問(3)評価制度と昇進機会
客先常駐という働き方において、最も不安を感じるのが人事評価の公平性です。
自社の上司が日常の働きぶりを直接見ていない環境で、あなたの成果がどのように評価され、昇進や昇給に結びつくのか、その仕組みを具体的に理解しておく必要があります。
この点を確認するためには、「常駐先での成果やお客様からの評価は、自社の人事評価制度にどのように反映される仕組みになっていますか」という質問が有効です。
この質問の意図は、評価プロセスの透明性を確認することにあります。
良い回答の例としては、「客先の責任者からいただく評価シートの内容を基に、半期に一度、自社の直属の上長と1on1の評価面談を実施します。
そこで双方の認識をすり合わせた上で、最終的な評価を決定します」といった、具体的で多角的な評価プロセスを説明できるケースです。
また、「昇進や昇格の基準となるスキルマップや評価項目は、全社員に公開されています」といった回答も、評価制度の公平性を示す良い兆候です。
一方で、「基本的にはお客様からの評判が全てですね」といった客先評価に依存する回答や、「我が社は年功序列の風土が基本です」のように、個人の成果を正当に評価する仕組みが存在しないことを示唆する回答には警戒しましょう。
あなたの努力が正しく報われる環境であるかを見極めることは、長期的なモチベーションを維持する上で重要なことなのです。
まとめ
SIerやSESでの客先常駐は、多様な現場を経験できるメリットがある一方、キャリア形成や評価の不透明性といったデメリットも存在します。
大切なのは、こうした実態を踏まえ、自身が望む働き方ができる企業を主体的に見極めることです。
本記事で解説した「元請案件の比率」や「求人票の勤務地」といった見分け方を駆使し、面接で深く質問することで入社後の後悔は防げます。
もし自分一人での企業研究に限界を感じるなら、業界に詳しい転職エージェントに相談するのも有効な手段です。
漠然とした不安を解消し、納得のいく転職を実現させましょう。
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