システムエンジニアとして働いている人の中には、SIerへの転職を検討している人も多いでしょう。一口にSIerといっても、その業務内容や社風はさまざまです。
そこでこの記事では、SIerの中でも特に多くを占める独立系SIerについて、具体的な仕事内容や年収、キャリアアップのポイントなどを解説します。
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独立系SIerとは?
SIerは成り立ちや業務内容によっていくつかの種類に分けられます。
その中でも独立系SIerは、親会社を持たない独立資本の企業です。親会社を持たないため、経営や事業内容にはほとんど制約がなく、独自の企業文化や強みを持つ企業が多く見受けられます。
独立系SIerは自社のITシステムを保有していないクライアントに代わり、業務システムや基幹システムの設計開発のほか、サーバーやデータベース、ホームページなどの構築とその運用、パッケージ販売などを行います。
▼SIerと自社開発の違いを知りたいなら
「SIerと自社開発の違いとは? 必要なスキルや転職での注意点を解説」もあわせてご覧ください。
SIer企業の種類は?
SIer企業は大きく5つの種類に分類されます。
まずメーカー系SIerは、富士通、NEC、日立製作所などのハードウェアメーカーを親会社に持つ企業群です。
次にユーザー系SIerは、NTTデータや野村総合研究所のように、システムを利用する一般企業から独立した企業です。
コンサル系SIerはアクセンチュア、IBM、デロイトなど戦略コンサルティングをベースとした企業、外資系SIerは日本オラクル、SAP、マイクロソフトなど海外企業の日本法人が該当します。
独立系SIerは大塚商会、TIS、オービックなど、特定の親会社を持たずに独立して事業を展開している企業を指します。
これらの分類を理解することで、転職先選びや案件選定において適切な判断ができるようになります。
メーカー系SIerとの違い
独立系SIerとメーカー系SIerの最大の違いは、技術選択の自由度と事業戦略の独立性にあります。
メーカー系SIerは、もともとコンピューターやハードウェアのメーカーだった企業のうち、SI事業も行うようになった会社を指します。たとえば、NECや日立、東芝、日本IBM、ユニシスなどが挙げられます。
メーカー系SIerは親会社のメーカー企業と深いかかわりがあることから、ハードウェアとシステムを組み合わせたソリューションを提供することがほとんどです。
親会社からの請負で大きなプロジェクトに参加できるため、キャリア形成に役立ちます。
また、特定の製品や技術に関する専門知識を得ることで、その分野に特化したキャリアを積むことができます。
一方、独立系SIerは特定のメーカーに縛られることなく、顧客にとって最適な製品やサービスを複数のベンダーから自由に選択できます。
また、年収面では一般的にメーカー系SIerの方が高い傾向にあり、その差は平均で100万円から200万円程度とされています。
ただし、独立系SIerは親会社の意向に左右されない独立した経営判断が可能で、市場ニーズに対する迅速な対応力が強みとなっています。
技術的な自由度と挑戦を重視する方には独立系、安定性と高収入を重視する方にはメーカー系が適しているでしょう。
ユーザー系SIerとの違い
独立系SIerとユーザー系SIerの違いは、事業展開する業界の幅広さと顧客基盤の多様性にあります。
ユーザー系SIerは、メーカーではない一般企業の情報システム部から独立したタイプのSIerです。たとえば、NTTコミュニケーションズや伊藤忠テクノソリューションズ、日鉄ソリューションズなどが挙げられます。
コンサルティングなどの上流工程がその業務の中心です。システムに関する知識だけでなく、銀行や保険など、かかわる業界に関する知識や資格が必要になることもあります。
これに対して独立系SIerは、製造業、小売業、公共機関、医療機関など業界を問わず多様な顧客にサービスを提供しています。
プロジェクト規模についても、ユーザー系SIerは数十億円から数百億円規模の大型案件が中心となる一方、独立系SIerは数千万円から数億円の中小規模案件も積極的に手がけています。
メーカー系SIer・ユーザー系SIerと独立系SIerを比較した場合、独立系SIerは親会社を持たない分自由な開発を行えることがメリットです。プロジェクトの制限もあまりなく、さまざまな業界で経験を積めます。
キャリア形成の観点では、独立系SIerでは業界横断的なスキルを習得できる一方、ユーザー系SIerでは特定業界の深い専門性を身につけることができます。
多様な業界経験を積みたい方には独立系、特定業界のスペシャリストを目指す方にはユーザー系をおすすめします。
コンサル系・外資系SIerとの違い
独立系SIerとコンサル系・外資系SIerの違いは、提供するサービスの領域と働き方のスタイルにあります。
コンサル系SIerは戦略立案や業務改革提案が主軸となり、システム開発よりも上流工程のコンサルティング業務が中心です。外資系SIerは特定の製品や技術の導入支援に特化しており、例えばSAPであればSAP製品の実装、オラクルであればOracle製品の導入が主な業務となります。
一方、独立系SIerはシステムの企画から設計、開発、運用保守まで一貫したサービス提供に強みがあります。年収水準は一般的にコンサル系、外資系、独立系の順で高くなる傾向があります。働き方については、コンサル系は長時間労働が常態化しやすく、外資系は厳格な成果主義が特徴的です。
独立系SIerは比較的安定した労働環境で、日本企業の商習慣や文化に深く根ざした対応が可能です。技術を軸としたキャリア形成を重視し、日本市場で長期的に活躍したい方には独立系SIerが最適な選択肢となります。
独立系SIerが担当する業務範囲

この章では、独立系SIerが手がけるシステム開発の全工程について紹介します。独立系SIerが担当する業務範囲には主に以下の内容があります。
- システムの企画・提案から運用保守まで一貫したサービス提供
- 各工程における独立系SIerの特徴的なアプローチ手法
- クライアント企業のビジネス課題解決に向けた包括的支援
- システム開発ライフサイクル全体での価値創出
- 他のSIer企業との業務範囲の違いと独自性
システムの企画・提案業務
独立系SIerにおけるシステムの企画・提案業務は、顧客企業の経営課題を深く理解し、最適なIT戦略を立案する重要な上流工程です。
この業務では、まず顧客の現状分析から始まり、既存システムの課題抽出や業務フローの調査を実施します。その上で、顧客のビジネス目標に合わせたシステム戦略を策定し、DX推進計画やシステム統合戦略などの包括的な提案を行います。
独立系SIerの強みは、特定のメーカーや親会社に縛られない中立的な立場から、顧客にとって真に最適なソリューションを提案できることです。
技術選定においても、クラウドとオンプレミスの選択、開発言語やフレームワークの決定など、プロジェクトの特性に応じた柔軟な判断が可能です。また、多様な業界での豊富な経験を活かし、他業界のベストプラクティスを取り入れた革新的な企画提案も独立系SIerの特徴となっています。
要件定義・設計業務
要件定義・設計業務は、顧客の業務要求を正確に把握し、実装可能な技術仕様に落とし込む重要な橋渡し工程です。独立系SIerは、業務知識と技術的専門性の両方を理解しているため、曖昧な要求を具体的なシステム仕様に変換することができます。
業務要件定義では、業務フローの詳細化、機能要件の明確化、性能やセキュリティなどの非機能要件の策定を行います。続くシステム設計工程では、アーキテクチャ設計、データベース設計、外部システムとのインターフェース設計など、システム全体の構造を決定します。さらに詳細設計段階では、画面設計、帳票設計、バッチ処理設計など、開発に必要な詳細仕様を作成します。
独立系SIerの特徴として、開発チームとの密なコミュニケーションにより、設計段階での課題を早期発見・解決できることが挙げられます。
この工程での品質が最終的なシステムの成否を左右するため、顧客との綿密な調整と技術的な深い知識が求められます。
システム開発・テスト業務
システム開発・テスト業務では、設計書に基づいた確実な実装と徹底した品質保証を通じて、顧客要求を満たすシステムを構築します。独立系SIerは自社でエンジニアを抱えているため、要件定義から開発まで一貫した品質管理が可能です。
開発工程では、プログラムコーディング、モジュール作成、API開発、データベース構築などの実装作業を行います。テスト工程は段階的に実施され、まず単体テストで個別機能の動作確認、次に結合テストでシステム間連携やインターフェースの検証、最後に総合テストで運用を想定した負荷テストやユーザビリティテストを実施します。
独立系SIerの強みは、多様な技術スタックに対応できる技術者を擁しており、プロジェクトの特性に応じた最適な開発手法を選択できることです。また、コードレビューや静的解析、テストカバレッジ測定などの品質管理手法を用いて、高品質なシステムの納品を実現しています。
継続的インテグレーションなどの効率的な開発手法の導入も進んでいます。
運用・保守・メンテナンス業務
運用・保守・メンテナンス業務は、システム稼働後の安定運用と継続的な改善を通じて、長期的な顧客価値の創出を担う重要な業務です。独立系SIerがシステム開発から運用まで一貫して担当することで、開発時の設計思想や技術的背景を熟知したまま保守業務を継続できるメリットがあります。
日常運用業務では、システム監視、定期バックアップ管理、エンドユーザーサポートなどを24時間体制で実施します。障害が発生した際は、迅速な障害検知、原因調査、復旧作業、そして再発防止策の実施まで一貫して対応します。
保守メンテナンス業務では、定期メンテナンス、セキュリティパッチの適用、OSやミドルウェアのバージョンアップなど、システムの安定性と安全性を維持します。
さらに、独立系SIerは単なるシステム維持だけでなく、性能改善、機能追加、UI/UX改善、セキュリティ強化などの継続的な改善提案も行い、顧客のビジネス成長を支援します。この長期的な関係構築が新たな開発案件の獲得にもつながっています。
独立系SIerの代表的な企業と平均年収
独立系SIerの代表的な企業とその平均年収は次のとおりです。
【代表的な独立系SIer企業と平均年収】
- 大塚商会:約937万円(平均年齢42歳)
- オービック:1078万円(平均年齢36歳)
- ネットワンシステムズ:約830万円(平均年齢40歳)
- BIPROGY:約850万円(平均年齢46歳)
- TIS:約803万円(平均年齢41歳)
- 富士ソフト:600万円(平均年齢36歳)
一般的に、独立系SIer企業全体の平均年収は400~500万円程度です。求人情報・転職サイトのdodaが行った調査によれば、システムインテグレータ全体の平均年収は465万円となっています。
また、独立系SIerの中には成果主義を採用している企業もあります。そのため、スキルを磨いて自身の市場価値を高めれば、大手企業並みの年収も期待できるでしょう。
※参照元:金融庁「EDINET」
※参照元:doda「業種別に見る日本の平均年収(平均年収ランキング最新版)」
▼SIerの年収について詳しく知りたいなら
「SIerの年収は本当に低い? 業界・企業別でみる平均年収と年収を上げる方法を紹介」もあわせてご覧ください。
独立系SIerの年収相場と業界比較
独立系SIerの年収相場は、一般的に400万円から500万円程度とされており、メーカー系・ユーザー系SIerと比較してやや控えめな水準となっています。しかし、実力主義の評価制度を採用している企業が多く、スキルと経験次第では高年収を実現することが可能です。
一般的なメーカー系SIerの年収相場は500万円から1,000万円程度、ユーザー系SIerは500万円から900万円程度とされており、独立系SIerは全体的に100万円から200万円程度低い傾向があります。
ただし、独立系SIerは成果主義の傾向が強く、プロジェクトマネジメントスキルや特定技術分野での専門性を身につけることで、年収アップが期待できる環境にあります。
転職市場では複数業界での経験が高く評価される傾向もあります。
【強み】独立系SIerで働く5つのメリット

エンジニアが独立系SIerで働く具体的なメリットには、主に次の5つが挙げられます。
エンジニアとしてスキルアップしやすい
独立系SIerのメリットとしてまず挙げられるのは、スキルアップのしやすさです。
独立系SIerで携わるプロジェクトは比較的小規模なものが多いため、積極的に新しい技術に挑戦したりプロジェクト全体を俯瞰しながらマネジメントを担ったりしやすいでしょう。
また、親会社がある場合には、その会社のハードウェアやソリューションを使わなければならなかったり、親会社が属する業界での業務が主になったりすることがあります。
しかし、独立系SIerにはそうした制限がなく、さまざまな製品を活用して異なる業界の案件に携われることも特長です。
主体的に仕事へ取り組める
独立系SIerは自分のアイデアを活かして仕事を進めたり、責任を持ってプロジェクトを成功に導いたりといった経験を積みやすい環境です。
親会社からの指示や制約がないため、エンジニア自身が主体的に判断し、責任を持って仕事に取り組める環境もあります。意思決定のスピードが速く、現場の判断が尊重される組織文化が根付いているため、個人の提案や改善アイデアが積極的に採用されることが多いですね。
階層が比較的フラットな組織構造により、若手エンジニアでも重要な技術選定やプロジェクトの進め方について発言権を持つことができます。
具体的には、プロジェクトに最適な技術スタックの提案・決定、開発プロセスの効率化や品質向上の施策立案、直接的な顧客コミュニケーションと問題解決などの業務を任されるケースが多くあります。
少数精鋭のチームでリーダーシップを発揮する機会や、自社サービス開発への企画段階からの参画なども期待できます。プロジェクトの成功が直接会社の業績に影響するため、個人の責任は重くなりますが、その分やりがいと成長機会も大きな環境となっています。
スキルや経験によっては好待遇が期待できる
独立系SIerは人材獲得競争が激しい業界であるため、切磋琢磨しながら成長できる環境を求めている人におすすめです。
優秀な人材を獲得するために成果主義の評価制度を採用している企業が多く、年齢にかかわらず能力に応じて昇進しやすいでしょう。
大手SIerのエンジニアと同等のスキルや経験を持つ人であれば、若くても比較的好待遇で転職できる可能性が高いです。
特に、特定の技術に特化したスペシャリストやマネジメント経験が豊富な人は高い評価を得られる傾向にあります。
多様な業界・プロジェクトに関われる
独立系SIerでは、特定の業界に縛られることなく、多種多様な業界のプロジェクトに携わることができ、幅広いビジネス知識と経験を蓄積できます。
親会社の事業領域に制限されないため、製造業のERPシステム、金融業のモバイルアプリ、医療業界の電子カルテシステム、公共機関の基幹システムなど様々な顧客からの案件を受注することができます。
これにより、一つの業界の景気変動に左右されにくく、常に新しい知識や技術への挑戦機会があります。
技術面でも、基幹システム開発、Webアプリケーション、モバイルアプリ、AI・機械学習システムなど多様な開発案件を経験できるため、エンジニアとしての技術的な幅を大きく広げることができます。
また、大企業の大規模システムから中小企業の小規模システムまで、様々な規模のプロジェクトを経験することで、プロジェクト管理能力や課題解決能力も向上します。
異なる業界の知見を組み合わせた革新的なソリューション提案も可能になり、転職市場での価値も高まります。
自由度の高い働き方が実現できる
独立系SIerは、大企業のような厳格な就業規則に縛られることなく、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現できる環境があります。
親会社の人事制度に従う必要がないため、フレックスタイム制、裁量労働制、リモートワークなど独自の勤務制度を導入している企業が多く見られます。プロジェクトベースの業務が中心となるため、成果を出せば勤務時間や場所にこだわらない働き方が可能になります。
服装についてもカジュアルな服装での勤務が認められている企業が多く、堅苦しいビジネススーツに縛られることなく、リラックスした環境で働くことができます。
また、従業員のモチベーション向上と優秀な人材確保のため、有給取得率の向上やリフレッシュ休暇の導入、スキル向上につながる副業の許可、勉強会参加費用支援や資格取得奨励金制度なども積極的に整備されています。
自由な座席選択や快適な執務空間の提供など、オフィス環境の充実にも力を入れている企業が多く、働きやすさを重視する環境が整っています。
【弱み】「やめとけ」と言われる独立系SIerの5つのデメリット
独立系SIerにはメリットが多くあるものの、中には転職に否定的な意見も一部存在します。それぞれ詳しく解説します。
客先常駐が多い
独立系SIerは下請けの仕事や自社とは関係のない会社からの依頼であるため、設備やセキュリティの観点からクライアント先で仕事をしなければならない場合もあります。
そのような場合、勤務時間や規則などは出向いたクライアント先に合わさなければならず、スケジュールの厳密な管理が求められます。
また、常駐先で疎外感を感じてしまったり、短期間で別のクライアント先に異動しなければならなかったりと、同じ職場で落ち着いて働きたいという人にはあまり向いていません。
納期や予算の管理が厳しい
納期が厳しく、残業が多いという声もあります。独立系SIerはクライアントと良好な信頼関係を築き、長期的な取引をすることが非常に重要です。
そのため、多くの独立系SIerでは納期や予算管理などの面で、顧客に満足してもらえるよう尽力しています。
エンジニアにも高いスキルや柔軟性などさまざまなことが要求されるほか、何らかのトラブルがあった場合でも必ずしも予算や納期の融通が利くわけではありません。
業績が不安定になりやすい
独立系SIerは親会社からの安定した収益基盤がないため、市場変動や景気の影響を受けやすく、業績が不安定になる可能性があります。
案件獲得が会社存続の生命線となるため、大口顧客の契約終了や市場環境の変化が直接的に業績に影響します。特定の業界や技術に依存している企業の場合、その分野の需要減少により大きな打撃を受ける可能性もあります。
資金調達面でも、大企業のような豊富な資金力や信用力がないため、事業拡大や危機対応において制約を受けやすくなります。
これにより、四半期ごとの大幅な業績変動や、業績悪化時の人員削減・給与カット、研修費用や設備投資の削減、業績連動での福利厚生制度の縮小などが起こる可能性があります。最悪の場合、キャッシュフロー悪化による支払い遅延や、事業撤退・倒産といったリスクも完全には否定できません。
安定性を重視するなら、複数業界に顧客基盤を持つ企業や、自社サービスを持つ企業を選ぶことが重要です。財務状況の確認や、過去の業績推移の調査も欠かさず行いましょう。
営業活動も求められる場合がある
独立系SIerでは、エンジニアにも営業活動への参画が求められる場合があり、純粋な技術業務に集中したいエンジニアにとっては負担となる可能性があります。
独立系SIerは常に新規案件の獲得が必要なため、技術的な専門知識を持つエンジニアの営業支援が重要な戦略となってます。人員規模が限られている企業では、営業専任スタッフだけでは対応しきれず、エンジニアが営業活動の一部を担う必要がある場合もあります。
営業活動としては、技術提案書の作成や顧客へのプレゼンテーション、営業担当者と共に顧客訪問や商談への参加、技術的観点からの工数見積もりや費用算出、既存顧客との技術的な関係維持活動などがあります。
さらに、技術系展示会でのブース対応や説明業務、場合によっては個人への売上目標や案件獲得目標の設定が行われることもあります。
技術業務に専念したい場合は、営業部門が独立している企業や、エンジニアの営業参画が限定的な企業を選ぶことが重要ですよ。
転職すべき?独立系SIerに向いている人の特徴

独立系SIerに向いている人の特徴としてまず挙げられるのは、主体的に仕事に取り組みたい人です。
先述したように、独立系SIerの仕事は規模の小さなプロジェクトも多いため、裁量権が大きく、個々の意見やアイデアが尊重されることもよくあります。
そうしたことから、責任感を持って仕事ができる人、周囲に指示されずとも自発的に行動できる人が向いています。
さらに、裁量権があり、必要なマネジメント能力を伸ばせられるため、将来的にスキルアップしてチームリーダーやマネージャーとして活躍したい人にもおすすめです。
スキルをアップデートしたいという強い意思がある人は、独立系SIerで活躍できるでしょう。
独立系SIerで求められるスキルの例

独立系SIerで求められるスキルは、技術的なスキルと能力的なスキル、コミュニケーションスキルに分けられます。
この章では、独立系SIerで活躍するために必要なスキルセットについて紹介します。
- システム開発に必要な技術的な専門スキル
- プロジェクト管理や問題解決などの能力的なスキル
- 顧客対応や営業支援のためのコミュニケーション・営業スキル
技術的なスキル
独立系SIerでは、幅広い技術領域に対応できる柔軟性と、特定分野での専門性の両方を兼ね備えた技術スキルが求められます。多様な業界・規模の顧客を抱える独立系SIerでは、案件ごとに要求される技術が大きく異なるため、一人のエンジニアが複数の技術領域をカバーする必要があります。
独立系SIerのメイン業務はシステム開発であるため、JavaやPython、PHPといった主要言語のスキルは必要不可欠です。また、クライアントから技術的な質問に答えたり適切な工数の算出をしたりするためには、自身がプログラミング言語をしっかり使いこなせていなければなりません。
技術力は営業力にも直結するため、最新の技術にしっかりキャッチアップしていくことも重要なポイントです。
近年ではクラウド技術として、AWS、Azure、GCPのサービス活用とインフラ構築能力も必須要件となっています。開発効率化のために、Spring、Django、React、Angularなどのフレームワーク活用スキルも重視されます。
さらに、AI・機械学習、IoT、ブロックチェーンなどの新技術領域への対応力や、アジャイル、DevOps、CI/CDなどの現代的な開発プロセスの理解も求められています。
技術的な提案力や問題解決力が直接的に案件獲得や顧客満足度に影響するため、高い技術力が競争を勝ち抜く武器となるでしょう。
能力的なスキル
独立系SIerでは、技術力だけでなく、プロジェクト管理、問題解決、論理的思考などの汎用的な能力スキルが成功の鍵となります。限られたリソースで最大の成果を出すことが求められるため、効率的なプロジェクト運営と迅速な問題解決が不可欠です。
プロジェクト管理では、スケジュール管理、リスク管理、品質管理、コスト管理の4つの領域を総合的に統制する能力が求められます。
問題解決力については、課題の本質把握、解決策の立案、実行計画の策定といった一連のプロセスを体系的に進められることが重要です。
また、データ分析、仮説検証、根拠に基づく意思決定を行う論理的思考力も必須とされています。顧客との距離が近く、システム企画から運用まで幅広い工程に関わるため、新技術の迅速な習得や業界知識の継続的な更新を行う学習能力も欠かせません。
少数精鋭の組織では個人の裁量と責任が大きいため、チームをまとめ目標達成に向けて導くリーダーシップや、複数のタスクの優先順位付けと効率的な実行を行う時間管理能力も重要な要素となっています。
コミュニケーション・営業スキル
独立系SIerでは、顧客との直接的な関わりが多いため、高いコミュニケーション能力と基本的な営業スキルが必須となります。営業担当者だけでなく、エンジニア自身も顧客との技術的な議論や提案活動に参加する機会が多く、案件獲得が会社存続の生命線となるため、技術者であっても営業的な視点と能力が求められます。
顧客対応力では、要件ヒアリング、技術説明、進捗報告、課題相談といった幅広いコミュニケーションを適切に行う必要があります。
プレゼンテーション能力では、提案書作成、技術デモ、システム仕様説明などを分かりやすく伝えるスキルが重要です。
営業支援では、見積作成サポート、技術的な質疑応答、商談同席などの業務を担当することもあります。多様な業界の顧客と接するため、相手の立場や業界特性を理解した関係構築能力や、仕様変更の調整、スケジュール交渉、契約条件の議論を行う交渉力も必要とされます。
また、わかりやすい技術文書、報告書、提案資料の作成能力も、顧客との円滑なコミュニケーションには欠かせません。
これらのスキル向上には、社内外での発表機会を積極的に活用し、顧客業界の知識習得や営業担当者との連携強化を図ることが効果的です。
独立系SIer企業のキャリアパスと将来性
SIerは業界として今後も引き続き成長していくと考えられています。
特に独立系SIerはさまざまなスキルを伸ばせることに加え、多種多様な業界での仕事を経験できるため、他のSIerよりもキャリアパスが比較的柔軟です。
一般的にはプロジェクトマネージャーやITコンサルタント、フルスタックエンジニアとして他のSIer企業へ転職するケースが考えられます。
そのほか、常駐先での仕事ぶりが認められてクライアント企業に転職するケースや、自身のコミュニケーションスキルやマネジメントスキルを伸ばしてコンサルティングファームへ転職する人も少なくありません。
▼SIerの将来性を詳しく知りたいなら
「SIerに将来性はある?今後も必要とされる理由と市場価値を高める方法」もあわせてご覧ください。
優良な独立系SIer企業を見極める5つのポイント

この章では、転職や就職を検討する際に、優良な独立系SIer企業を見極めるための具体的な評価ポイントについて紹介します。
優良な独立系SIer企業を見極める5つのポイントには主に以下の内容があります。
- 企業の技術力と市場での実績を客観的に評価する方法
- 安定した案件獲得力と収益構造を確認する指標
- 経営の健全性と長期的な事業継続性の判断基準
- 働きやすさと人材定着率を測るための調査項目
- 品質とセキュリティへの取り組み姿勢の確認方法
企業の実績と専門性をチェック
優良な独立系SIerは、明確な専門領域を持ち、そこでの豊富な実績と高い技術力を有しているため、これらを客観的に評価することが企業選定の第一歩となります。専門性と実績は企業の競争力の源泉であり、安定した案件獲得と高い利益率の実現につながります。実績豊富な企業では、エンジニアが高品質なプロジェクトに携わる機会が多く、スキル向上とキャリア形成に有利になります。
企業の公式サイトやIR資料では、過去3年間の主要プロジェクト事例、導入企業名、システム規模などの実績を確認できます。
専門分野については、金融、製造業、医療など特定業界での深い知識と経験の有無を調査しましょう。
技術力の証明として、保有資格者数、技術認定取得状況、特許出願数なども重要な指標となります。また、業界団体からの受賞歴や顧客からの感謝状、大手ITベンダーとの技術提携や認定パートナー資格なども、企業の信頼性を示す要素です。
独自開発したソフトウェア製品やソリューションがある企業は、技術力の高さと将来性を示していると考えられます。
元請け案件の割合と営業力を確認
元請け案件の比率が高い企業は、高い営業力と顧客からの信頼を持っており、エンジニアにとって良好な労働環境と成長機会を提供できる可能性が高くなります。
元請け案件では中間マージンが発生しないため利益率が高く、その分従業員への還元や設備投資に資金を回せます。また、顧客と直接対話できるため、上流工程への参画機会が多く、エンジニアのスキル向上につながります。一般的に、元請け案件が60%以上、2次請けが30%以下の比率が理想的とされています。
営業体制については、専任営業部門の存在、営業人員数と売上比率を確認することが重要です。長期継続取引の顧客比率やリピート受注率の高さは、企業の信頼性と営業力を示しています。
RFP対応実績、コンペ勝率、提案書の品質なども営業力の指標となります。業界での知名度、メディア露出、セミナー開催実績などのブランド力や、マーケティング部門の存在、展示会出展、Webサイトの充実度なども営業支援体制の評価要素です。
面接では元請け案件の比率について具体的な数値を質問し、下請け中心の企業は避けることが賢明です。
財務安定性と事業継続性を評価
独立系SIerの財務健全性と事業継続性は、長期的なキャリア形成における重要な要素であり、客観的な財務データで慎重に評価する必要があります。
独立系SIerは親会社の支援がないため、財務状況の悪化が直接的に雇用不安や労働条件の悪化につながります。健全な財務基盤を持つ企業は、技術革新への投資や人材育成に積極的で、エンジニアの成長環境も充実している傾向があります。
財務指標では、売上高成長率、営業利益率、自己資本比率、流動比率などを確認し、過去5年間の業績推移や季節変動の有無も重要な評価要素となります。
研究開発費比率、設備投資額、人材育成投資などの投資状況は、企業の将来性を示しています。
リスク管理面では、主要顧客の分散状況や事業ポートフォリオのバランスを確認することで、特定顧客への依存リスクを評価できます。
中期経営計画、新規事業展開、DX推進への取り組みなどの将来戦略も重要です。上場企業の場合は有価証券報告書で詳細な財務情報を確認し、非上場企業については企業データベースや信用調査レポートを活用することが推奨されます。
離職率と労働環境を調査
離職率と労働環境は企業の働きやすさを直接的に示す指標であり、転職後の満足度と長期的なキャリア形成に大きく影響するため、入念な調査が必要です。
低い離職率は従業員満足度の高さを示し、良好な労働環境と成長機会の存在を意味します。一方、高い離職率は労働環境の問題や将来性への不安を示唆しており、転職後に同様の問題に直面するリスクが高くなります。新卒3年以内離職率、全体離職率、年代別離職率などの離職率データを確認することが重要です。
労働条件では、平均残業時間、有給取得率、休日出勤頻度などの実態を把握しましょう。福利厚生については、社会保険、退職金制度、住宅手当、研修制度の充実度を評価します。昇進昇格基準、給与体系、人事評価の透明性などの評価制度も重要な要素です。オフィス設備、在宅勤務制度、服装規定などの職場環境や、資格取得支援、外部研修、社内勉強会、明確なキャリアパスなどの成長機会も確認すべき項目です。
転職口コミサイトでの現職・元職者の生の声を参考にし、面接時には具体的な労働条件について遠慮なく質問することが効果的です。
品質管理とセキュリティ体制を確認
品質管理とセキュリティ体制の充実度は、企業の技術力と信頼性を示す重要な指標であり、将来性のある優良企業を見極める上で欠かせない要素です。高い品質管理基準とセキュリティ体制を持つ企業は、顧客からの信頼が厚く、継続的な案件受注と事業成長が期待できます。
これらの体制が整っている企業では、エンジニアも高い品質基準での開発経験を積むことができ、市場価値の向上につながります。
品質認証では、ISO9001、CMMI、ITSSなどの品質認証取得状況を確認しましょう。開発標準については、開発プロセスの標準化、コードレビュー体制、テスト自動化の導入状況が重要です。セキュリティ面では、ISO27001、プライバシーマーク、ISMS認証などの取得状況を評価します。
内部監査、外部監査、脆弱性診断の実施頻度や、セキュリティ研修、品質管理研修の充実度も確認すべき項目です。過去のセキュリティ事故歴や対応体制の整備状況についても、可能な範囲で調査することが望ましいとされます。
企業のWebサイトで認証取得状況を確認し、面接時には具体的な品質管理プロセスやセキュリティ対策について質問することで、企業の取り組み姿勢を評価できます。
自分に合った独立系SIer企業の見つけ方
独立系やメーカー系、ユーザー系といった分類だけでそこがどのような会社か、転職先として適しているかの判断はできません。
大切なことは、それぞれの分類の中から自身のキャリアに合った企業を見つけることです。そのためには、ポイントを押さえた企業の見極めと事前の情報収集が重要です。
企業選び:つながりのある業界や受注形態、実績などをチェック
企業選びの際は待遇面だけでなく、どのような業界とつながりがあるのかをチェックしましょう。
独立系SIerにさまざまな業界とのつながりがあれば、それだけ仕事を受注できる確率も高くなります。
また、特定の業界に特化している場合も、しっかりとした実績があればコンスタントに仕事が入ってくることが期待できます。
さらに、受注形態もチェックするべきポイントです。下請けや孫請けの仕事が多い場合、元請けの会社に中間マージンを取られるため、高い報酬はあまり期待できません。
好待遇を望むのであれば、下請けだけでなく元請けの仕事も多く受注している会社を選びましょう。
情報収集:エンジニア特化の転職エージェントをうまく活用する
情報を収集する方法として求人サイトや企業のWebサイトなどを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、それらの方法だけでは完璧な情報収集とはいえません。
一方、エンジニアの転職に特化した転職エージェントに登録すれば、キャリアアドバイザーが専門家としての意見を述べてくれます。
ネットには公開されていないような業界の情報も豊富に持っているため、自分だけで調べるよりも効率的です。
独立系SIerに関するよくある質問

この章では、独立系SIerへの転職や就職を検討している方から頻繁に寄せられる質問とその回答について紹介します。独立系SIerに関するよくある質問には主に以下の内容があります。
- 独立系SIerの特徴的な強みと競争優位性
- 独立系SIerに適した人材の特徴と資質
- 独立系SIerでの年収アップの可能性と条件
- 転職・就職前の不安や疑問の解消
- キャリア形成における独立系SIerの位置づけ
どのような人が独立系SIerに向いていますか?
主体性があり、多様な技術や業界に興味を持ち、変化を楽しめる人が独立系SIerに向いています。
独立系SIerでは、親会社からの明確な指示がない環境で自ら判断し行動する能力が求められるため、自ら課題を発見し、解決策を提案・実行できる主体性が重要です。
様々な業界の案件に携わるため、新技術や新業界の知識習得に積極的な学習意欲と、プロジェクトや環境の変化に柔軟に対応できる適応力が必要になります。
プロジェクトベースの業務が中心となるため、変化する環境を前向きに捉え、常に成長しようとする挑戦心も求められます。
逆に、明確な指示や詳細なマニュアルを求める人、安定性を最重視する人、特定技術にのみ特化したい人には、メーカー系やユーザー系SIerの方が適している可能性があります。
年収アップは期待できますか?
独立系SIerでの年収アップは、スキルと成果次第で十分に期待できますが、企業選択と個人の努力が重要な要素となります。
独立系SIerは実力主義の評価制度を採用している企業が多く、年齢や学歴よりも実績と能力を重視する傾向があります。
年収レンジとしては400万円から800万円が一般的とされており、優良企業では1000万円以上も可能です。昇進による年収アップでは、20代後半でプロジェクトリーダー、30代前半でプロジェクトマネージャーへの昇格により年収50万円から100万円のアップが期待できます。
AWS認定やPMP取得による技術手当支給や、プロジェクト成功によるボーナス支給制度を導入している企業も多くあります。
ただし、企業の収益構造や元請け案件の比率によって年収水準に差があるため、元請け案件の多い優良企業を選ぶことが重要です。
年収アップを実現するには、継続的なスキル向上と明確な成果創出に努め、プロジェクトマネジメントスキルや営業力を身につけることが効果的です。
まとめ
独立系SIerはSI企業の中でも自分の裁量で比較的自由に働ける業界です。自分の能力をフルに発揮して働きたいという人に向いています。
独立系SIerへの転職を考えているのであれば、まずはさまざまな業界の情報を豊富に持っている転職エージェントに相談しましょう。
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