施工管理の仕事内容とは？4大管理業務や必要スキルなど徹底解説

施工管理は、建設プロジェクトを成功に導く中核的な役割を担う重要なポジションです。

しかし、施工管理の具体的な仕事内容や求められるスキルなどをくわしく理解している人は多くありません。

この記事では、4大管理業務をはじめとした施工管理の仕事内容と、必要なスキルや適性などを解説していきます。

これから施工管理を目指す人は、キャリア選択の参考にしてください。

施工管理とは

施工管理とは何か、ここでは基本的な知識を解説します。

施工管理の定義

施工管理は、建設工事において適切な施工が行われるよう総合的な管理を行う専門職です。

工程管理・品質管理・原価管理・安全管理の4大管理業務を軸として、計画段階から完成まで一貫してプロジェクト全体をコントロールします。

建設現場では多くの作業員や協力会社が関わるため、これらを統括し円滑な工事進行を実現することが必要です。

施工管理と現場監督の違い

施工管理と現場監督は似た意味で使われることが多いものの、業務範囲と責任の範囲で違いがあります。

企業によって呼び方や業務分担は異なりますが、施工管理の方が包括的な責任を負うケースが多いです。

施工管理の仕事内容は、現場作業の管理に加えて、デスクワークや外部関係者との調整、書類作成や行政手続きなど幅広い業務を担当します。

一方、現場監督は主に建設現場での作業員への直接的な指導や作業進捗の管理が中心となり、現場に常駐することが一般的です。

施工管理技士の資格の有無で、施工管理と現場監督を区別する場合もあります。

女性の活躍可能性

近年、建設業界では女性の施工管理者が増加しており、性別に関係なく活躍できる環境が整いつつあります。

施工管理の業務は体力よりもマネジメント能力やコミュニケーション力が重視され、女性特有の細やかな気配りや調整能力が評価される場面も少なくありません。

国土交通省も建設業における女性の活躍推進を掲げており、働きやすい環境づくりが進んでいます。

※参照：国土交通省「建設産業における女性の定着促進に向けた取組について」

施工管理のおもな仕事内容

施工管理の中核となる業務は、工程管理・品質管理・原価管理・安全管理の4大管理業務です。

ここでは、4つそれぞれをくわしく解説します。

工程管理

工程管理は建設プロジェクトの全工程を計画し、予定通りに工事が進行するよう調整・管理する業務です。

プロジェクト開始前にはまず詳細な工程表を作成し、各工程の所要日数や作業順序を明確に定めます。

工事進行中は日々の進捗状況を把握し、遅れが生じた場合には原因を分析し対応策を講じることも大切です。

天候不良や資材の納品遅れ、人員不足といった不測の事態にも柔軟に対処し、スケジュールの修正や必要な手配を行います。

関係者との綿密な情報共有も重要で、協力会社や作業スタッフとの連携を図り、プロジェクト全体の円滑な運営を支えるのです。

品質管理

品質管理は設計図や仕様書に従って、完成品が求められる品質基準を満たすよう管理する業務です。

使用する材料の品質確認から施工方法の指導まで、品質に関わるあらゆる要素を徹底的にチェックします。

定期的な検査や測定を実施し、品質基準に満たない箇所が発見された場合には、速やかに是正措置を講じて品質の向上を図るのです。

完成後の検査では、発注者や監理者立会いのもと最終的な品質確認を行い、必要に応じて手直し工事の指示も行います。

建設物の安全性や耐久性に直結する重要な業務であり、長期間にわたって使用される建造物の価値を左右する責任の重い仕事です。

原価管理

原価管理は建設プロジェクトの収益性を確保するため、人件費・材料費・機械費などのコストを適切に管理する業務です。

プロジェクト開始時にくわしい予算計画を立て、実際の支出と予算の差異を定期的に分析して、コスト超過を防ぐための対策を講じます。

資材の価格変動や追加工事の発生など、予算に影響を与える要因を早期に発見し、適切な対応を取ることが求められるのです。

協力会社との価格交渉や効率的な施工方法の検討を通じて、品質を維持しながらコストを最適化する役割も担います。

利益確保と品質維持のバランスを取りながら、プロジェクトの経済的成功を実現するための戦略的な判断が必要です。

安全管理

安全管理は、建設現場における労働災害の防止と作業員の安全確保を目的とした業務です。

作業開始前の安全教育から日常的な安全パトロール、危険箇所の点検と改善まで、現場の安全に関わるすべての活動を統括します。

安全管理計画書の作成や安全設備の設置・点検、作業員への安全指導を通じて、事故のない安全な現場環境を維持するのです。

万が一事故が発生した場合には、応急処置や関係機関への報告、再発防止策の策定など迅速かつ適切な対応が求められます。

建設業界では重大事故のリスクが高いため、作業員の生命と健康を守る重要な責任を担う施工管理者には、高度な安全意識と専門知識が必要です。

4大管理以外の仕事内容

ここでは、4大管理以外の重要な業務を2つ解説します。

デスクワーク業務

施工管理者は現場での管理業務と並行して、多岐にわたるデスクワーク業務を担当します。

工事に関する各種書類の作成や整理、行政機関への許可申請や届出業務、社内外の関係者との打ち合わせ資料作成などが主な内容です。

これらの業務は工事の適法性や品質保証において欠かせないものであり、正確性と迅速性が求められます。

近年ではデジタル化の進展により、CADソフトウェアや工程管理システムを活用した業務も増加しており、ITスキルの習得も必要です。

また、工事写真の整理や完成図書の作成など、プロジェクト完了後の引き渡しまでを見据えた文書管理の役割も担います。

外部関係者との調整業務

建設プロジェクトには多くの関係者が携わるため、円滑な情報共有と調整が不可欠です。

発注者や設計者との定期的な打ち合わせを通じて、工事内容の確認や変更事項の協議を行い、プロジェクトの方向性を統一します。

協力会社との作業調整や資材調達の調整も、日常的に発生する大切な業務です。

近隣住民への工事説明や騒音・振動対策の相談対応、官公庁との各種手続きや検査立会いなど、外部関係者との良好な関係維持も施工管理者の責務となります。

これらの調整業務は、工事の円滑な進行と地域社会との共存を実現するために欠かせない要素です。

施工管理に求められるスキル

多様な能力が求められるのが、施工管理者の仕事です。

ここでは、基本のスキルと専門スキルにわけて紹介します。

基本のスキル

施工管理者にまず求められるのは、工程管理や原価管理などの複数の業務を同時に管理するマネジメント力です。

限られた時間と資源を効率的に配分し、チーム全体のパフォーマンスを最大化するためのリーダーシップも欠かせません。

発注者や設計者、近隣住民などと円滑に連携するためのコミュニケーション力と、利害関係が異なる多様な関係者間の調整を行う能力も求められます。

日々変化する現場状況に対応するマルチタスク処理能力や、予期せぬ問題に対する迅速な判断力も必要です。

これらの基本スキルは経験を積むことで向上するため、積極的に責任ある業務に取り組む姿勢が重要といえます。

専門スキル

建築・土木分野の基礎知識は、品質管理や安全管理の業務で適切な判断を下すために施工管理者には必須の専門スキルです。

構造や材料の特性、施工方法や工法について深く理解することで、施工方法の指導や品質基準の確認を正確に行えるようになります。

建築基準法や労働安全衛生法などの法規制に精通していることも、デスクワーク業務での許可申請や届出作業をスムーズに進め、現場の安全管理を徹底するために欠かせません。

現代の建設現場ではデジタル技術の活用が進んでいるため、CADソフトウェアや工程管理システムの操作スキルも求められます。

これらの専門スキルは資格取得や学習の継続が必要であり、習得し続けることでキャリアアップにもつながります。

施工管理に向いている人の特徴

ここでは、施工管理に適性がある人の特徴を5つ紹介します。

責任感が強い

施工管理者は建設プロジェクト全体の成功に対して重い責任を負うため、強い責任感が不可欠です。

作業員の安全確保から品質管理、工期遵守まで、多岐にわたる責任を最後まで全うする意識が求められます。

困難な状況においても責任を他人に転嫁せず、自ら問題解決に取り組む姿勢が重要です。

細かい作業が得意

建設工事では設計図の詳細な確認から各種書類の作成まで、正確性が求められる細かい作業が多く発生します。

小さなミスが大きな問題に発展する可能性があるため、注意深く丁寧に作業を進める能力が必要です。

数値の管理や図面の読解など、細部への注意力を継続して発揮できることが求められます。

リーダーシップがある

多くの作業員や協力会社をまとめ、共通の目標に向けて導くリーダーシップが施工管理者には欠かせません。

困難な状況でもチームの士気を維持し、適切な方向性を示せる人が適しています。

単なる指示出しではなく、メンバーのモチベーションを高め、チーム全体のパフォーマンスを向上させる能力が重要です。

変化に柔軟に対応できる

建設現場では天候や資材調達状況、設計変更など予期せぬ変化が頻繁に発生します。

既存の計画にとらわれることなく、状況に応じて柔軟に対応策を考え、実行できる適応力が必要です。

変化を受け入れ、それをチャンスとして活用できるポジティブな思考がある人が向いています。

問題解決能力がある

建設プロジェクトでは技術的な問題から人間関係のトラブルまで、さまざまな課題が発生します。

問題の本質を的確に把握し、複数の解決策を検討したうえで最適な選択ができる能力が必要です。

論理的思考力と創造性を組み合わせて、効果的な問題解決を実現できる人が施工管理に適しています。

施工管理のやりがい

ここでは、他の職業では得られない施工管理のやりがいを2つ紹介します。

達成感と社会貢献の実感

建設プロジェクトの完成時に得られる達成感は、施工管理者にとって最大のやりがいの一つです。

長期間にわたって携わった建物や構造物が形として残り、多くの人々に利用される様子を見ると、自分が手がけた仕事の社会的な価値を感じられます。

住宅であれば家族の生活基盤となり、公共施設であれば地域社会の発展に貢献するという社会的意義を日々感じられるのです。

困難な課題を乗り越えて完成させたプロジェクトほど、完成時の感動と充実感は大きくなります。

チーム一丸となって取り組んだ成果が目に見える形で残ることは、他の職業では味わえない特別な体験です。

キャリアアップの可能性

施工管理は専門性の高い職種であり、経験と資格取得を通じて確実なキャリアアップが期待できます。

施工管理技士資格の取得により、より大規模なプロジェクトや責任ある立場への昇進の道が開け、それに伴って収入の向上も見込めるのです。

建設業界は常に人材需要があるため、高いスキルを持つ人には多くのチャンスが提供されます。

独立して建設会社を設立する道もあり、自分の理想とする建設事業を実現することも可能です。

長期的なキャリア形成において、明確な成長ルートが描けることは大きな魅力といえます。

施工管理の課題

施工管理には多くの魅力がある一方で、大変な部分も存在します。

ここでは施工管理の課題を2つ紹介します。

業務範囲の広さと業務量の多さ

施工管理者は4大管理業務に加えて、書類作成や外部関係者との調整など幅広い業務を担当するため、業務量が多くなりがちです。

現場での管理業務とデスクワークの両方をこなす必要があり、長時間労働や休日出勤が発生することも少なくありません。

とくに工期が厳しいプロジェクトでは、時間的なプレッシャーが大きくなる傾向があります。

近年は働き方改革の推進により改善傾向にありますが、プロジェクトの性質上、一定の負荷は避けられないのが現状です。

効率的な業務進行と適切な時間管理が、この課題を軽減するためには重要になります。

責任の重さ

施工管理者は作業員の安全確保から品質管理、工期遵守まで重い責任を負うため、精神的なプレッシャーが大きくなることがあります。

一つの判断ミスが重大な事故や品質問題につながる可能性があるため、常に高い集中力と注意力を維持する必要があるのです。

とくに安全管理については、作業員の生命に関わる責任を負うため、相当なストレスを感じる場合もあります。

しかし、この責任の重さこそが専門性の高さを示しており、適切な知識とスキルを身につけることで、責任を全うできる能力を養うことが可能です。

未経験から施工管理を目指す道筋

ここでは、未経験から施工管理者を目指す場合の段階的なキャリア形成を解説します。

建設業界の基礎知識

施工管理を目指すには、まず建設業界の基本的な仕組みと知識の理解が必要です。

建築・土木の基本構造や材料の特性、施工方法などの基礎知識や、建築基準法などの基本的な法規制を書籍・専門学校・オンライン講座などで身につけましょう。

施工管理技士資格の種類

施工管理技士は建設業法に基づく国家資格で、建築・土木・電気・管・造園・建設機械・電気通信の7種類があり、それぞれ1級と2級に分かれます。

自分が目指したい分野に応じて適切な資格を選択し、計画的な取得を目指すことがキャリア形成には重要です。

※参照：
土木・管・電気通信・造園：全国建設研修センター「技術検定」
建築・電気：建設業振興基金「施工管理技術検定」
建設機械：日本建設機械施工協会「建設機械施工管理技術検定」

施工管理技士資格の取得

施工管理技術検定には、1級と2級があり、いずれも第一次試験では規定年齢を達していれば受けられます。

しかし、二次検定では実務経験が必要となるため取得には時間がかかるので、計画的に資格取得を目指しましょう。

また、令和6年度から令和10年度までは制度改正に伴って経過措置期間があり、第二次検定では旧受験資格と新受験資格を選択できます。

くわしい概要につきましては、国土交通省が発表している「令和６年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります」を参考にしてください。

実務経験を積む効果的な方法

未経験者はまず建設会社や施工管理会社に就職し、施工管理補助や現場作業員として経験を積むことから始めます。

先輩施工管理者からの指導を積極的に受け、徐々に責任のある業務を担当していくことで実践的なスキルを身につけることが重要です。

資格取得支援制度のある企業を選ぶことで、実務経験と資格取得を並行して進められます。

転職・就職活動のポイント

未経験からの転職・就職活動では、学習意欲や成長への意識をアピールすることが大切です。

建設業界への関心の高さや施工管理を目指す明確な動機を伝え、基礎知識の学習状況や資格取得への取り組み姿勢を示しましょう。

面接では責任感の強さやコミュニケーション能力、チームワークを重視する姿勢をアピールし、施工管理に必要な資質を持っていることを伝えてください。

よくある質問

施工管理の仕事内容に興味がある人からよく寄せられる質問をまとめました。

施工管理と現場監督は何が違うのですか？

企業により異なりますが、施工管理と現場監督では業務範囲の広さに違いがあります。

現場監督は主に現場作業の直接的な管理・指導が中心で現場に常駐することが多いのに対し、施工管理はより広範囲な管理業務を担当するのが特徴です。

くわしくは「施工管理と現場監督の違い」で解説しています。

施工管理の仕事はきついですか？

施工管理の仕事には確かに厳しい面があります。

4大管理業務に加えて書類作成や外部関係者との調整など業務範囲が広く、工期に追われるプレッシャーや安全管理の重い責任があるのが現実です。

そのため残業や休日出勤が発生しやすいですが、建物完成時の大きな達成感など、多くのやりがいもあります。

「施工管理のやりがい」「施工管理の課題」もあわせてご覧ください。

未経験でも施工管理の仕事に就くことはできますか？

はい、未経験からでも施工管理の仕事に就けます。

ただし、建築・土木の基礎知識や法規制の理解など専門性が求められるため、入社後の継続的な学習が必要です。

まずは実務経験を積みながら施工管理技士資格の取得を目指すのが一般的なルートです。

「未経験から施工管理を目指す道筋」でくわしい内容を紹介しています。

まとめ

施工管理は建設プロジェクトの成功を左右する重要な職種であり、その仕事内容は多岐にわたります。

工程管理・品質管理・原価管理・安全管理の4大管理業務を中心として、プロジェクト全体を統括する幅広い責任を担う仕事です。

現場での管理業務のほかデスクワーク業務や外部関係者との調整業務なども含まれ、建設工事に関わるあらゆる局面で専門的な判断と対応が求められます。

マネジメント力やコミュニケーション力、建築・土木の専門知識など多様なスキルが必要で、責任の重さや業務範囲の広さなど課題もありますが、達成感は大きいです。

未経験からでも知識と経験を積むことで挑戦できる職種なので、建設業界での活躍を目指す人は、この記事を参考に施工管理を将来の選択肢にしてみてください。