就活もキャリアも選べなかった私が、選べる自分になれた。身軽で自分らしくいられる、派遣という働き方

看護師を目指していた学生時代、そして突然の就活、激務の営業職、そしてコロナ禍での倒産と生活の不安。

30代を迎えるまでに、思いがけない転機と選択を何度も迫られてきた飯山幸奈さん(30歳)。 
かつては「選ぶ余裕すらなかった」と語る彼女が、いま派遣という働き方の中で、自分のペースと未来の選択肢を手に入れつつあります。

未経験から製造業に飛び込んだ飯山さんの歩み、そしてその先に描くキャリアの可能性についてお話を伺いました。 

プロフィール紹介 

お名前:飯山 幸奈(いいやま ゆきな)さん

年齢:30歳

現在の職種:食品製造業(派遣社員) 

勤務先:神奈川県内の食品工場

勤務年数:2年

過去の職歴:新卒から正社員で不動産営業職(約6年)、2022年、コロナ禍で会社が倒産。その後食品工場でのアルバイト(約1年) 


これまでと今

高校卒業後、両親の強い希望もあり、看護師を目指して看護系の学校に進学しました。
「でも、実習と国家試験がどうしても乗り越えられなくて、看護師になる夢を諦めました」。それでも、留年は許されないという家庭の方針により、看護の道を諦めた直後から、急いで就職活動を始めることになります。

しかし、新卒としての就職活動の期限はぎりぎり。選ぶというより、「とにかくどこかに決めなければ」という思いで、最初に内定が出た都内の不動産会社に入社しました。

朝早くから出社し、終電まで働き、繁忙期には休日出勤も当たり前。毎月のように目標を追いかけながら、心の余裕はないものの、それでも当時は、達成感や評価に救われていたと言います。

しかし、そんな飯山さんに転機が訪れます。

勤務先の突然の倒産。「本当に、足元が崩れ落ちるような感覚でした。すぐに次の仕事を探しましたが、思うように決まらなくて……」やむを得ず始めたのは、食品製造業のアルバイト。

怒涛のような日々を乗り越え、現在は、食品工場で派遣社員として勤務して2年が経ちます。飯山さんはやっと「選択肢を持つ余裕ができた」と嬉しそうに話します。 


働き始める前の状況と悩み

社会人としてのキャリアを何とか積み重ねていた飯山さんに、思いもよらない出来事が訪れたのは2022年のことでした。

新型コロナウイルスの影響で勤務先の不動産会社が倒産。突然、仕事も収入も、生活の見通しも一気に失われました。「まさか自分の会社が倒産するなんて……本当に信じられませんでした。何も準備できていなくて、“どうしよう”って頭が真っ白になって」

焦って再就職先を探すものの、コロナ禍の影響はどの業界にも及んでおり、すぐに内定が出るような状況ではありませんでした。とにかく生活を支えるために必要だったのは、スピード

職種や条件を選んでいられる余裕はなく、求人サイトで「すぐに働ける仕事」として見つけたのが、食品工場でのアルバイトでした。

「とにかく、何でもいいから働かないと、と思っていました。でも、いざ働いてみると、アルバイトって社会保険がつかないし、保険料を自分で全部払う必要があって。家賃や生活費を払ったら、手元にはほとんど残らないような状態でした」

生活はギリギリ。地元に帰ることを真剣に検討しはじめた頃、同じ工場で働いていたある派遣社員の方との何気ない会話が、飯山さんにとって大きな転機となります。


転機と行動

「同じ工場で働いていたある派遣社員の方に、地元に帰らないといけないかもしれないと相談をしました。その方が、派遣って意外といいよって教えてくれました。

正直、それまで派遣って不安定な働き方っていうイメージしかなかったんです。でも、実際には社会保険にも加入できるし、有給もあるし、時給もアルバイトより高いって聞いて、びっくりしました」

飯山さんはその日のうちに派遣会社を検索し、すぐに登録会に参加。結果として、新たに紹介された別の食品工場での勤務が決まりました。

仕事内容はこれまでと大きく変わらず、業務にすんなりなじめたといいます。

同じような作業なのに、待遇も働きやすさも全然違っていて。“これはもっと早く知っておきたかった”って思いました」


現在の業務と働き方

飯山さんが現在勤務している食品工場では、最初はライン作業の補助や製品の検品といった、比較的シンプルな工程からスタートしました。

「最初は、ひたすら同じ作業を繰り返すのかな?と思っていたんですが、思った以上にいろいろな工程があって、飽きる暇もありませんでした」

作業に慣れてくると、「この工程もやってみて」と少しずつ任される仕事が増え、現在では、ライン全体の進捗や人員配置を見ながら動く、工程管理的な役割も担うようになっています。

「それぞれの工程がスムーズに流れているかをチェックしたり、トラブルが起きたときにどの作業に応援を出すか判断したり。現場が滞りなく回るよう、影で支えるような立場ですね」

1日の仕事の流れは以下の通りです。 

7:50 出勤・朝礼
その日の作業目標や注意点、安全確認などを全体で共有

8:00 作業開始
担当ラインで作業、機械や作業にトラブルがないかもチェック

10:00 点検・記録
温度管理や機械の稼働状況を確認して記録、廃棄数や進捗にも目を配る

12:00 昼休憩
休憩室で同僚とランチ。雑談をしながら、ほっとひと息つく大切な時間

13:00 午後作業
工程の遅れが出そうな部分をサポート、必要に応じて人手の調整も

15:30 作業記録・報告
当日の出来事や気づいたことを簡潔にまとめ、現場リーダーと共有

17:00 終業・退勤
最終確認と後片付けを終えて退勤。基本的にほぼ毎日、定時で帰宅

「前の職場では、残業も休日出勤も当たり前だったので、毎日定時に帰れるって最初は不思議なくらいでした(笑)」と飯山さんは話します。 

人間関係についても、「とにかく穏やかで、みんな優しい」と笑顔を見せます。 
「何かミスをしても、『大丈夫、次は気をつければいいよ』って声をかけてくれるんです。ピリピリした空気がないことが、今は本当にありがたく感じます」 

ある日、工程が遅れそうになった場面で、飯山さんが機転を利かせて応援の調整を行ったことで、ライン全体がスムーズに回ったことがありました。 「その時、社員の方に『助かったよ』って声をかけてもらってとても嬉しかったです」


働き方の変化 Before / After

Before:正社員(不動産営業)時代

  • 仕事へのスタンス: 自分に他の可能性があるなんて考えたこともなかった。ただ目の前の仕事をこなし、成果を出すことが全てだと信じていた。
  • 時間の使い方: 朝早くに出勤し、終電で帰宅。自分の時間や余裕は一切なかった。
  • 休日: しっかり休むことに後ろめたさを感じていた。常に仕事のことが頭から離れなかった。
  • 考え方:正社員以外の働き方なんて考えたこともなく、将来のことすら見えないほど、日々をこなすことで精一杯だった。
  • 人間関係: ピリピリとした緊張感のある人間関係の中で、競争と成果が中心の職場だった。

After 派遣社員(食品製造)現在

  • 仕事へのスタンス: 「こうでなきゃ」と思い込まず、自分に合った働き方を選べるように。成果だけに縛られず、心地よく働ける環境を大切にしている。
  • 時間の使い方: ほぼ毎日定時で退社。趣味や日常を楽しむ時間が持てるようになり、自分の生活をちゃんと取り戻せた。
  • 休日: 休むことも仕事の一部だと思えるように。しっかり休んで、しっかり働く。そのリズムが自然に身についてきた。
  • 考え方: 正社員にこだわらなくても、未来はひとつじゃないと気づけた。選択肢を持てることで、将来の自分を前向きに描けるようになった。
  • 人間関係:お互いを思いやれる同僚に囲まれ、協力し合いながら働ける安心感のある職場。人間関係のストレスがなく、自然体でいられる。

これからの目標・展望

看護師の夢を諦めたときも、正社員の職を失ったときも、「選択肢なんて持てなかった」と飯山さんは振り返ります。

自分の意志で“選ぶ”なんて余裕はなくて、ただ『早く決めなきゃ』『とにかく働かなきゃ』って、そればかりでした」

でも、派遣という働き方を知り、少しずつ自分のペースで働けるようになった今、初めて「自分で選んでいいんだ」と思えるようになったといいます。

「今の職場でキャリアアップして正社員を目指す道もあるし、もう少し経験を積んで転職するという選択肢もある。もしかしたら、もう一度看護師を目指すという道も、ゼロではないかもしれません」

今はまだ、はっきりとしたゴールは決まっていません。だけど、「選べる状態にいる」こと自体が、何よりも心強いと飯山さんは語ります。

「派遣で働いてみたことで、未来がひとつだけじゃないって思えるようになりました。あの頃にはなかった視点を、今はちゃんと持てている。それが本当にありがたいです」

身軽で、自分らしくいられて、未来の可能性に目を向けられる派遣社員という働き方
飯山さんのまっすぐな言葉には、ひとつひとつの選択を積み重ねてきた確かな実感が込められていました。

※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。