好きな仕事に疲れた僕が、派遣という選択肢で人生を立て直した話

「好きなことを仕事にする」ことは、多くの人が憧れる働き方です。けれども、その「好き」が時に心身をすり減らす原因になることもあります。
今回お話を伺った春日隆太さん(33歳)も、かつては映像などを手がける制作会社で夢を追いかけるなかで、限界まで自分を追い詰めてしまったひとりでした。

しかし、派遣という働き方を選んだことで、春日さんは再び「自分らしさ」を取り戻し、穏やかな生活と前向きに働ける日々を手に入れます。
この記事では、春日さんがどのようにキャリアの転機を迎え、派遣という選択肢が人生にどのような変化をもたらしたのかを紹介します。

転職に悩み、働き方を見つめ直したい20〜30代の読者にとって、「自分も一歩踏み出してみよう」と思えるきっかけになれば幸いです。

プロフィール紹介 

お名前:春日 隆太(かすが りゅうた)さん

年齢:33歳

現在の職種:製造業(自動車部品の組立・検品など)

勤務先:関東近郊にある自動車部品製造工場

勤務年数:2年(派遣社員)

過去の職歴:映像などを手がける制作会社に約7年間勤務(正社員)


これまでと今

大学卒業後、「やっぱり好きなことを仕事にしたい」という強い思いから、デザイン系の専門学校に進学した春日さん。卒業後は、念願だった映像などを手がける制作会社に正社員として入社しました。

当初は、好きな仕事に携われる喜びや、モノづくりのやりがいを感じていたといいます。「納期前には会社に寝袋を持ち込んで泊まり込むこともあって、当時はそれすら“業界人っぽくて楽しい”と思っていました」と、当時を懐かしそうに振り返ります。

しかし、そんな不規則な生活が年単位で続いたことで、次第に心身ともに限界を迎えるように。休日も少なく、自分の時間が持てない日々が続き、最終的には7年間勤めた会社を退職しました。

退職後は、「もう働きたくない」と思うほどに疲れ果てていたといいます。それでも今では、関東近郊の自動車部品製造工場で、派遣社員として新しい働き方に出会い、穏やかな生活を送っています。

かつて「疲弊しきっていた」と話す春日さんの表情は、今では穏やかで、仕事への前向きな気持ちがにじみ出ていました。


働き始める前の状況と悩み

映像系の制作会社での7年間は、春日さんにとってまさに「心身をすり減らす」日々でした。長時間残業が当たり前となり、納期前には会社に泊まり込むことも珍しくなかったといいます。

「休日も少なく、生活は常に不規則で、自分の時間がまったく持てませんでした」。
仕事への情熱はあったものの、年単位で続く過酷な働き方は、次第に春日さんの健康と気力を奪っていきました。

限界を感じながらも、「憧れの仕事だから」「みんな頑張っているから」と思い込んで無理を重ねていたといいます。

同じ業界内への転職も、「また同じような働き方になるのでは」と考えると選べなかった。最終的に、7年間勤めた会社を退職するという決断を下しました。

しかし退職後も、すぐに気持ちを切り替えることはできませんでした。
「もう働きたくない」と思い詰めるほど心身は疲弊しており、当面の生活費への不安も重なって、インターネットで「楽な仕事」「ストレスの少ない働き方」といったキーワードを検索する日々が続いたといいます。

正社員として再び働くことへの覚悟も持てず、明確な目標がないまま、漠然とした不安だけを抱えていた時期でした。


転機と行動

春日さんに転機が訪れたのは、同じくクリエイティブ業界を離れていた友人からの「工場の仕事してるけど、意外といいよ」という一言でした。
当時、「楽な仕事」「ストレスの少ない働き方」を模索していた春日さんにとって、工場勤務は確かに条件に合いそうに思えた一方で、「単調でつまらなそう」「本当に自分に続けられるのか」という不安もあったといいます。

それでも、「無理せず働けるなら、まずは試してみよう」と思い、派遣登録を決意しました。

紹介された勤務先は、自宅から電車で40分以内。職場見学で感じた落ち着いた雰囲気や、安定した時給も決断を後押ししました。

実際に働き始めた最初の1週間は緊張もありましたが、徐々に業務や職場に慣れていく中で、「思っていたよりずっと働きやすい」と感じられるようになった春日さん。やがて、仕事に対する見方にも変化が現れます。

「最初は“楽な仕事”くらいに思っていたんです。でも実際は、生産性を上げる工夫やロスを減らす取り組みがあり、チームで目標に向かって取り組む感じが心地よくて。軽く見ていたことが失礼だったと反省しました」

規則正しい勤務体制のなかで生活リズムも整い、心身の状態も目に見えて回復していきました。 
「この前の健康診断、まさかのオールAでした(笑)。体も楽になったなって思いますね」

友人の何気ないひと言と、自分自身の「まずはやってみよう」という行動が、春日さんにとって働くことへの価値観を大きく変えるきっかけとなりました。


現在の業務と働き方

現在、春日さんは関東近郊の自動車部品製造工場で、主に部品の組立や検品、品質チェックを担当しています。

一見シンプルに見える作業ですが、「いかに効率よく、ミスなく作業するかを考えるのが面白い」と話す春日さん。現場では月ごとに達成目標が設定されており、チームで協力しながら生産性向上に取り組んでいます。

1日の流れ

8:00 出勤・朝礼
チームメンバーと朝礼を行い、当日の作業内容や注意事項、達成目標などを共有。作業台の準備や安全確認を行ってから業務に入ります。

8:15 作業開始(組立・検査)
決められた手順に従って部品を組み立て、不具合がないかをチェック。丁寧かつスピーディに進めるために、常に工夫を意識して作業を進めます。

12:00 昼休憩
工場内の休憩スペースでお弁当を食べたり、スマートフォンで動画を見たりと、気分をリフレッシュする時間。

13:00 午後の作業再開 
午後も引き続き組立・検品業務。午前中に見つかった課題点を共有し合い、チーム全体で精度とスピードの両立を図ります。 

16:30 片付け・記録入力
使用した工具や作業スペースを清掃し、その日の生産実績や気づきなどを日報に記録。

17:00 退勤
定時で退勤。仕事の疲れを翌日に残さないよう、自宅ではリラックスして過ごすのが習慣になっているそうです。

職場には幅広い年代のスタッフが在籍しており、落ち着いた雰囲気が特徴です。 「困ったときに気軽に相談できるし、必要以上に気を使わず働ける環境に救われました」と話します。  

中でも印象に残っているのが、年末の「改善提案表彰制度」で自身のアイデアが評価され、全体朝礼で表彰されたこと。 「“派遣でもちゃんと見てもらえるんだ”って驚きました。地道にやってきたことが報われた気がして、すごくうれしかったです」 

この経験を通じて、春日さんの中で「派遣」という働き方への見方も大きく変わっていきました。


働き方の変化 Before / After 

【Before】映像制作会社時代(正社員)

働き方:納期前の泊まり込みや深夜残業が常態化し、休日もほとんどない不規則な生活が続いていた。仕事に追われる毎日で、自分の時間はほとんど確保できなかった

健康面:食事や睡眠のリズムは乱れ、心身ともに疲労が蓄積していた
疲れが取れず、体調不良が慢性化していた

気持ち:「憧れの仕事だから」と無理を続けていたが、次第に職場に向かうことすらつらくなっていった。常に気を張って働いていたため、心の余裕が失われていった

人間関係:忙しさやプレッシャーから職場は常に緊張感があり、些細なやりとりにも神経を使っていた。気軽に話せる関係性は築きづらく、孤独感を感じることもあった

キャリア観:「休むことは悪いこと」という思い込みに縛られ、自分を追い詰めていた
転職も検討したが、同業界は長時間労働が常態化しているため転職に踏み出せず、一旦は楽な仕事をしたいと思っていた

【After】自動車部品工場勤務(現在:派遣社員)

働き方:現在は定時で退勤でき、残業もほとんどない働き方に変わった
業務後は趣味や友人との時間を過ごせるようになり、生活にゆとりが生まれた

健康面:生活リズムが安定し、食事や睡眠も規則的になった
健康診断では「オールA」の評価を受け、体調の良さを実感している

気持ち:職場に向かうことへの抵抗がなくなり、気持ちに余裕が生まれた
無理をせずに働けることで、少しずつ自信を取り戻している

人間関係:落ち着いた雰囲気の職場で、必要以上に気を使わずに働けている
困ったときにはすぐに相談できる関係性があり、人との関わりにも安心感がある

キャリア観:「焦らず、自分のペースで働きたい」と考えられるようになった
長く働ける場所を見つけられたという実感があり、キャリアに対して前向きな気持ちが芽生えている


これからの目標・展望

現在の春日さんには、今すぐに叶えたいような明確な「夢」はないといいます。
それでも、「今の工場で正社員として働けたら」という具体的な目標を持ち、日々の業務に向き合っています。

春日さんにとっての“働く意味”は、「自分が心地よく働ける場所を見つけ、その場所で誰かの役に立つこと」。その延長線上で、工場勤務のポジティブな一面を、もっと多くの人に伝えていきたいと考えているそうです。

「工場って体力仕事でキツいと思われがちだけど、実際は工夫や連携が求められる“頭を使う現場”だし、人も温かい。そういう良さを、自分の言葉で発信できるようになれたらいいなと思っています」と春日さんは語ります。

将来的には、「工場勤務はきつい仕事」というイメージを払拭し、「そうではないと思える職場環境をつくる側になりたい」という展望も描いています。

派遣という働き方についても、今では前向きに捉えています。
「派遣=不安定」というイメージを持つ人が多いことも理解している一方で、実際にはサポート体制が整っていて、自分に合った働き方を選べるのが強みだと感じているそうです。

「今の僕みたいに、“もう一度働いてみよう”と思えた人が、少しでも前に進める手助けになればうれしいです」

春日さんの歩みは、派遣という働き方が“つなぎ”ではなく、“自分らしく働くきっかけ”にもなり得ることを、静かに伝えてくれていました。

※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。