大学卒業後、飲食店チェーンの正社員として6年間勤務。長時間労働と不規則な休日に悩み、将来への不安を抱えていた岸本さん。
「正社員=安心」という考えが揺らぎ始めたとき、彼女は一つの決断をします。それは、まったくの未経験である「営業職」に、派遣社員として挑戦することでした。
派遣という働き方にネガティブなイメージを持っていた彼女が、なぜその道を選び、そこで何を得たのか。等身大のキャリアチェンジの経験から、自分らしい働き方を見つけるヒントを探ります。
目次
プロフィール紹介
お名前:岸本 美月さん
年齢:29歳
現在の職種:営業職
勤務先:通信サービス会社
勤務年数:1年3か月
過去の職歴:大学卒業後、飲食店チェーンに正社員として入社。ホール業務を中心に6年勤務
これまでと今
大学卒業後、岸本さんは飲食店チェーンに正社員として入社しました。ホール業務を中心に6年間勤務しましたが、当時の生活は厳しいものでした。
業務量の多さや長時間労働に悩む中で、「このまま10年後も変わらない日々を送っていたらどうなるんだろう」という将来への不安と焦りが募っていったといいます。
収入は悪くなかったものの、将来が見えない日々。正社員としての安定と引き換えに、心の余裕も、体力も、少しずつすり減っていくのを感じていたそうです。
そんな状況から一転、現在は通信サービス会社の営業職で派遣社員として働いています。「生活リズムが整ったことで、体調も良くなりました」と語る岸本さん。毎週末の休みには、趣味の読書や資格の勉強に時間を費やし、以前より収入も安定したことで「心の余裕ができた」と変化を実感しています。
仕事に対する気持ちも大きく変わり、以前は“なんとなく働いていた”自分が、“目標を持って働ける”ようになったこと、自分の強みや課題を意識するようになったことが大きな変化だと感じています。
働き始める前の状況と悩み
飲食店で正社員として働く中で、岸本さんは長時間労働と不規則な休日に苦しんでいました。朝から夜遅くまでの勤務に加え、休憩時間も十分に取れない状況。
週に一度の休みがやっとという中で、家族や友人との時間を持てないことが、精神的に大きな負担となっていたそうです。
収入は悪くなかったものの、日々の忙しさに追われる中で、自身の10年後を想像しても変化が見えず、「将来が見えませんでした」と当時の不安を語ります。
転職を考え始めたものの、派遣という働き方に対しては、「スキルがないと難しいのでは?」「すぐに切られてしまうのでは?」といったネガティブなイメージを持っていたそうです。
転機と行動
派遣という働き方にネガティブな印象を持っていた岸本さんでしたが、転機は思わぬ形で訪れました。たまたま学生時代の友人と再会した際、彼女が派遣社員として働いていると聞いたのです。
その友人は正社員経験がなかったそうですが、「今が一番楽しく仕事できている」と話しており、その言葉は岸本さんにとって非常に印象的でした。友人の話を聞き、「派遣という働き方は実は自由度が高く、自分次第で成長できる働き方かもしれない」と考え方が変わり始めたといいます。
新しい仕事として営業職を選んだのは、「人と関わる仕事を続けたい」という強い思いがあったからでした。飲食店のホール業務も人と関わる仕事でしたが、今度は接客とは異なる“対話力”を試してみたいと思ったそうです。営業であれば、「自分の言葉で相手を動かす経験ができるのではないか」と感じ、挑戦を決意しました。
現在の派遣先を選んだ決め手はいくつかありました。「未経験歓迎」であること、「丁寧な研修制度あり」という点に加え、飲食業時代には難しかった「固定の土日休み」と「自宅から電車で30分以内」という希望条件が揃っていたことです。
さらに、登録時の担当コーディネーターが親身に相談に乗ってくれたことも、安心して決断できた大きな要因だったと振り返ります。
現在の業務と働き方
現在、岸本さんは通信サービス(主にインターネット回線や関連オプション)の営業職として働いています。
既存のお客様に対して、サービスの案内やアップセル、プラン変更の提案などを行っており、業務内容はテレアポと訪問営業がメインです。
1日の流れ
8:30 出社準備:デスク周りを整え、PCと電話システムを立ち上げる。メールチェックや引き継ぎ事項の確認を行う。
9:00 朝礼・チームミーティング:営業チームで朝礼。昨日の成果や今日の目標を共有し、リーダーからのフィードバックを受ける。
9:30 顧客リストチェック・架電スタート:顧客リストをもとに電話でアプローチ。サービスの利用状況に合わせて提案内容をカスタマイズ。午前中に10〜15件程度の架電を目指す。
12:00 昼休憩:同僚とランチを楽しんだり、天気の良い日は公園でリフレッシュする。
13:00 訪問営業の準備・外出:午後は訪問営業。2~4件のお客様宅を訪問し、プランの説明や見積もりを行う。お客様の生活スタイルに合わせた提案のため、事前の準備が重要。
16:30 帰社・事務処理:会社に戻り、訪問結果の入力、メール返信、提案資料作成などを行う。
17:30 日報作成・業務終了:1日の活動内容を日報にまとめ、上司に報告。業務が順調な日は、ほぼ定時に退勤。
この仕事のやりがいは、やはりお客様からの言葉だといいます。「お客様の『ありがとう』が何よりのやりがい。自分の工夫が認められた気がして、自信につながります」
もちろん、大変な点もあります。例えば、提案してもお客様から断られてしまった時、最初は落ち込んだそうです。しかし先輩から「その断られた商談に、次のヒントがあるよ」というアドバイスをもらい、見方が変わっていったといいます。
職場の雰囲気は「とても風通しがよく、質問しやすい環境」とのこと。きちんと意見を聞いてもらえることに感謝しているそうです。
働き方の変化 Before / After

飲食店の正社員時代と、現在の派遣営業として働き始めてからを比較してみると、生活や心境に大きな変化がありました。
Before(飲食店で正社員をしていた時)
- 生活状況: 朝10時~夜11時が基本。休憩もままならず、週1日の休みがやっと。年末年始も勤務していたので家族と過ごせなかった。
- 仕事への意識: 将来が見えず、不安と焦りが大きかった。惰性で働くような毎日。
- 収入:当時はそれなりに満足していたが、将来のことを考えると不安になった。
- 精神面:労働時間の過多で体力や心の余裕がすり減っていた。
After(通信サービス会社で営業を始めてから)
- 生活状況: ほぼ定時退勤が可能。固定の土日休みがあり生活リズムが整い、家族や友人との予定も合わせやすくなった。
- 仕事への意識: 目標を持って働けるようになった。自分の強みや課題を意識するようになった。
- 収入:以前より安定しているので、心にゆとりが持てる生活を送っている。
- 精神面:残業時間がほとんどなく、趣味や資格の勉強に時間を使えている。
これからの目標・展望
今後のキャリアについては、まず現在の仕事で「営業スキルをしっかり磨くこと」を第一の目標としています。さらに、いずれは法人営業にもチャレンジしてみたいと考えており、営業関連の資格取得にも挑戦しながら、日々学び、経験を積んでいるそうです。
将来的にやってみたいこととしては、「いずれは人を育てる側に立ちたい」という思いがあるといいます。自身が未経験から挑戦し、周りの人に助けられた経験から、「自分が助けられたように、未経験で不安を抱える誰かの力になれたらいいな」と考えているそうです。
おわりに
派遣という働き方に対する今の印象は、当初のネガティブなイメージから大きく変わりました。「自分に合った働き方を選べる柔軟性がある」と感じており、「スキルを身につけながら無理なくキャリアを重ねられるのが魅力」だと語ります。
そして、これからも大切にしていきたい価値観としてあげたのは、「自分の時間を大切にしながら、前に進む」ことです。無理をしない働き方の中で、どう成長していくか。それが、岸本さんのこれからのテーマだと話してくれました。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。