結婚や子育てといった将来のライフイベントを見据え、「いつでも戻ってこられる仕事がしたい」と考えるようになった馬場 葵さん(25歳)。
大学卒業後はアパレル販売職の正社員として働いていましたが、年齢やライフステージの変化により、続けることが難しくなる不安を感じるようになったといいます。資格も特別なスキルもなく、専門学校などに通いなおす余裕もない。そんな中で出会ったのが、未経験からスタートでき、働きながら国家資格を目指せる「介護職」でした。
正社員から派遣スタッフという働き方への転換には最初ためらいもありましたが、今では「介護という仕事の魅力を実感しながら、無理なく成長できている」と話す馬場さん。介護業界ではさまざまな施設形態があり、自分に合った環境で経験を積める柔軟性も魅力のひとつだといいます。
将来のブランクにも強く、年齢を重ねても長く続けられる「資格と経験」を手にするために踏み出した新たな一歩。自分らしい働き方を見つけた馬場さんに、キャリアチェンジのきっかけや現在の想いを伺いました。
目次
プロフィール紹介
•お名前: 馬場 葵(ばば あおい)さん
•年齢: 25歳
•現在の職種: 介護職員
•勤務先: 茨城県内の有料老人ホーム
•勤務年数: 特別養護老人ホーム1年半/有料老人ホーム勤務半年(派遣)
•これまでの職歴: 大学卒業後、アパレル販売職を2年間経験(正社員)。その後、転職を決意し、派遣スタッフとして介護職へ
これまでと今
大学卒業後、ショッピングモールに入っているショップで、正社員としてアパレル販売の仕事をスタートさせた馬場 葵さん。接客・レジ対応から在庫管理、ディスプレイの作成まで幅広い業務を任され、最初のうちはやりがいも感じていたといいます。
しかし、土日祝は繁忙期のため基本的に休めず、長時間の立ち仕事や日々のノルマに追われる生活が続くうちに、体力的にも精神的にも限界を感じるようになったそうです。
そんな中で、最も大きな悩みとなったのは“この先どうなるんだろう”という将来への不安でした。
「年齢を重ねたときに今のブランドで働き続けられるかと考えると、難しさを感じていました。結婚や子育てで一度仕事を離れたら、戻ってくるのは正直難しいんじゃないかと」
資格も特別なスキルも持っていない――そんな焦りも重なり、「このまま働き続けても、手元に何も残らない気がして」と振り返ります。
そんな馬場さんは現在、有料老人ホームで介護職員として働いています。
最初はまったくの未経験からのスタートでしたが、日々の業務を通じて実務経験を積みながら、介護職員初任者研修の資格も取得。今は、介護福祉士の国家資格取得を目指しています。
「介護職は40代、50代になっても働き続けられること、国家資格を取得できればブランクがあっても働けるなどメリットも多く、以前のように“このままでいいのか”と迷うことがなくなりました」 と前向きな気持ちが伝わってきました。
働き始める前の状況と悩み
アパレル勤務時代、心身の疲れや、この先の人生への漠然とした不安が重なり、「働き方を変えたい」という気持ちが強くなっていったという馬場さん。
しかし実際に転職を考え始めたものの、資格も特別なスキルもない状態でチャレンジできる職種は限られていると感じ、「自分には何ができるのか、何が向いているのか分からなかった」といいます。
なかなか次の一歩が踏み出せずにいたなかで、ふと目にとまったのが「派遣」という働き方でした。以前からその存在は知っていたものの、最初は「派遣=不安定」というイメージが強く、すぐには前向きになれなかったそうです。「契約期間が決まっていることや、人間関係になじめるかといった不安があって、なかなか踏み出せませんでした」と当時の心境を語ります。
それでも、今のままではいけないと思い、情報を集める中で派遣ならではのメリットにも気づくようになります。
「介護職のように未経験からでも始められて、働きながら資格取得を目指せる制度がある。さらに派遣会社の研修制度やフォローもあって、職場のミスマッチがあれば施設異動もできると知り、安心感が持てました」
正社員という肩書きにこだわるよりも、「柔軟な働き方の中で経験を積み、自分に合う環境でキャリアを築く方が、今の自分には合っている」と思えるようになり、ようやく一歩を踏み出す決意が固まったといいます。
転機と行動
転職活動に行き詰まりを感じていたある日、馬場さんは大学時代の友人と久しぶりに再会する機会がありました。話をしていく中で、その友人が派遣会社で正社員として働いており、介護分野での派遣スタッフのサポートに関わっていることを知ったといいます。
「今うちの派遣で働いているスタッフも、未経験から介護を始めた人が多いよ。資格取得のサポートもあるから、葵の希望にあってるかも」
そう声をかけられたことが、馬場さんの転機になりました。
それまで介護の仕事を意識したことはありませんでしたが、「未経験からでも手に職を付けられるならいいかも」と、自然と前向きな気持ちが芽生えていったといいます。
友人の後押しもあり、馬場さんは派遣会社に登録。未経験からでもスタートできる介護施設職をいくつか紹介してもらい、家から通いやすい施設を受けることにしました。見学時にスタッフが利用者さんに丁寧に寄り添っている姿を見て、「ここで働きたい」と思えたことが、最終的な決め手になったと語ってくれました。
最初の勤務場所は、自宅から近い特別養護老人ホームでした。未経験からのスタートでしたが、現場での実務を通じて少しずつ介護の基本を身につけていき、働きながら「介護職員初任者研修」の資格も取得しました。1年半ほど勤務を続けた後は、生活支援やレクリエーションなど、より幅広い経験を積みたいという思いから、有料老人ホームへと転籍。自分のペースでスキルの幅を広げながら、着実にキャリアを築いています。
現在の業務と働き方
現在、馬場さんは有料老人ホームで、入居者の方々の日常生活を支える介護職として活躍しています。
業務内容は多岐にわたり、食事のサポート、入浴や排せつの介助、さらにはレクリエーションの企画や実施など、身体的なケアから心のケアまで幅広く担っているそうです。
1日の仕事の流れ
8:00 出勤・申し送り
夜勤スタッフから入居者の夜間の様子や体調変化を引き継ぎ、当日の担当業務をチームで共有します。
8:30 朝食介助・服薬サポート
食堂での朝食サポート。食事量や服薬の状況を確認・記録し、必要に応じて介助を行います。
10:00 入浴介助・居室整備
入浴日には順番に入浴介助を実施。安全第一を心がけつつ、入居者との会話も大切にしています。合間にはベッドメイクや掃除も担当。
11:30 昼食介助
利用者の体調や好みに寄り添いながらの昼食介助を行います。
13:00 休憩
14:00 レクリエーション・見守り
折り紙や体操、歌などを使って参加しやすいレクリエーションを実施。認知機能の維持も意識しながら企画・進行を行います。終了後は見守りや記録業務。
15:30 おやつ配膳・排せつ介助
おやつや水分補給のサポートのほか、午後の排せつ介助や体位変換なども丁寧に行います。
17:00 申し送り・退勤
夜勤スタッフに1日の変化や重要事項をしっかりと申し送りし、翌日に向けた準備を整えて退勤します。
やりがいについて尋ねると、「やっぱり入居者の方に『ありがとう』と言っていただけると、本当にうれしいです」と、やわらかく微笑む馬場さん。
「笑顔を見られたとき、自分の存在が誰かの役に立っていると実感できるんです」と話してくれました。
もちろん、苦労もありました。 「最初は覚えることが多くて、本当に大変でした。体力的にもきつくて、慣れるまでは正直しんどかったです」
それでも、職場の雰囲気や仲間の支えに助けられたといいます。 「何でも相談しやすい空気があるので、ひとつずつ乗り越えられました。少しずつですが、自信を持てるようになってきました」
働き方の変化 Before / After

Before:アパレル販売職(正社員)
働き方:残業が多く、お客様対応が入ると休憩が取れないことも。週末は来客が多いため基本的に休めず、自分の時間を確保しづらい状況。
精神的状況:長時間の立ち仕事に加え、ノルマに追われる毎日。心身ともに疲れきり、常に疲労感が抜けなかった。
キャリア:「年齢を重ねたときに今のブランドで働き続けるのは難しい」「結婚や子育てで一度仕事から離れたら戻ってくるのは難しいんじゃないか」「手に職がつかない」という漠然とした不安。
やりがい・成長実感:やりがいは感じつつも、「スキルが身につかない」「自分に何が残るのか分からない」と感じる日々
After:介護職員(現在)
働き方:残業はほとんどなく、基本的に定時で退勤。曜日による繁忙の差が少ないため、土日も比較的休みを取りやすい。
精神的状況:最初は覚えることの多さや体力面に不安もあったものの、周囲のサポートやスキルが身についていると思えることで前向きに働くことができるようになった。
キャリア:40代、50代になっても働き続けられること、国家資格を取得できればブランクがあっても働けるなど、以前のような“このままでいいのか”と迷うことがなくなった。
やりがい・成長実感:利用者からの「ありがとう」の言葉が何よりのやりがい。資格取得を目指すという目標ができた。
これからの目標・展望
今後のキャリアについて、馬場さんははっきりとした目標を持っています。
「今の目標は、介護福祉士の国家資格を取得することです」と語り、着実に準備を進めています。
介護福祉士を取得するには、3年間の実務経験に加えて「実務者研修」の修了が必要。そのため、日々の業務で経験を重ねながら、並行して資格取得の勉強も進めている最中です。働きながら学ぶのは簡単ではないけれど、“この資格があれば将来も安心して働き続けられる”という希望が持てます」と、前向きな気持ちで取り組んでいます。
初めは不安もあったという派遣という働き方について、今では「自分に合ったキャリアの形を見つけるための、大切な選択肢だった」と感じているといいます。
勤務地や仕事内容に柔軟性があり、ライフスタイルや成長段階に合わせて経験を積めるのが、派遣ならではの魅力。「途中からでも新しいことに挑戦できるし、無理のないペースでスキルを身につけていけるのがありがたいです」と、今の働き方に満足している様子がうかがえました。
今後、介護福祉士資格の取得を経て、さらに歩みを進める馬場さんの姿は、未経験からキャリアを築こうとする多くの人にとって、大きな励ましとなるはずです。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。