「かっこいいかも」で始めた施工管理。未経験だった僕が見つけたやりがい

「正社員は安定」「派遣は不安定」。
そんな固定観念にとらわれ、不安と迷いの中で立ち止まっていた大塚直幸さん(25歳)。
アルバイトや短期派遣として働く日々のなかで、「このままでいいのか」という漠然とした焦りを抱えながらも、将来のビジョンを描けずにいたといいます。

そんな彼が踏み出したのは、未経験の「施工管理職」という新たな分野。そして“派遣”という柔軟な働き方でした。
不安を抱えながらも飛び込んだ新しい環境で、少しずつ手応えと自信を積み重ねていく姿からは、「自分に合ったキャリア」を模索するすべての人へのヒントが見えてきます。

プロフィール紹介 

  • お名前(仮名): 大塚 直幸(おおつか なおゆき)さん 
  • 年齢: 25歳 
  • 現在の職種: 施工管理職(派遣社員) 
  • 勤務先: 都内の中規模建設会社
  • 勤務年数: 1年6ヶ月
  • これまでの職歴: 引っ越し作業スタッフ(アルバイト)、倉庫作業員(派遣)

これまでと今

学生時代から接客業や倉庫内作業などに携わってきた大塚さん。高校を中退したこともあり、学歴に対する引け目がありました。就職活動のやり方もわからず、「とりあえず目の前の仕事をこなす」ことで精一杯な毎日を送っていたといいます。就職という選択肢に踏み出す勇気が持てなかったのです。

そんななかで、ずっと心に引っかかっていたのが、「この働き方を続けた先の未来が見えない」という不安でした。
収入の不安定さもあり、「このままだと実家を出ることもできないし、将来が不安だ」と感じていたそうです。

とはいえ、正社員になるには「未経験」という大きな壁があり、さらに派遣という働き方に対しても「いつ契約が切れるかわからない」という先入観があり、なかなか一歩を踏み出せずにいたと語ります。


働き始める前の状況と悩み

引っ越し作業や倉庫内での仕事は、自分に合っていると感じる部分もあったものの、シフトや収入が不安定で、将来を見据えた生活設計が立てづらいことが悩みの種でした。

「正社員にならなきゃ」と思ってはいても、「そもそも就職活動って何から始めればいいのか分からない」「学歴もなく未経験の分野で本当に雇ってもらえるのか」と、不安ばかりが先に立ち、なかなか動き出せなかったといいます。

さらに、派遣という働き方に対しても、「契約がいつ終わるか分からない」「短期やスポットの仕事が多い」といったイメージを持っていたそうです。

実際、倉庫内作業も派遣で働いていた経験があり、その印象はいっそう強まっていました。そのため、派遣を“長く働くための選択肢”として考えることは、当初はなかったと振り返ります。


転機と行動

そんななか、大塚さんが目にしたのが、「未経験歓迎・施工管理補助」の求人でした。
以前からテレビCMや建設現場を見かけるたびに、「なんとなくかっこいいな」と感じていたそうで、その素朴な直感が背中を押してくれたといいます。

「いつかは大きな建物や施設に関わって、『これ、自分がつくったんだ』と言えるようになれたらかっこいいな」という思いも心のどこかにあったそうです。

とはいえ、不安がなかったわけではありません。
「そもそもどんな仕事なのか」「未経験でも本当にできるのか」と迷いながらも、思い切って登録に踏み切ったといいます。

そんな気持ちに寄り添ってくれたのが、派遣会社の担当者でした。
親身に話を聞いてくれたうえで、「今の経験や人柄を活かせる仕事がある」と伝えてもらえたことで、大塚さんは一歩を踏み出すことができました。

さらに、社宅を借りられることや、未経験でも1ヶ月間の研修があること、そしてその後も継続して学べる環境が整っていたことも決め手となり、建設業界でのキャリアをスタートさせました。


現在の業務と働き方

現在、大塚さんが担当しているのは、建設現場の進行状況の確認や職人さんとの打ち合わせ、資材の発注、現場写真の撮影、日報の作成など、多岐にわたる業務です。

現場を円滑に進めるための“調整役”として、日々さまざまな関係者とコミュニケーションを取りながら働いています。

1日の仕事の流れ: 

8:00 現場に集合・朝礼
当日の作業内容や進捗度合を職人さんと話し合い、変更点や注意点を共有

8:30 作業開始立ち会い
現場を巡回し写真撮影など記録・進捗確認を行う

10:00 打ち合わせ
職人さんや協力会社と、工程・作業割り振り、資材不足の確認や予算について打ち合わせ 

11:00 納品確認・発注作業
資材の納品確認・倉庫チェックなどを行い、不足資材のデータを入力する

12:00 昼休憩
現場近くの飲食店や、現場の休憩スペースで職人さんと食事

13:00 現場を巡回
進行状況の確認や図面チェック、品質確認を行う

15:00 事務作業
工程表の更新し、メール対応などの事務作業を行う 
翌日の段取りを確認し、作業指示書の作成

16:30 現場を巡回
1日の進捗チェック、写真撮影、職人さんと安全確認を行う

17:00 日報作成・業務終了・退勤

入社当初は、専門用語や作業手順がまったく分からず、「自分だけ取り残されているような気がした」と振り返ります。

それでも、分からない言葉をそのままにせず、メモを取り、帰宅後に一つずつ調べることを習慣にしてきました。少しずつ現場の流れが見えるようになり、今では職人さんとの会話もだいぶスムーズになってきたといいます。

「この前、初めて現場の一部を任されて、自分の段取りでうまく進められたんです。
そのとき、『あ、自分もこの現場の一員なんだ』って実感できて、本当に嬉しかったですね」と、笑顔を見せました。

最近では、職人さんから「若いのに頑張ってるね」と声をかけられることも増え、少しずつ現場で認めてもらえているという手応えも感じているそうです。

もっとスムーズにやり取りができるようになりたいという思いから、施工に関する知識を自主的に勉強しながら、日々努力を続けていると言います。


働き方の変化 Before/After

Before(引っ越しアルバイト・倉庫内作業派遣時代) 

  • 働き方:不規則なシフト制で、勤務時間や休日がバラバラ。引っ越しのアルバイトは毎日現場が違い、移動が多く、倉庫作業は通勤時間も長く、拘束時間が長かった。
  • 収入:シフトに入れない日もあり月によってばらつきが大きかった。実家を出て一人暮らしをすることも難しかった。
  • キャリア観:正社員になりたいという気持ちはあったが、就職活動の仕方を教わったこともなかったので、何から始めるのかすら分からなかった。学歴や職歴にも引け目があり、就職という選択肢に踏み出す勇気が持てなかった。
  • 仕事への考え方・やりがい:目の前の仕事に精一杯で、特にやりがいを感じることはなかった。常に「このままでいいのか」と漠然とした不安があり、将来を描けなかった。 

After(現在:施工管理(派遣社員)) 

  • 働き方:週休2日・固定時間での勤務。勤務先の近くに社宅を借りられたことで、念願の一人暮らしを始め、通勤は自転車で10分程度。勤務後も自分の時間が持てている。
  • 収入安定した収入があり、有給休暇もあるため体調不良時でも給与が減ることがなくなった。生活費・趣味・貯金のバランスが取れるようになった。
  • キャリア観:「自分も現場の一員」と感じられるようになり、今は前向きに次の目標を考えられている。施工管理職として正社員を目指したいと思え、将来への不安も少なくなった。
  • 仕事への考え方・やりがい:職人さんと日々現場で関わりながら信頼関係を築き、「任される」存在に。施工管理技士の資格取得という目標もでき、正社員登用を目指している。

これからの目標・展望

大塚さんが今目指しているのは、「施工管理技士の資格を取得すること」。そのためには実務経験が5年必要なので、派遣から正社員へのキャリアアップも視野に入れています。
 
そして将来的には、「これは自分の手で建てた」と胸を張って言えるような現場に携わることが目標だと話します。

かつては「派遣=不安定」と感じていた働き方も、今では「自分に合ったキャリアを試せる柔軟な選択肢」として前向きに捉えられるようになりました。

「最初は“自分にできるのかな”って不安ばかりでした。でも今は、“次に何を学ぼうか”と考えられるようになったんです。そうやって、一歩ずつでも成長していけたらと思っています」と、穏やかに語ります。

自分にできることをひとつずつ増やしながら、現場の一員として着実に歩みを進めていく大塚さんの姿は、 働き方に迷っている人にとって、きっと大きなヒントを与えてくれるはずです。

※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。