最初、派遣は“逃げ”だった。派遣先で出会った一言が、僕の人生を動かした

新卒で入社した会社で心身ともに疲弊し、「とりあえず」の気持ちで、派遣社員として働き始めた前田裕介さん(28歳)。彼にとって派遣は、あくまで一時的な“つなぎ”のはずでした。

しかし、穏やかな職場に物足りなさを感じていた中で、派遣コーディネーターからの意外な一言が、彼のキャリアを大きく動かす転機となります。

自ら行動を起こし、仕事に「本気」で向き合った結果、前田さんは派遣先で正社員登用され、わずか1年後には副店長に昇格。今では「責任を持つ働き方」を実践し、後輩の育成にも力を注いでいます。

今回のインタビューでは、前田さんのこれまでの歩みを通して、キャリアに悩む20〜30代の読者が、自分自身の働き方を見つめ直し、「派遣」という働き方の可能性に気づき、次の一歩を踏み出すヒントを探ります。

プロフィール紹介 

お名前:前田 裕介(まえだ ゆうすけ) さん

年齢:28歳

現在の職種:携帯ショップ 副店長

勤務先:大手総合商社が代理店運営する携帯ショップ

勤務年数:派遣として1年 → 正社員として1年(計2年) 

過去の職歴:新卒で大手通信会社直営の携帯ショップに正社員として就職(約2年) 


これまでと今

新卒で大手通信会社直営の携帯ショップに正社員として入社した前田さん。当時は、高い目標と長時間労働に追われる日々が続いていました。

「目標達成のプレッシャーと、終わらない業務。気づいたら、心がすり減っていました」と、当時の苦しい状況を振り返ります。

約2年で退職を決意し、生活のために選んだのが、携帯販売の派遣という働き方でした。「前職と同じ仕事で経験もあるし、新しいことを覚えなくていい。何も考えずに働けるだろう」と、軽い気持ちで始めたといいます。

しかし現在では、大手総合商社が代理店運営する携帯ショップで副店長を務め、仕事に対する意識は大きく変化しました。

「今は、ただ“働く”のではなく、“責任を持って関わる”という意識になっています。後輩から相談されることも増えました」と、充実した表情で語ります。

かつては「やらされる」側の受け身の姿勢でしたが、今では「やる」側の主体的な働き方へと変わりました。プライベートも含め、心身ともに安定した日々を送っています。


働き始める前の状況と悩み

新卒で飛び込んだ携帯販売の仕事は、前田さんにとって厳しい現実の連続でした。
大手通信会社の直営ショップで正社員として勤務するなか、日々課される高い目標と終わりの見えない長時間労働が、次第に彼の心を蝕んでいったといいます。

「目標達成へのプレッシャーに常に晒され、業務に追われる毎日の中で、気づかないうちに心が擦り減っていくのを感じていました」と、当時の疲弊した心境を語ります。
やがて、肉体的にも精神的にも限界を感じ、約2年でその職場を退職しました。

退職後、生活のために収入を確保する必要があった前田さんは、それまでの経験を活かせる携帯販売の派遣という働き方を選びます。
この時の心境は、まさに「とりあえず」の一言に尽きたといいます。

「派遣ならいつでも辞められるし、厳しい目標もないだろう――そんな軽い気持ちで始めたんです。仕事に対して特にやる気があるわけでもなく、ただ時間をやり過ごしているような感覚でした」と、当時を振り返ります。
その頃の彼にとっては、仕事に情熱を注ぐよりも、最低限の生活を維持し、心に余裕を持つことが最優先でした。

派遣先となった携帯ショップは、大手総合商社が運営する代理店で、前職とは正反対ともいえる環境でした。
残業はほとんどなく、職場の人間関係も穏やかで、コンプライアンスが徹底された「ホワイトな職場」だったといいます。

最初のうちは、その穏やかでプレッシャーの少ない環境に心地よさを感じていたという前田さん。 
しかし、半年ほど経った頃から、その“ゆるさ”に物足りなさを覚えるようになりました。

「お店の雰囲気が少しゆるくて、“目標が未達でもまあいいか”という空気があったんです。最初はそれが心地よかったけど、自分もだんだん飽きてきて…。このままでいいのかな?とモヤモヤするようになりました」。

やがて、その居心地の良さが自身の成長を妨げているのではないかという思いが芽生え、現状を変えたいという漠然とした気持ちが膨らんでいきました。
具体的な「やりたいこと」はまだ見つかっていなかったものの、「環境を変えること」――すなわち転職が、次第に選択肢として浮かぶようになっていったと言います。


転機と行動

「このままでいいのかな?」というモヤモヤを抱えていた前田さんは、転職を真剣に考え始め、担当の派遣コーディネーターに相談しました。
転職先を探していると伝えると、コーディネーターから返ってきたのは、まったく予想していなかった言葉でした。

「辞める前に、もっとお店の人とぶつかってみてほしいです。責任は私が持ちます。どんな反応があっても必ず間に入りますから。前田さんが思っていること、ちゃんと伝えて、それから次に進みましょう。後悔のないように!」

その真剣な言葉に、前田さんは衝撃を受けました。
「自分より若いコーディネーターにそんなことを言われて、恥ずかしいやら情けないやら……でも、なんだか面白くなってきて。“じゃあ、一回本気で提案してみよう”って思ったんです」。

この一言が、前田さんの心に火をつけ、停滞していた状況を打破する大きなきっかけとなりました。

勇気を出して、日頃から感じていた店舗の課題や、「こうすればもっと良くなるのでは」と思っていたことを、店長に直接ぶつけてみました。
すると返ってきたのは、意外にも前向きで温かい言葉でした。

「自分も同じように感じていたし、前田さんが味方になってくれるなら心強い。その提案、一緒に形にしていこうか?」

この瞬間、「仕事が“自分ごと”に変わった」と前田さんは語ります。
店長が提案を受け入れてくれたことをきっかけに、店舗を一緒に盛り上げる企画を立ち上げることになりました。

その日を境に、これまで「指示待ち」だった前田さんの姿勢は一変。自ら課題に向き合い、積極的に改善案を出し、店舗の目標達成に向けて本気で取り組むようになりました。
そんな前田さんの姿勢に触発され、周囲のスタッフにも徐々に変化が生まれます。

これまで受け身だったメンバーが自発的に意見を出すようになり、店舗全体に前向きな雰囲気が広がっていきました。

こうした主体的な姿勢と実績が実を結び、派遣社員としての就業からわずか1年で、派遣先企業から直接雇用の打診を受け、正社員として転籍。さらにその1年後には、副店長へと昇格を果たしました。

まさに、あのときの派遣コーディネーターの一言と、そこから生まれた前田さんの「本気」が、彼のキャリアを劇的に変える原動力となったのです。


現在の業務と働き方

前田さんは副店長として、接客や販売対応をはじめ、新人教育、売上やKPIの管理、販促キャンペーンの企画・運営など、店舗運営全般に幅広く関わっています。

また、店長のサポートや本部との連携も担い、店舗が円滑に回るよう日々現場を支えています。

1日の流れ

9:30 出勤・朝礼準備・掃除
スタッフの出勤状況や本日の来店予約を確認。朝礼で共有する連絡事項やKPIの進捗報告を整理し、スタッフ全員で清掃を行います。

9:45 朝礼・チーム内共有 
開店前にスタッフ全員で朝礼を実施。売上目標、注意事項、キャンペーン情報などを共有し、チームの士気を高めます。

10:00 開店・フロア巡回/接客対応
店舗オープン後は、フロア全体を把握しながら自身も接客に入り、混雑時は即時フォロー。スタッフの接客状況を観察し、必要に応じてサポートやフィードバックを行います。

12:00 交代で昼休憩
この時間帯は来店ピークとなることも多いため、タイミングを見て順番に昼休憩を取得します。 

13:00 バックオフィス業務(実績入力・オンライン会議)
午前中の販売実績をシステムに入力。トラブルや要望のあったお客様の対応履歴を確認し、必要があればフォローの電話を行います。 

15:00 ミーティング・育成業務 
新人スタッフとの1on1面談や、接客ロープレ指導、目標進捗のフィードバックを実施。教育計画の見直しや成長支援にも力を入れます。

16:30 売場・在庫チェック/キャンペーン準備
売場のPOPやキャンペーン展開状況の確認、在庫状況もチェックし、不足があれば発注調整を行います。

17:30 本部対応・報告業務
本部への日報作成、KPI報告、運営上の相談対応などを行い、全体方針との連携を図ります。 

18:00 引き継ぎ確認 
フロアを巡回し、接客中の案件や引き継ぎが必要な業務の洗い出しを行います。明日のシフトや業務予定も確認。

18:30 退勤
必要事項をチームに共有してから退勤。状況に応じて残業・臨時対応が入ることもあります。

「今は、ただ“働く”のではなく、“責任を持って関わる”という意識になっています」と、前田さんは自身の働き方の変化について語ります。
かつては、上司からの指示を待って動く“受け身”の姿勢が中心でしたが、今では自ら考え、行動し、その結果に責任を持つことが当たり前になりました。

その変化は、周囲にも良い影響を与えているといいます。
「後輩から相談されることも増えました」と話すように、職場内での信頼も着実に高まり、頼られる存在へと成長を遂げています。


働き方の変化 Before / After

Before(派遣として働いていた頃) 

働き方:前職で心身ともに疲れ、「経験もあるし、新しいことを覚えなくていい」と、逃げるように選んだ派遣。指示されたことだけをこなす日々で、店舗の雰囲気も「未達でもまあいいか」という空気感。最初は心地よかったが、次第にその“ゆるさ”に飽き始めた。

時間の使い方:残業は少なく安定していたものの、空いた時間を前向きに使う気力はなく、気づけば何となく日々が過ぎていく。変化も成長もない、停滞感を抱えていた。

キャリア観:「派遣ならいつでも辞められる」と、“つなぎ”としての意識が強かった。やりたいことも目標もなく、自分から環境を変えようとする行動力も持てなかった。

仕事への考え方・やりがい:目の前の仕事をただこなすだけで、やりがいを感じる場面はほとんどなかった。「派遣の自分が意見を言う必要なんてない」と、最初から本気で向き合うことを諦めていた。

After(正社員として副店長になった現在) 

働き方:「責任を持って関わる」姿勢で、接客・教育・売上管理・企画など店舗運営全体に関わるように。現場をより良くするために自ら動き、周囲と一緒に成果をつくることにやりがいを感じている。

時間の使い方:残業はほぼなく、プライベートとのバランスも良好。限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮するにはどうすればいいか、前向きに考えながら働けている。

キャリア観:派遣を「成長のチャンスがある場所」として見直し、自分次第でキャリアは変えられると実感。今は「店長になる」という新たな目標に向かって、確かな歩みを進めている。

仕事への考え方・やりがい:かつての受け身な姿勢から、今では「自分が店舗を変える」という主体性へ。提案が形になり、職場に良い変化が生まれることに喜びを感じている。 


これからの目標・展望

キャリアを大きく好転させた前田さんが、次に目指しているのは店長になること。
そしてそれは、単に肩書きを得ることが目的ではありません。「スタッフがやりがいを感じられるお店をつくりたい」と、共に働く仲間への想いを込めた目標です。

現在の店舗にも多くの派遣スタッフが在籍しており、前田さんは今でも派遣という働き方が「つなぎ」として有効な選択肢であると考えています。
しかし同時に、かつての自分のように「何かに迷っている人たち」に向けて、伝えたいメッセージがあります。

「派遣の中にも、成長のチャンスはあるんです」

そして、こう続けます。

「派遣は“つなぎ”でも構わない。でも、ただの“通過点”にしてしまうのではなく、そこで得た経験や出会いが、きっと自分の未来を形づくってくれるはずです」

前田さん自身の歩みが、派遣という働き方が単なる一時的な手段ではなく、意識と行動次第でキャリアを切り拓く大きな可能性になり得ることを物語っています。

今後も「誠実に働くこと」や「目の前の仕事に丁寧に向き合うこと」を大切にしていきたい――そう力強く語ってくれました。

「何となく始めた派遣」が、未来への扉を開いた――前田裕介さんのキャリアは、その事実を証明しています。
たとえ迷いや停滞の中にいたとしても、本気で行動してみることで、自分の可能性を広げ、新たな未来を切り拓くきっかけが生まれるのかもしれません。

※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。