30代を迎え、これからのキャリアに迷う方は少なくありません。
今回お話を伺ったのは、都内の認可保育園で派遣保育士として働く保谷希美さん(30歳)
新卒で正職員の保育士として働くも、仕事の責任や人間関係に悩み、一度は心身のバランスを崩して離職しました。
それでも「子どもの笑顔が忘れられない」という想いから、派遣という新しい働き方で再び保育の現場へ戻ることを決意。 彼女の経験は、「働き方に正解はない」という事実を教えてくれると同時に、キャリアに悩む私たちに「自分にもできるかもしれない」という希望を与えてくれるはずです。
目次
プロフィール紹介
お名前:保谷 希美(ほうや のぞみ)さん
年齢:30歳
現在の職種:保育士(担任補佐)
勤務先:都内 認可保育園(大規模園)
勤務年数:1年(派遣社員)
過去の職歴:短大卒業後、小規模園で正職員として約7年勤務。その後、派遣で一般事務を2年間経験
これまでと今
保谷さんが保育士の道へ進んだのは、短大を卒業してすぐのことでした。小規模な保育園で正職員として7年間勤務し、子どもたちと向き合う日々。園児の成長を間近で見守れる喜びがある一方で、人間関係に悩むことも少なくなかったといいます。
「園児は15人前後で、先生も少人数。毎日のように顔を突き合わせる環境だからこそ、人間関係の摩擦がどうしても起きてしまいました」。
さらに、行事準備や保護者対応、持ち帰り仕事など、保育士特有の多忙さも重なり、次第に心身への負担が大きくなっていきました。
「“子どもたちのため”と頑張るあまり、つい全部を抱え込んでしまっていたんだと思います。体調を崩したのをきっかけに、現場を離れる決断をしました」。
退職後は心身を休めつつ、知人の紹介で派遣の事務職へ。安定した環境での2年間は「働くこと」への不安を和らげてくれた一方で、どこか物足りなさも感じていたと振り返ります。
「子どもたちの笑顔が恋しかったんです。机に向かって書類を整えているとき、ふと保育園での光景を思い出すことがあって」。
一度は離れた保育の仕事への未練と、「また人間関係に悩んで体調を崩すのでは」という不安が入り混じる日々。そんな葛藤を抱えながらも、再び保育の現場に戻る決意をしました。
現在は大規模園で派遣保育士として勤務し1年目。ブランクがありながらも「やっぱり保育士は楽しい」と実感しているといいます。特に心に残っているのは、ある園児が描いてくれた似顔絵と「せんせい、だいすき」という言葉。
「また保育士としてここに立ててよかった、と心から思えた瞬間でした」と、保谷さんは微笑みます。
働き始める前の状況と悩み
新卒で正職員の保育士として働き始めた保谷さんを苦しめたのは、小規模園ならではの人間関係の近さと、保育士特有の重い責任でした。
「園児も先生も少人数だからこそ、毎日顔を突き合わせる中で摩擦が生まれてしまって…。さらに行事準備や保護者対応、持ち帰り仕事も重なり、“子どもたちのため”と抱え込みすぎてしまったんです」。
その結果、心身のバランスを崩し、最終的に「心がぽきっと折れてしまった」と振り返ります。
離職後は派遣の事務職として2年間勤務。安定した日々を送りながらも、次第に「子どもたちの笑顔」が脳裏によみがえるようになりました。
「やっぱり保育の仕事に戻りたい。でもまた人間関係で悩んで、体調を崩したらどうしよう…」――そんな不安がつきまとっていたといいます。 さらに当時は「正社員じゃないといけない」という思い込みにも縛られていました。
「その固定観念が、次の一歩をためらわせていたんです」と保谷さんは振り返ります。
転機と行動
そんなとき、保谷さんの目に留まったのは「派遣保育士」という、自身が知らなかった新しい働き方の選択肢でした。
「『派遣で保育士?』って最初は驚きました」。けれど、求人を読み進めるうちに、園の規模や方針を事前に確認できること、そして困ったときにはコーディネーターに相談できると知り、「もしかしたら今の悩みが解消できるかもしれない」と思ったそうです。
登録会では、これまでの悩みを率直に打ち明けました。すると、園の教育方針や、すでに働いている派遣スタッフからの現場の声まで教えてもらえたといいます。
「“頑張りすぎてしまうタイプなんですね”って言われて、思わず涙が出そうになりました。ちゃんと分かってくれる人がいることが、あの時すごく心強かったです」。
さらに「もしまた悩んでしまったら、別の就業先を紹介することもできますよ」と伝えられ、安心できたことを今も鮮明に覚えているそうです。 派遣という働き方を知り、背中を押されたことで、保谷さんは「もう一度保育の現場に立とう」と決意。
最終的に選んだのは、自宅から少し離れてはいるものの、大規模で保育理念や体制が自分に合っていると感じた園でした。
現在の業務と働き方
現在、保谷さんは3〜5歳児の縦割りクラスで担任の補佐を務めています。大規模園ならではの子どもの数と職員数の多さがあり、その分「役割分担が明確で、無理なく働ける体制が整っている」と感じているそうです。
1日の流れ
8:00 出勤・受け入れ対応
登園してくる子どもたちを迎え入れ、保護者と挨拶や引き継ぎを行います。子どもの体調や家庭での様子を確認しながら、一日のスタートをサポートします。
9:30 朝の会・体操・日中活動の補助
担任の先生と一緒に朝の会を進行。歌や体操の補助をしつつ、日中活動では制作や園庭遊びなどをサポートします
11:30 昼食介助・片付け
子どもたちの食事をサポート。偏食気味の子への声かけや、楽しい雰囲気づくりも大切にしています。その後は片付けや掃除を行います。
12:30 午睡準備・保育記録入力
布団を敷き、午睡の導入をサポート。子どもが眠った後は、午前中の様子を記録にまとめ、必要に応じて担任と共有します。
13:30 休憩
14:30 午睡明け対応・おやつ
目覚めた子どもたちのケアをし、おやつの準備や介助を行います。
15:30 自由遊びの見守り・保護者対応
園庭や保育室での自由遊びを見守りながら、子ども同士の関わりをサポート。降園の時間には保護者対応も行い、その日の出来事を共有します。
17:00 退勤(定時)
引き継ぎや記録を終え、基本的には定時で退勤。残業や持ち帰り仕事はなく、仕事と私生活のバランスを大切にできています。
「以前は“頑張りすぎてしまう自分”に苦しんでいましたが、今は余裕をもって子どもに接することができています。そうすると子どもの気持ちをより深く理解できるようになった気がします」と保谷さん。
派遣という立場だからこそ、程よい距離感で働けることも大きなメリットだといいます。こうした働き方の変化が、子どもたちとの関わり方にも良い影響を与えているのです。
働き方の変化 Before / After

Before(小規模園で正職員として働いていた頃)
働き方:少人数の職員で多くの業務を抱え込み、行事準備や保護者対応、持ち帰り仕事に追われる日々。夜遅くまで作業が続くこともあり、仕事中心の生活だった。
生活スタイル:休日自宅でも仕事をしていることが多く、心身を休める時間が取れなかった。疲れがたまるばかりで、余裕を失っていた。
人間関係:毎日同じ先生と顔を突き合わせる環境で摩擦が起きやすく、人間関係のストレスが絶えなかった。
気持ち・キャリア観:「子どもたちのため」と無理を重ねてしまい、体調を崩して離職。「正社員でなければ」という思い込みに縛られ、先のキャリアを描けなかった。
After(派遣保育士として働く現在)
働き方:大規模園で担任補佐を担当。役割分担が明確で、残業や持ち帰りはなく定時退勤が基本。安心して仕事に向き合える体制が整っている。
生活スタイル:規則正しい勤務と休みで心身にゆとりができ、プライベートの時間も大切にできるようになった。
人間関係:派遣という立場だからこそ、程よい距離感で関係を築ける。さらに、事前に園の規模や方針を相談でき、自分に合った環境を選べたことも大きな安心感につながった。
気持ち・キャリア観:登録面談で「頑張りすぎてしまうタイプ」と指摘され、悩みをくみ取ってもらえたことが大きな転機に。今は「自分に合った働き方を選ぶのも立派な選択肢」と胸を張れるようになり、派遣は自分を守りながら挑戦できる強い味方と感じている。
やりがい:子どもから「せんせい、だいすき」と言われた瞬間、やりがいを心から実感。余裕を持って子どもに接することで、一人ひとりの気持ちをより深く理解できるようになった。
これからの目標・展望
現在の保谷さんが目指すのは、「クラス担任として一人で子どもたちを受け持つこと」。今の園で信頼を積み重ねていければ、そのチャンスもあると聞いており、「ゆっくりでいいから、もう一歩進んでみたい」と語ります。
さらに将来的には、子育て支援センターや保護者向けの相談業務など、保育以外のキャリアにも挑戦してみたいと考えています。そこには、「昔の自分のように頑張りすぎてしまっている先生やお母さんに寄り添える存在になりたい」という想いが込められています。
派遣という働き方へのイメージも大きく変わりました。かつては「不安定」という印象を抱いていましたが、今では「自分を守りながら、やりたいことに挑戦できる強い味方」だと感じています。
「私のように一度離れてブランクのある方や、未経験からでも、派遣は安心して始められる働き方だと思います。サポート体制があることで現場に戻るきっかけになり、ひいては保育士不足の解消にもつながるはずです」と話します。
そして最後に、こう続けます。
「保育士に限らず、多くの人に派遣という選択肢を積極的に活用してほしいです」 保谷さんの歩みは、「働き方に正解はない」という事実を私たちに教えてくれます。自分の「やりたい」という気持ちと「働きやすさ」を両立させる手段として、派遣という働き方はこれからのキャリアを柔軟に描くヒントになるかもしれません。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。