幼い頃から抱いていたのは「声優になりたい」という夢。けれど高校卒業後は「まずは安定」を優先し、不動産会社の正社員として働いていた大山小雪さん(23歳)。
残業に追われる日々のなかで夢は遠のき、「このままでは後悔するかもしれない」という不安が募っていきました。
そんな彼女が次に選んだのは、“派遣”という働き方。時間や環境を見直したその選択は、夢を諦めかけていた彼女にどんな変化をもたらしたのでしょうか。
今回は、大山さんのこれまでの歩みをたどりながら、派遣という働き方が導いた「自分らしいキャリア」の形を探ります。
目次
プロフィール紹介
お名前:大山 小雪(おおやま こゆき)さん
年齢:23歳
現在の職種:コールセンター 受信業務スタッフ
勤務先:大手ITサービス会社(派遣社員)
勤務年数:約1年
過去の職歴:不動産会社/正社員・事務職(約2年間)
これまでと今
大山さんが「声優」という夢を抱いたのは小学生のころ。アニメや洋画の吹き替えを観ながら、「声だけで人の心を動かせるってすごい」と憧れを強めていったと言います。その思いはずっと胸の奥にありました。
しかし高校卒業後は「まずは安定」を優先し、不動産会社に正社員として就職。約2年間、事務職としてのスキルを磨いたものの、夢とは無縁の日々が続きました。
「気づけば夢に一歩も近づけていなくて…。『このままでは後悔するかもしれない』という不安が大きくなっていきました」と当時を振り返ります。収入は安定していたものの、心の奥では葛藤を抱えていたのです。
そんな日々を経て、現在は大手ITサービス会社のコールセンターで受信業務を担当する派遣社員に。定時退社できる働き方を選んだことで、声優養成所に通いながらオーディションにも挑戦できるようになりました。
「お客様から“声が聞きやすくて助かった”“落ち着いた話し方で安心できた”と言っていただけると、自分の声を評価してもらえた気がして嬉しいです」と笑顔を見せます。
今では幼い頃からの夢に直結する「声」を仕事でも強みとして活かせる喜びを実感しています。
働き始める前の状況と悩み
小学生のころから「声で人を感動させたい」と思い描いていた大山さんにとって、声優はずっと大切な夢でした。
しかし現実的な選択として、高校卒業後は不動産会社に正社員として就職。契約書の作成や物件情報の更新、管理会社とのやり取りなどを担当し、事務職としてスキルを磨いていきました。
一方で、残業が多く、繁忙期には終電帰宅も珍しくない日々。夢とは無縁の業務に追われ、心身は次第に疲弊していきました。
「このままでは夢を諦めることになるかもしれない」――そんな危機感が胸に広がっていったのです。
それでも「やっぱり声優を目指したい」という思いは消えることなく、夜間レッスンを開講している声優養成所を調べ始めました。しかし、残業が多い不動産事務の仕事と養成所の両立は、時間的にあまりにも困難でした。
収入は安定していたものの、心のどこかで「夢を諦めかけている自分」と直面し、強い満たされなさを感じていた時期だったといいます。
転機と行動
「それでも夢を追いたい」諦めきれない思いが大山さんを突き動かしました。
養成所への道を一度は断念しかけたとき、「働き方を変えなければ夢も叶わない」と強く再認識し、転職を決意します。
転職活動のなかで目に留まったのがコールセンターの求人でした。求人票を見た瞬間、「これなら夢に近づけるかも」と直感したと言います。
そこには、彼女が求めていた条件である、「声を活かせる仕事」「シフト制で夜間学校に通えること」「高めの時給で生活も安定できること」がそろっていたのです。
とはいえ、応募先が派遣雇用だったことに不安もありました。正社員から派遣社員への転換に戸惑いがあったのは当然のことです。
しかし派遣会社に登録し、担当者から仕組みやサポート体制について丁寧な説明を受けるうちに、不安は次第に期待へと変わっていきました。希望条件に合ったシフトの職場を紹介してもらえたことで、安心して一歩を踏み出せたのです。
こうして大山さんは無事に声優養成所にも合格。仕事と夢を両立させる新しい働き方をスタートさせました。
現在の業務と働き方
大山さんが現在担当しているのは、大手ITサービス会社のカスタマーサポートにおける受信業務です。製品やアカウントに関する問い合わせに対応し、内容をシステムに正確に記録。必要に応じて専門部署へ引き継ぐこともあります。正確さと落ち着いた対応が求められる仕事ですが、その中で「声」を強みにできる場面も少なくありません。
1日の流れ
9:00 出勤・システムチェック
パソコンを立ち上げ、通話システムやマニュアルを確認。前日からの引き継ぎ事項を整理し、当日の準備を整えます。
9:30 電話対応スタート
問い合わせ受付が本格的に始まります。アカウントの設定や操作に関する質問に答え、必要があれば専門部署へエスカレーション。
12:00 昼休憩
同僚と一緒にランチに出かけたり、休憩室で一人で過ごしたりと気分を切り替える時間。午後に備えてリフレッシュします。
13:00 午後の電話対応・記録業務
問い合わせ対応と並行してシステムへの記録を行い、FAQの整理やマニュアル更新にも携わります。
15:00 クレーム対応・フォローコール
難しい案件が入ることもあります。そんなとき、大山さんは声のトーンや言葉選びを工夫し、お客様の気持ちを和らげながら解決に導きます。
17:30 業務整理・日報作成
当日の対応件数や問い合わせ内容をまとめ、翌日の業務に必要な情報を共有します。システムを整理して一日の仕事を締めくくります。
18:00 定時退社 → 養成所へ直行
仕事を終えるとそのまま養成所へ向かいます。
この働き方によって、以前は遠ざかっていた「声を活かす」という夢を日々実感できるようになったそうです。
特にクレーム対応の場面では、怒っていたお客様の声が次第に落ち着き、最後には「ありがとう」と言ってもらえることもあるのだとか。
「声のトーンや言葉の選び方ひとつで相手の感情が変わる瞬間に、声の力を強く実感します。まさに“声で人の心を動かしたい”と憧れた原点を思い出すんです」と語ってくれました。
さらに、職場には同世代のスタッフが多く、互いに励まし合える雰囲気があるといいます。
「無理なく定時退社できるので、毎日のように養成所へ通えています。夢と仕事を両立できていることが、本当にありがたいです」と笑顔を見せてくれました。
働き方の変化 Before / After

【Before】不動産会社(正社員・事務職)
仕事内容:契約書類の作成や物件情報の更新など、事務作業が中心。「声を活かす」場面はなく、スキルは積み重ねても夢からは遠ざかっていた。
働き方と時間:残業が多く、繁忙期には終電帰宅も珍しくなかった。養成所に通う時間を確保できず、夢への行動は制限されていた。
人間関係:狭い店舗で事務を担当していたのは自分だけ。同僚との関係が悪いわけではなかったが、同じ業務を共有できる人や同期が近くにおらず、孤独感を覚えることが多かった。
気持ち:夢に近づけない焦りや後悔を抱え、「夢を語ることすら恥ずかしい」と感じていた。
キャリア観:安定を優先した結果、キャリアは築けても、自分らしい成長や挑戦は見いだせなかった。
【After】大手ITサービス会社(派遣社員・コールセンター)
仕事内容:お客様の問い合わせ対応を通じて「声が聞きやすい」「説明がわかりやすい」と評価されるようになり、自分の声を強みとして活かせるようになった。
働き方と時間:定時退社が可能になり、業務後は養成所に直行できるように。プライベートとのメリハリがつき、夢のための活動に充てる時間が増えた。
人間関係:同世代のスタッフが多く、互いに励まし合える環境。適度な距離感で、過度なプレッシャーを感じずに働けている。
気持ち:夢を持つことに後ろめたさがなくなり、「挑戦している」と自信を持って言えるようになった。お客様からの言葉を通じて、自分の声が評価される喜びを実感している。
これからの目標・展望
現在、大山さんは声優養成所で基礎を学びながら、念願だったオーディションにも積極的に挑戦しています。将来的にはナレーションや洋画の吹き替えに出演する声優になることを目指しています。
派遣という働き方に対する印象も大きく変わりました。
「以前は派遣は“安定しない働き方”だと思っていました。今はむしろ、人生に合わせて柔軟に選べる働き方だと感じています。夢に向かう人にとって強い味方になってくれると思います」と語ってくれました。
「声で人を感動させたい」という、幼い頃からの原点を胸に、大山さんはこれからも仕事と夢の両立を続けていきます。
その姿は、キャリアにおいて「安定か挑戦か」という二択に悩む人々に、両立という選択肢があることを示してくれています。派遣という働き方は、キャリアを途切れさせるものではなく、「次の一歩を踏み出すためのステージ」として可能性を広げる選択肢になり得るのではないでしょうか。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。