地元に戻りたい気持ちはあるけれど、キャリアを諦めるわけにはいかない──そんな板挟みの思いを抱えていたのが、今回ご紹介する平井拓海さん(33歳)です。
大学卒業後は東京で塾講師として働いていたものの、「いつかは地元に帰ってきてほしい」という両親の言葉を受けて、Uターンを意識し始めました。ところが、地元の島根県で見つかる仕事は給与や条件面で厳しいものばかり。将来の暮らしやキャリアの継続を考えると、なかなか決断できずにいたといいます。
そんな平井さんが選んだのは、未経験から挑戦できる派遣でのITエンジニアという道。派遣をきっかけにスキルを磨き、現在は正社員として完全リモートワークを実現。地元にUターンしながら全国の仕事に挑戦できる働き方を手に入れました。
平井さんの歩みは、「故郷とキャリア、どちらも諦めない」という選択が可能であることを教えてくれます。
目次
プロフィール紹介
お名前: 平井 拓海(ひらい たくみ)さん
年齢: 33歳
現在の職種: ITエンジニア(正社員)
勤務先: IT企業(完全リモートワーク)
勤務年数: 2年目(島根Uターン後は3ヶ月)
これまでの職歴: 大学卒業後、東京で契約社員の塾講師として勤務(5年間)。その後、派遣スタッフとしてIT業界へ転身(4年間)
これまでと今
大学を卒業後、東京で塾講師を務めていた平井さん。当時は安定した生活を送っていたものの、「特別なやりがいを感じるわけでもなく、ただ“仕事だから”と割り切っていた」と振り返ります。将来に対する具体的なイメージが描けないまま、現状維持を選ぶ日々が続いていました。
しかし現在の平井さんは、地元・島根にUターンし、完全リモートワークのITエンジニアとして新たなキャリアを歩んでいます。自分が開発した機能がリリースされ、ユーザーから反応が届いたときには「やっていてよかった」と強い達成感を実感。塾講師時代には味わえなかった手応えを日々感じているといいます。
「以前は“仕事=こなすもの”という感覚でした。でも今は“挑戦して成長していくもの”と思えるようになったんです」と語る平井さん。
愛着ある故郷で暮らしながら、全国のプロジェクトに関われるリモートワークという働き方は、まさに彼が思い描いていた未来そのものでした。
働き始める前の状況と悩み
平井さんのキャリアに変化の兆しが訪れたのは、27歳の頃。ご両親から「いつかは地元に帰ってきてほしい」と相談を受けたことがきっかけでした。
長男としての責任、将来的な介護、そして田舎に残る「家を守る」という風習。漠然と覚悟はしていたものの、いざ現実として地元での就職を調べてみると、そこには厳しい壁がありました。
「東京本社に島根支社を置いている企業はほとんどなくて、求人は中小企業やサービス業が中心でした。しかも給与は東京よりも大幅に下がってしまう。転職はしたいけれど、“これでは生活が成り立たない”と感じて、なかなか踏み切れなかったんです」と振り返ります。
そんな中で平井さんは、「リモートで働ける仕事を探すしかない」と考えるようになりました。そこで目を向けたのがITエンジニアという職種です。専門的なスキルを身につければ場所に縛られず働ける。将来的に地元へ戻ってもキャリアを継続できる可能性に大きな魅力を感じました。
一方で、不安も大きくありました。「手に職をつけられるのは心強いと思いました。でも、まったくの未経験で自分にできるのか…。転職サイトを見ても“経験者優遇”“開発経験必須”といった条件ばかりで、入口が見えない感覚でしたね」。
挑戦したい気持ちと、未経験ゆえの不安。
その板挟みの中で、平井さんは次の一歩を模索していました。
転機と行動
迷いと不安を抱える中で、平井さんが出会ったのが「派遣」という選択肢でした。
「当時は完全未経験でしたから、いきなり正社員として応募するのは現実的じゃないと思ったんです。そこでまず“派遣”という形で挑戦してみようと決めました」と振り返ります。
いつかは地元に戻ることを視野に入れていた平井さんは、「経験を積んでからのほうが転職時の条件も有利になるだろう」という現実的な考えも持っていました。派遣会社に登録後、顧客常駐型の派遣先で半年間の研修を受け、保守・運用などのシンプルな業務からスタートします。
「最初にコードを書いたときの緊張感は今でも覚えています。ほんの小さな修正でも“自分がシステムに関わっているんだ”という実感が湧いて、すごく嬉しかったですね」。小さな成功体験を重ねるうちに自信が芽生え、2年が経つ頃には開発案件を任されるまでに成長しました。
平井さんは、「派遣だったからこそ挑戦できた」と強調します。
「受け入れてくれる環境があったからこそ、学びながら成長できました。派遣は“次につなげるための入り口”という意味で、すごくありがたい制度でしたね」。未経験の自分に門戸を開き、スキルを積み上げるための大切なステップになったのです。
そして31歳のとき、派遣元企業に相談し、リモート勤務が可能な正社員求人を紹介してもらいました。派遣で培った経験が評価され、念願だった島根からでもリモートで働けるIT企業への転職が実現。33歳となった今、地元へのUターンを果たし、新たな生活をスタートさせています。
現在の業務と働き方
現在の平井さんは、正社員として完全リモートワークでWebアプリケーションの開発や運用を担当しています。自宅を拠点に全国のプロジェクトに参加できることが、大きなやりがいにつながっています。
1日の流れ(リモートワークの場合)
10:00 出勤・オンラインミーティング
自宅でパソコンを立ち上げ、チーム全体の朝会に参加。進捗やタスクを共有し、その日の作業内容を確認します。
10:30 プログラミング・コードレビュー
午前中は主に新機能の開発や既存システムの改修を担当。コードレビューを通じてチームメンバーと意見交換し、品質を高めていきます。
13:00 昼休憩
在宅ならではの気分転換として、簡単な料理をしたり、散歩に出かけたりすることもあるそうです。
14:00 開発業務・資料作成
午後はプログラミングに加えて、仕様書や設計書の作成にも取り組みます。
16:00 チームとの打ち合わせ
進捗確認や課題の相談をオンラインで実施。「リモートだとちょっとした相談がしにくい場面もありますね」と話す平井さんですが、派遣時代からリモート環境を経験していたこともあり、大きな戸惑いはなかったそうです。
17:00 テスト・デバッグ
開発した機能をテストし、不具合があれば修正。利用者目線で動作を確認する工程にやりがいを感じているといいます。
19:00 終業・進捗共有
一日の作業をまとめ、チームに報告して業務終了。通勤時間がないため、仕事後は趣味や家族との時間を大切にできています。
平井さんが特に実感しているのは、やりがいと達成感です。
「自分が開発した機能がリリースされ、ユーザーから反応が届いたときは“やっていてよかった”と思えます。
リモートという働き方の柔軟さに加え、成果が形となって届くITエンジニアの仕事は、キャリアチェンジによって得られた大きな財産となっています。
働き方の変化 Before/After

Before(塾講師・契約社員時代)
働き方:授業や生徒対応に追われ、毎日が同じ繰り返しのように感じていた。仕事は「こなすもの」という意識が強く、将来の成長につながる手応えはなかった。
収入・待遇:地元企業へ転職となれば収入は大きく下がることが分かり、その差に不安を感じていた。
やりがい:子どもたちに教えること自体は嫌いではなかったが、成果が数値や形になりにくく、大きな達成感を得られる場面は少なかった。
キャリア観:地元に帰ることを考えても、そこでキャリアを積み上げられるイメージは持てなかった。Uターンは「家を守る責任」と「キャリアを諦めること」がセットのように思えていた。
After(現在:ITエンジニア・正社員/リモート勤務)
働き方:完全リモートワークの正社員として、全国の案件に携われる環境を手に入れた。時間や場所に縛られず、生活と仕事を両立できる柔軟な働き方を実現している。
収入・待遇:正社員として安定した収入を得ながら、地元での暮らしを維持できている。派遣時代から積み重ねた経験が評価され、安心してキャリアを続けられる待遇を得られた。
やりがい:自分が開発した機能が世に出て、ユーザーからの反応が返ってくる。その一つひとつが確かな手応えとなり、「挑戦してよかった」と心から思える瞬間が増えた。
キャリア観:派遣という入り口からスキルを積み重ね、正社員としてキャリアを確立できた経験が、今の自分を支えている。Uターン後もキャリアを諦めず続けられると実感している。
これからの目標・展望
平井さんが次に目指しているのは、さらにスキルを磨き、プロジェクトをリードする立場に立つことです。完全リモートワークという働き方には大きな可能性を感じており、「地元にいながら全国の仕事に挑戦できるのは、リモートならではの強みです。島根からでもキャリアを諦めずに挑戦できる、そんな働き方を広めていきたいと思っています」と語ります。
かつては「故郷に戻ること」と「キャリアを続けること」の両立が難しいと感じていた平井さんにとって、リモートワークはまさしく希望の光でした。
また、派遣という働き方に対する認識も大きく変わったといいます。
以前は「不安定」「繋ぎ」というイメージが強かったものの、今では「キャリアを広げる大切なステップ」だと感じているそうです。
「派遣はゴールではなく、挑戦のきっかけをくれる場でした。あの一歩がなければ、今の自分はいなかったと思います」と振り返ります。
未経験からITエンジニアに挑戦し、そして念願のUターンを実現した平井さん。その歩みは、キャリアの岐路に立って迷っている人に「自分にもできるかもしれない」という希望と勇気を届けてくれるはずです。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。