「頑張っても報われない」「自分に合う仕事って何だろう」。
新卒で不動産営業に就いたものの、飛び込み営業や長時間労働に追われ、心身のバランスを崩しかけていた牧野智貴さん(25歳)。
退職後は半年ほど立ち止まり、自分に合った働き方を模索していた彼が選んだのは、派遣スタッフとしての携帯販売の仕事でした。
現在は大手携帯キャリアの直営ショップで勤務し、資格を取得してスキルを磨きながら、心身に余裕を持って働ける環境を手に入れています。
今回は牧野さんのストーリーを通して、派遣という働き方が「つなぎ」ではなく、キャリアを築くための有効な選択肢になり得ることを探ります。
目次
プロフィール紹介
お名前: 牧野 智貴(まきの ともき)さん
年齢: 25歳
現在の職種:携帯販売スタッフ(派遣社員)
勤務先: 大手携帯キャリア直営ショップ
勤務年数: 約1年半
これまでの職歴: 大学卒業後、不動産営業を2年間(正社員)
これまでと今
大学卒業後、牧野さんは不動産営業として2年間勤務しました。
飛び込み営業や長時間労働が日常で、成果が出なければ評価されない環境。次第に精神的にも体力的にも追い込まれていったといいます。
「頑張っても成果が数字に直結しないことも多く、正社員として働きながらも、このまま続けていいのかと悩んでいました」と振り返ります。
退職後は半年ほど休養期間を過ごし、キャリアへの自信を失っていた牧野さん。
しかし「もう一度働きたい」という気持ちが芽生え、派遣スタッフとして携帯販売の仕事に挑戦することを決意しました。
現在は大手携帯キャリア直営ショップで勤務し、資格試験にも合格。自信とやりがいを取り戻しながら、新しいキャリアの形を築いています。
働き始める前の状況と悩み
不動産営業時代、牧野さんは飛び込み営業を繰り返し、数字を追いかける日々を過ごしていました。成果=評価という環境だったため、入社直後はがむしゃらに新規営業に取り組んでいたといいます。
しかし不調が続き思うように成果が出ない中で、次第にそのプレッシャーに押しつぶされそうになりました。「お客様のもとへ行くのが怖い」と感じるようになり、営業活動そのものが大きな負担になっていったと振り返ります。
加えて、暑い日も寒い日も屋外を歩き回る生活が続き、体力的にも精神的にも疲弊。「この働き方を何年も続けられるのか」と将来に不安を感じるようになりました。
正社員としての安定はあったものの、仕事と心身のバランスを天秤にかけたときに「続ける意味があるのか」と疑問が募り、退職を決断。
その後は半年ほど自宅で無気力に過ごし、自分に合った仕事を見つけられないまま、キャリアに対する自信を完全に失っていたといいます。
転機と行動
退職後しばらく休養したものの、「そろそろ働かないと」と転職活動を始めようと考えた牧野さん。しかし実際には、応募や面接に行くことすら億劫に感じる自分がいたと振り返ります。
そんな中で見つけたのが、派遣会社が行う転職相談でした。「まずは相談だけでも」と気軽な気持ちで登録。派遣なら履歴書が不要で、面接もなく職場見学だけで働き始められ、数ヶ月ごとの契約更新。社会復帰の第一歩として、今の自分に合った仕組みだと感じたといいます。
「派遣で働きながら、ゆっくり職務経歴書を作成したり、本格的な就職活動の準備をしよう」と最初は考えていました。
オンラインでの登録会で紹介されたのが、携帯販売の仕事でした。決め手となったのは「時給が高いこと」と「自宅から近いこと」。そしてもうひとつ大きかったのが、携帯販売は屋内勤務で営業時間が決まっており、来店してくれるお客様への案内が中心だったこと。
「他の人からすると大したことない条件かもしれませんが、飛び込み営業や長時間労働に揉まれてきた自分にとっては非常に大きな安心材料でした」と当時の思いを振り返ります。
「勤務を始めてすぐは覚えることが多く不安もありましたが、『まずはやってみよう』という気持ちで一歩を踏み出せました」と語ってくれました。
現在の業務と働き方
現在、牧野さんが勤務しているのは大手携帯キャリアの直営ショップ。来店したお客様への接客や契約手続き、料金プランの見直し提案、店舗ディスプレイの変更、在庫管理など多岐にわたる業務を担当しています。
1日の流れ
11:30 出勤・開店準備サポート
遅番として出勤。午前からの引き継ぎ内容を確認し、端末や在庫のチェック、パンフレットの補充を行う。
12:00 接客開始
新規契約や機種変更、料金プランの見直しなどを担当。お客様の利用状況に合わせた提案や操作説明を行う。
14:30 昼休憩
お客様の来店が一段落する時間に休憩を取る。スタッフ同士でランチに出かけたり、休憩室で一息ついたりしてリフレッシュ。
15:30 午後の接客・事務作業
再び接客に入りながら、在庫確認やシステム入力などの事務作業も並行して行う。
16:30 スタッフミーティング
その日の進捗や売上を共有。キャンペーン対応や翌日の準備について意見交換する。
17:00 夕方の接客対応
仕事帰りのお客様が増える時間帯。契約や料金プランの相談で店舗が最も忙しくなる。
20:00 閉店作業
レジの締め、在庫の最終確認、端末やパンフレットの整理を行う。清掃を終えて店舗を閉める。
20:30 退勤
片付けや日報を提出して退勤。基本的に残業はなく、プライベートの時間をしっかり確保できる。
前職との大きな違いは人との関わり方だといいます。
お店には同年代のスタッフが多く、仕事以外でも交流が盛ん。飲みに行ったり休日にライブに行ったり、成績を競い合ったりといった関係性が「一人で飛び込み営業をしていた頃とはまったく違う喜び」につながっているそうです。
さらに現在は、携帯ショップ側から「正社員にならないか」と声をかけてもらっているとのこと。
日々の努力や成果が認められていることが自信につながり、「もっと頑張ろう」というモチベーションになっているといいます。
働き方の変化 Before/After

Before(不動産営業時代)
働き方:飛び込み営業が中心で長時間労働が常態化。暑い日も寒い日も屋外を回り続け、体力的にも精神的にも疲弊していた。
キャリア観:成果=評価の環境で、数字が伸びなければ未来が描けず、「このままでいいのか」という不安が募っていた。
精神状態:成果が出ない時期が続き、次第に「お客様のもとへ行くのが怖い」と感じるように。退職後は半年ほど無気力に過ごし、自信を完全に失っていた。
やりがい:努力しても成果が直結しないことが多く、頑張りが報われないと感じる場面が多かった。
After(派遣スタッフとしての現在)
働き方:屋内勤務で営業時間が決まっており、残業もほとんどなし。生活リズムが安定し、心身に余裕を持って働けている。
キャリア観:資格試験に合格し時給もアップ。今ではショップから正社員登用を打診され、将来の道筋を描けるようになった。
精神状態:同年代の仲間と支え合い、仕事以外でも交流がある環境に安心感を得ている。孤独感がなくなり、前向きに働けるようになった。
やりがい:商品知識や接客スキルを積み重ね、自分の成長を実感。仲間と成績を競い合えることもモチベーションになっている。
これからの目標・展望
牧野さんは現在、ショップ側から正社員登用を打診されており、その実現に向けて必要な試験や資格取得に向けた勉強に励んでいます。
将来的には、後輩の育成や店舗運営にも関わりたいと考えているそうです。「自分がここまで続けられたのは仲間のおかげ。今度は支える立場として、周囲の力になりたい」と語ります。
派遣という働き方についても、牧野さんの受け止め方は大きく変わったといいます。
「最初は転職相談だけのつもりで登録しましたが、気付いたら一緒に働きたいと思える人や環境に出会えていました。
『派遣はつなぎ』『派遣は短期的なもの』と決めつけずに一歩踏み込んだからこそ、今の自分につながったのだと思います」と振り返ります。
最後に大切にしている価値観について尋ねると、「無理なく、でも着実に前へ進むこと」と即答。
「心身をすり減らすのではなく、健康と生活を大切にしながら成長していきたいです。これからも仲間と共にステップアップを続けていきたい」と力強く話してくれました。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。