近年、企業における人材活用の多様化が進み、出向と派遣の働き方が注目されています。
この2つは一見似ているようですが、実は雇用契約の相手・指揮命令系統・給与の支払い方法など、さまざまな側面で異なる特徴を持っているのです。
この記事では、出向と派遣5つの違いをくわしく解説するほか、自分に合った制度の選び方なども紹介します。
出向と派遣について正しく理解し、自分に合う働き方を選ぶ参考にしてください。
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出向と派遣の基本
出向と派遣は、どちらも自社以外の企業で働く形態ですが、その仕組みや目的は明確に違います。
それぞれの基本的な仕組みと、企業側の目的を理解しておきましょう。
出向の仕組み
出向とは、自社(出向元)の従業員が一定期間、別の会社(出向先)で勤務する制度です。
この場合、労働者は基本的に出向元との雇用関係を維持したまま、出向先での業務に従事します。
おもに企業間の人材交流・技術提供・事業再編などの目的で活用されるのが出向の特徴です。
出向には「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があり、どちらの形態を取るかで雇用契約の状況が異なります。
派遣の仕組み
派遣は、派遣会社(派遣元)に雇用された労働者が、派遣先企業で働く形態です。
派遣労働では、労働者は派遣元との間にのみ雇用契約を結び、派遣先とは直接の契約関係を持ちません。
派遣労働者は法律で定められた派遣期間内で、さまざまな企業で働ける特徴があります。
この制度では、派遣元が労働者の募集・採用から給与支払いまでを一括して担当するのが基本的な仕組みです。
企業が制度を活用する理由
企業がこれらの制度を活用する背景には、それぞれ異なる狙いがあります。
出向はおもに人材育成や技術・ノウハウの交流、グループ企業内の人材最適配置などの目的で実施されることが多く、中長期的な視点で活用されます。
一方、派遣は繁忙期の人員補強・専門スキルを持つ人材の一時的な確保・コスト効率の良い人材活用などがおもな目的です。
比較的短期間での柔軟な人材活用を実現する手段が派遣だと言えます。
出向と派遣5つの違い

出向と派遣は、似ているようで実はさまざまな面で異なります。
その違いを正しく理解することで、自分に合った働き方や企業側の意図を見極めることが可能です。
ここでは、とくに重要な5つの違いについて解説します。
【比較一覧】
比較項目 | 出向(在籍・転籍) | 派遣 |
---|---|---|
雇用契約の相手 | 在籍出向:出向元と継続 転籍出向:出向先と契約 | 派遣元企業と契約 (派遣先との直接契約なし) |
給与の支払い主体 | 在籍出向:出向元 ※場合によって分担 転籍出向:出向先 | 派遣元企業が全額支払い |
指揮命令権 | 出向先が持つ ※在籍出向の場合は出向元も関与することがある | 派遣先企業が持つ |
福利厚生・社会保険 | 在籍出向:出向元の制度 転籍出向:出向先の制度 | 派遣元企業の制度 |
就業期間 | 基本的に中長期(数年単位) ※法的上限なし | 同一組織では原則3年まで |
雇用契約の相手
出向と派遣の最も基本的な違いは、誰と雇用契約を結ぶかにあります。
出向の場合、在籍出向であれば出向元と出向先の両方と雇用関係を持つ状態になることが特徴です。
厳密にいえば、出向先が変わっても雇用契約は出向元と継続されていることになります。
転籍出向になると、出向元との契約は解消され、出向先と新たに雇用契約を結びます。
一方、派遣の場合は派遣元企業とのみ雇用契約を結び、派遣先企業との間には直接の契約関係は生じません。
給与の支払い主体
給与がどこから支払われるかも、それぞれの違いを表すポイントです。
在籍出向の場合、基本的には出向元企業から給与が支払われますが、出向元と出向先で給与を分けあって負担するケースも珍しくありません。
転籍出向の場合は完全に出向先からの支払いとなることが一般的です。
派遣の場合は、派遣先での就業に対する給与であっても、支払いは必ず派遣元企業から行われます。
指揮命令権
日々の業務における指示や命令をする権限についても、仕組みの違いがあります。
出向も派遣も、実際に勤務する場所の企業(出向先または派遣先)が指揮命令権を持つ点は共通です。
ただし出向の場合、とくに在籍出向では出向元も一定の権限を保持していることがあります。
それに対し、派遣では指揮命令権は完全に派遣先にあり、派遣元は業務内容に直接関与しません。
福利厚生・社会保険の取り扱い
福利厚生や社会保険の適用も、両者で取り扱いが異なります。
出向の場合、在籍出向であれば出向元の福利厚生制度が適用されることが多く、社会保険も出向元での加入が継続されるのが一般的です。
転籍出向の場合は、出向先の制度に完全に移行します。
派遣の場合は派遣元企業の福利厚生制度が適用され、社会保険も派遣元での加入となります。
派遣先企業の正社員とは別の扱いになることが多いのが大きな違いです。
就業期間
働く期間についても、両制度では考え方が違います。
出向は基本的に1年以上の中長期にわたることが多く、人材育成や技術交流などの目的から、じっくりと時間をかけて行われるケースが一般的です。
対して派遣は、労働者派遣法により同一組織での就業期間が最長3年と法律で制限されており、比較的短期間の人材活用を目的としている点が特徴的です。
出向の種類
出向には大きく分けて2つの形態があり、労働条件や雇用関係に違いが生じます。
在籍出向
在籍出向とは、出向元企業に籍を残したまま出向先企業で勤務する形態です。
この場合、労働者は出向元企業と雇用契約を継続したまま、出向先企業において業務に従事します。
雇用関係は出向元との間にありつつ、実際の勤務や業務の指示は出向先から受けるのが特徴です。
給与は基本的に出向元から支払われますが、出向先が一部または全部を負担するケースもあります。
この形態では、出向元の福利厚生や社会保険がそのまま適用されることが多く、将来的に出向元に戻ることを前提としている点が特徴です。
転籍出向
転籍出向では、出向元企業との雇用契約は終了し、出向先企業と新たに雇用契約を結びます。
実質的には転職と同様の扱いになるため、給与体系・福利厚生・社会保険などはすべて出向先企業のものが適用されます。
この形態はおもに企業グループ内での人材再配置や、事業譲渡に伴う人員移動などの際に選択されることが多いです。
基本的には出向元に戻ることを想定していない点が在籍出向との大きな違いといえます。
自分に合った制度の選び方

出向と派遣どちらを選ぶべきか迷ったときは、それぞれの特徴と自分のキャリアプランを照らし合わせて考えましょう。
ここでは、両制度のメリット・デメリットや、それぞれが向いている人の特徴を紹介します。
メリット・デメリットを比較
「メリット」
「デメリット」
出向のメリットとしては、新たな環境での経験を積みながらも元の会社との関係を維持できる点や、長期的なキャリア形成に役立つことがあげられます。
反面、自分の意志ではなく会社の都合で行われることも多く、希望しない配置になる可能性がある点はデメリットです。
「メリット」
「デメリット」
派遣のメリットは、多様な企業での就業経験を積める点や、働く時間や場所を比較的柔軟に選べることです。
ただし、雇用の安定性が正社員に比べて低く、キャリアアップの機会が限られることもある点は理解しておく必要があります。
出向が向いている人の特徴
出向が向いているのは、次のように長期的なキャリア形成を重視する志向を持つ人です。
- 企業に定着しながらキャリアの幅を広げたい
- グループ企業内での多様な経験を通じてスキルアップしたい
- 特定分野の技術習得のために集中して学びたい
- 出向元でのキャリア向上を目指している
これらに当てはまるなら、人事部や上司に積極的に相談してみましょう。
多くの企業では社内公募制度や自己申告制度を設けており、自ら希望を伝えることで希望に沿った出向の機会を得られる可能性が高いです。
また、出向先でどのようなスキルや経験を得たいか出向前に明確にしておくと、より充実した出向生活を送れます。
派遣が向いている人の特徴
派遣の働き方は、以下で記載する特徴に当てはまる人に向いている傾向があります。
- ライフスタイルに合わせた柔軟に働きたい
- さまざまな企業での経験を通じて幅広いスキルを身につけたい
- 特定の専門スキルを複数の職場で活かしたい
- 短期間で多様な業界経験を積みたい
派遣の働き方は、とくに育児や介護などとの両立を考えている方にとって、時間や勤務地の自由度が高く選択しやすい形態です。
派遣を選ぶならまず自分のスキルや経験を棚卸しし、得意分野を見極めましょう。
実際に派遣会社を利用する際は、求人内容・サポート体制・研修制度などを比較するため、複数の会社に登録するのがおすすめです。
また、長期的なキャリアプランも相談できる派遣会社を選ぶことで、単発の仕事だけでなく着実なスキルアップにつなげられます。
偽装出向に注意
出向や派遣を検討する際に注意すべき問題として偽装出向があります。
これは、形式上は出向契約を結んでいても、実態としては出向元が雇用主としての責任を果たさず、実際の労務管理を出向先が全面的に担っている状態を指します。
このようなケースでは、出向ではなく実質的に派遣や請負とみなされるおそれがあります。
自分の権利を守るためにも、この問題についての理解を深めておきましょう。
偽装出向の問題点
偽装出向は労働者派遣法に違反する可能性が高く、労働者の権利が適切に保護されないリスクがあります。
具体的に問題となるのは、出向元が実質的な雇用主としての責任を放棄していたり、労働条件が不当に低下したりするケースです。
偽装出向が発覚した場合、企業側には罰則が科される可能性があるほか、労働者にとっても雇用契約の無効や突然の契約解除といった不利益を受けるおそれがあります。
トラブルを避けるチェックポイント
偽装出向のリスクを防ぐためには、とくに在籍出向の契約時に以下の点をしっかり確認することが重要です。
- 出向の目的と期間が明確か
- 労働条件が書面で明示されているか
- 出向元との雇用関係が維持されているか
- 出向終了後の処遇に関する取り決めがあるか
これらが不明確な場合は、安易に出向契約に同意しないことが重要です。
とくに労働条件(給与・勤務時間・福利厚生など)は、口頭の説明だけでなく、必ず書面で確認しましょう。
在籍出向の場合は、出向元との雇用関係が継続されているかが偽装出向を見分けるポイントです。
不安や不明点がある場合は、出向元の人事担当者や労働組合に相談し、必要に応じて労働基準監督署などの公的機関に相談することも検討してください。
事前の確認と適切な相談が、将来のトラブルを防ぎます。
よくある質問
出向と派遣の違いに関して、よくある質問を紹介します。
出向と派遣では福利厚生や社会保険に違いがありますか?
はい、あります。
出向の場合は「在籍出向」か「転籍出向」かによって適用範囲が変わります。
在籍出向であれば出向元の制度が継続されることが多いですが、転籍出向になると出向先企業の制度に移行することが一般的です。
派遣の場合は、派遣元の企業が福利厚生や社会保険の提供主体です。
くわしくは「福利厚生・社会保険の取り扱い」で解説しています。
出向と派遣の給与はどこから支払われるのですか?
出向の場合は、在籍出向であれば基本的には出向元から支払われますが、負担は出向元と出向先で分けあうこともあります。
転籍出向では出向先から支払われ、派遣社員の場合は派遣元企業から給与が支払われます。
「給与の支払い主体」で紹介していますので、あわせてご覧ください。
自分に出向と派遣のどちらが合うかはどう判断すればいいですか?
キャリアの方向性と働き方の希望によって判断しましょう。
たとえば、スキルを活かしながら柔軟な働き方をしたい人には派遣が向いています。
一方で、社内外で経験を積みながら中長期的にキャリアを広げたい人には出向が向いている場合が多いです。
「自分に合った制度の選び方」で比較していますので、ご自身の状況と照らし合わせてご確認ください。
まとめ
出向と派遣は、雇用契約の相手・給与の支払い主体・指揮命令権・福利厚生・就業期間など、さまざまな面で大きく異なる働き方です。
どちらの制度を選ぶかは、自分のキャリアプランや働き方の希望によって判断しましょう。
また偽装出向などのリスクを避けるためにも、契約内容をしっかりと確認することをおすすめします。 この記事が、正しい知識を身につけて自分に合った働き方を選ぶ参考になれば幸いです。
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- 出向と派遣の違いについて理解を深められたでしょうか?これから実際に自分に合った働き方を選ぶとなると、細かな条件や希望の整理が必要になってきます。
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