介護職員初任者研修とは?研修内容や費用、実務者研修との違いも解説

無資格・未経験からでも介護職に挑戦することは可能ですが、まず「介護職員初任者研修」の取得を目指すのが一般的なキャリアプランです。

しかし、初任者研修をどうやったら受講できるのか、どんな内容なのか、どのくらい費用がかかるのか、よくわからない方もいるかもしれません。

この記事では、介護職員初任者研修の研修内容や費用、実務者研修との違いなどをくわしく解説していきます。

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介護職員初任者研修とは?


介護職員初任者研修とは、厚生労働省が認定した介護の基本的な知識と技術を習得するための研修で、介護資格の中でも入門となる資格です。

介護職として働きたいと考える未経験の方が、最初に取得を目指すべき資格が介護職員初任者研修になります。

初任者研修の研修内容

初任者研修の資格を取得するためには、合計130時間9科目の講義と実技演習を履修したのち、筆記試験に合格することが必要になります。

筆記試験の難易度は高くなく、万が一不合格になってしまっても再試験もあるので、落ち着いて取り組みましょう。

カリキュラムの内容は、介護経験がない方にも分かりやすい座学と実技演習を組み合わせたものになっています。

科目研修時間
職務の理解6時間
介護における尊厳の保持
・自立支援
9時間
介護の基本6時間
介護・福祉サービスの理解と医療との連携9時間
介護におけるコミュニケーション技術6時間
老化の理解6時間
認知症の理解6時間
障害の理解3時間
こころとからだのしくみと生活支援技術75時間
振り返り4時間
合計130時間

※引用元:厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について

座学の分野(40.5時間)は通信講座やオンラインで学ぶことができますが、実技演習の分野(89.5時間)は直接養成機関に通わなければいけません。

取得のメリット

無資格でも介護職として働くことは可能なのですが、初任者研修の資格を持っていると身体介護ができるようになります。

介護の仕事は食事や排泄、入浴など利用者の身体に直接触れる身体介護と、料理や買い物、送迎など利用者の身の回りのサポートをする生活援助の2つに分けられます。

身体介護には介護の専門知識と技術が必要となるため、無資格で働く場合は生活援助しか行うことができず、仕事の幅が狭まってしまうのです。

介護職員初任者研修を取得することにより、身体介護が可能になって就職の選択肢が広がります。

特に正社員の募集では、初任者研修の資格を保有していることが最低条件になっている事業所や施設が多く見られます。

初任者研修を保有していると、より高水準な求人に応募できるようになり、資格手当を支給している施設や事業所も多いので、好待遇で働けるというメリットもあります。

旧ヘルパー2級との違い

初任者研修と旧ヘルパー2級を比較すると、学習範囲や内容に大きな違いはありません。

しかし、2013年4月1日の法改正により旧ヘルパー2級は廃止され、介護福祉士初任者研修という名称に変更されました。

背景としては、法改正以前は「ホームヘルパー養成研修」「介護職員基礎研修」など介護資格が複数あり、キャリアパスが複雑で分かりにくい状態でした。

それらの介護資格を初任者研修に一本化することによって、キャリアパスを簡単で分かりやすく、また長期的に働き続けやすくするため、介護資格の体系が見直されました。

キャリアパスの整備のほかに、初任者研修では認知症に関する知識についての学習を増強するなど、現代の介護により即した内容になっています。

初任者研修を受講する方法

初任者研修には受験資格はなく、年齢や経歴に関わらず誰でも受講することが可能です。

ここでは、初任者研修を取得する方法を2つ紹介します。

スクールに通う

厚生労働省が指定した養成機関であるスクールに通うのが、もっとも一般的な初任者研修を受講する方法です。

スクールによって土日コースや夜間コースといったさまざまなコースが用意されており、働きながらでも取得できます。

平均的な学習期間は3か月程度、土日のみ直接通う場合であれば4か月程度、短期集中で取得を目指す場合は1か月程度の時間が必要です。

スクールに通うメリットとして、以下の内容があります。

    ・通信教育を併用しながら学習できる
    ・自分のライフスタイルに合わせたコースを選択できる
    ・学習のサポートが受けられる
    ・ほかの方法に比べて短期で資格取得が可能

スクールに通う場合には費用面の負担があり、一般的な相場は5~8万円程度と言われています。

資格取得支援制度を利用する

資格取得支援制度とは、仕事に不可欠な資格や免許の取得を会社側が支援してくれる制度です。

この制度を導入している企業では、資格取得にかかる費用の一部、もしくは全額を支給してくれます。

事前に社内選考があるケースもあるようですが、基本的には資格取得の意欲があれば受給できることがほとんどです。

資格取得支援制度を利用するメリットとしては、以下の内容があります。

    ・研修費用が安い(無料になる場合もあり)
    ・無資格・未経験からでも介護職として働ける
    ・実際の現場で働きながら資格取得ができる

しかし、最初は無資格・未経験扱いになってしまうので、有資格者より給与が少し低めになるというデメリットもあります。

企業によって、受けられる条件や支援の方法に違いがあるので、求人に応募する前や面接の際に詳しく聞いておくのがおすすめです。

初任者研修を受講できる制度


資格取得支援制度の利用以外にも、ここで紹介する方法を利用すればなるべく費用をかけずに初任者研修を受講することができます。

制度を利用するにはそれぞれ条件があるので、ご自身の状況やライフスタイルに合わせて検討してみてください。

ハローワークの求職者支援制度

求職者支援制度は再就職や転職を目指す求職者が、月10万円の給付金を受け取りながら職業訓練を無料で受講できる制度です。

初任者研修は求職者支援制度の対象に含まれる資格のため、条件を満たせば受講費は無料になります。

テキスト代は自己負担になりますが、およそ1~3万円程度の費用で済むので、スクールで受講するよりも負担はかなり少ないと言えます。

また、訓練開始前から終了後までハローワークから求職活動のサポートやアドバイスを受けることができるのも魅力です。

求職者支援制度の対象になるには以下の条件を満たす必要があります。

・ハローワークに求職の申込みをしていること
・雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
・労働の意思と能力があること
・職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと

引用:厚生労働省HP「求職者支援制度のご案内

給付金を受け取るには離職していること、雇用保険の受給が終了していることが条件ですが、給付金を受けずに訓練の受講のみ申し込むことも可能です。

しかし、定員制で倍率が高く受講できない場合がある、スケジュールや受講場所の融通が利かない、提出書類が多い、面接があるといったデメリットもあります。

メリットの多い求職者支援制度ですが、条件が厳しく人によって向き不向きがあるので、ほかの方法と比較しながら検討するのがおすすめです。

自治体の初任者研修助成金制度

初任者研修助成金制度は、初任者研修の費用負担を減らすため、受講費用の一部または全額を自治体が負担してくれる制度です。

各都道府県や自治体によって内容や条件に違いがあるので、くわしくは検索、もしくは該当の自治体へ問い合わせましょう。

求職者支援制度と同じく定員がある場合が多いので、できるだけ早めに概要を確認しておくのがいいですよ。

ハローワークや自治体で行っている介護資格の取得支援はほかにもあるので、自分に適したものがあるか厚生労働省の「介護労働支援ガイド」でチェックしてみてください。

初任者研修と実務者研修の違い

無資格・未経験から取得可能な介護資格として、初任者研修以外にも介護福祉士実務者研修があります。

実務者研修は初任者研修の上位資格で、初任者研修よりもさらに専門的医療的な知識を学ぶ研修です。

ここでは、この2つの資格でどう違うのかを具体的に見ていきます。

初任者研修実務者研修
受講科目と受講時間9科目130時間20科目450時間
修了試験の有無あり義務化されていない
(実施スクールもあり)
サ責になれるか実務経験3年以上必要
医療的ケア×
介護福祉士資格の受験資格×

受講科目と受講時間

初任者研修と実務者研修とでは11科目320時間もの差があり、実務者研修のほうが取得までに多くの時間が必要です。

実務者研修では基礎から専門的医療的なスキルまで体系的に学ぶため、基礎の部分をメインに学ぶ初任者研修よりも時間や費用が多くかかります。

しかし、先に初任者研修を受講していれば実務者研修では130時間分の受講が免除されるため、無資格者よりもスムーズに資格取得が可能ですよ。

修了試験の有無

初任者研修ではカリキュラム修了後に筆記試験が義務化されていますが、実務者研修では修了試験は義務化されておらず、養成機関によって違いがあります。

サービス提供責任者になれるか

サービス提供責任者(サ責)は訪問介護事業所に配置が義務付けられている職種で、適切な介護訪問サービスが提供できるように管理や調整を行う役割を担っています。

実務者研修を修了すると、サービス提供責任者になることが可能になります。

初任者研修の修了だけではサ責になることはできず、サ責を目指すには3年(540日)の実務経験が必要になります。

医療的ケア

初任者研修では基本的な身体介護の技術を習得しますが、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアを行うには実務者研修の修了が必要です。

実務者研修の受講科目、時間が多い理由として、医療的ケアの習得があげられます。

介護福祉士資格の受験資格

初任者研修の修了だけでは介護福祉士資格の受験はできず、受験のためには3年(540日)の実務経験と実務者研修の受講が必要になります。

初任者研修と実務者研修のどちらを受けるべき?


初任者研修と実務者研修は、学習内容の密度や資格取得後に何が可能になるのかで大きな違いがあります。

しかし、どちらも無資格未経験から受講できるので、どちらから受けようか悩む方もいるでしょう。

ここでは、初任者研修の受講が向いている人、実務者研修の受講が向いている人について見ていきます。

初任者研修の受講が向いている人

    ・短期間でひとまず資格を取得しておきたい人
    ・初期費用を多くかけたくない人

初任者研修は実務者研修と比べると、内容も費用も負担少なく受講できるのが大きなメリットと言えます。

いきなりたくさん勉強が必要な実務者研修を受講するのが不安、初期投資の費用を抑えたい、時間をかけずに資格が欲しいという人には初任者研修の受講がおすすめです。

実務者研修の受講が向いている人

    ・長期的に介護職をやりたい人
    ・サービス提供責任者や介護福祉士を目指している人

はじめから長期的に介護職をやっていきたい、サ責や介護福祉士になりたいと考えている方には実務者研修の受講がおすすめです。

初任者研修から段階を追って介護福祉士を目指すと、最低でも3年の実務経験が必要になってくるため、時間がかかってしまいます。

実務者研修からスタートすることで、時間的なロスが少なく効率的にキャリアアップが可能になります。

ただし、養成機関によっては初任者研修を修了していないと実務者研修を受講できない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

まとめ

初任者研修は無資格・未経験からでも取得可能で、介護業界の入門となる資格です。

初任者研修の資格を取得すると、身体介護を行うことが可能になり仕事の内容や就職の幅が広がります。

資格を得るためには、130時間9科目の座学と実技のカリキュラムを修了したのち、筆記試験で合格する必要があります。

主にスクールに通う、資格取得支援制度を利用することで研修を受講できます。

スクールで受講すると5~8万円ほどの費用がかかりますが、資格取得支援制度やハローワークの求職者支援制度、自治体の補助金制度を利用すれば安価に受講することが可能です。

実務者研修も初任者研修と同様に無資格・未経験で受講できる介護資格で、初任者研修と内容が重複しているため、場合によっては実務者研修を検討するのもおすすめです。

この記事を自分に合った形で資格取得をするための参考にしてみてくださいね。

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