どんな雇用形態で働くとしても、できるだけ収入を増やしたいのが本音ではないでしょうか。派遣で働くことを検討するときに、気になるのはやはり給料のことです。また、すでに派遣社員として就業している方も、今の月収が妥当なのか、もっと収入の高い仕事がないかと考えることがあるでしょう。
そこで今回は、派遣社員の平均月収について調べてみました。性別や年齢、地域別のデータを紹介するとともに、どんな職種だと月収が高くなりやすいかを詳しくみていきます。あわせて、月収を上げるコツについてご紹介するので、ぜひ今後の仕事選びの参考にしてください。
目次
派遣社員の月収は、全国平均で255,574円
厚生労働省が実施した、平成28年度の「労働者派遣事業報告書」によれば、一般派遣労働者の1日あたり(8時間)の平均賃金は11,617円 となっています。1ヶ月あたりの平均出勤日数を22日とすると、平均月収は次のとおりです。意外とたくさんもらえると感じるのではないでしょうか。
11,617円×22日=255,574円
しかし、なかには「こんなにもらっていない!」と思う人もいるかもしれません。派遣の仕事は働く業界や職種が多岐にわたるため、同じ派遣社員であっても大きな収入格差が生じる傾向があります。後ほど詳しくみていきますが、派遣の中でもトップクラスの収入を誇るシステムエンジニアやプログラマーなどのIT系の職種と、最も給与が低い建築物清掃員とを比べた場合、月収ベースで15万円近く差が開くこともあります。また、地域や性別による相場の差も考慮する必要があるでしょう。
派遣社員の平均月収は、性別、年齢、地域によって変わる?
派遣社員の平均月収を、さらに詳しく、性別、年齢、地域ごとにみていきましょう。
年齢別の平均月収
派遣社員の月収は、正社員のように年齢が上がるにつれて増えるのでしょうか。その疑問を解消するべく「賃金構造基本統計調査(平成29年)第1表」をもとに、派遣社員の年齢別平均月収を算出してみました。
<年齢別の平均月収>
年齢 派遣社員月収(円)
20~24歳 223,772円
25~29歳 242,176円
30~34歳 255,376円
35~39歳 256,608円
40~44歳 255,728円
45~49歳 251,504円
50~54歳 249,568円
55~59歳 253,264円
60~64歳 279,488円
上記のように、派遣社員の平均月収は年齢とともに緩やかに上昇し、定年に近い60〜64歳にピークを迎えることがわかります。しかしその差はそれほど大きくありません。年齢による収入格差が少ないのは、派遣社員にボーナスや昇給がないことが関係していると推測されます。
男女の月収格差
日本では男女間における賃金格差が問題になっています。派遣社員に代表される非正規雇用においても、同様の状況なのか調べてみましょう。平成28年分の正規社員の年収は、男性5,397,000円、女性3,733,000円です。一方、非正規社員の場合は、男性2,278,000円、女性1,481,000円となっています。このデータを12ヶ月で割った、男女の月収格差は以下のとおりです。
<男女の月収格差>
正規社員 138,666円 非正規社員 66,417円
非正規社員にはパートやアルバイトも含まれるため、必ずしも派遣社員に関してすべて当てはまるわけではありません。しかしながら、上記の結果をふまえると、正社員に比べて派遣社員のほうが男女の月収格差は小さいといえるでしょう。
地域別の平均月収
派遣社員の月収は地域によっても変わってきます。株式会社リクルートジョブズがまとめた「派遣スタッフ募集時平均時給調査」(2024年8月度)によると、関東、東海、関西の3大都市圏の平均月収は次のとおりです(1日8時間×20日で計算)。やはり日本最大の大都市圏である関東エリアが最も高く、次いで東海、関西といった結果になりました。
<エリア別平均月収>
エリア 時給 平均月収
関東 1,770円 283,200円
東海 1,487円 237,920円
関西 1,480円 236,800円
一般的に都市部ほど最低賃金が高いため、地方に比べると給与が高く設定されています。また、IT系の職種などの専門性が高く、平均月収が高い仕事が首都圏に集中していることも、月収格差を生む要因の1つになっていると考えられます。ただし月収が高い分、生活費も高くなる傾向があり、単純に都市部のほうが条件がよいとはいえないでしょう。
正社員の平均月収との比較
正社員と派遣社員の平均月収を比較した結果は次のとおりです。月収ベースでは、それほど差がないようにも感じられます。職種によっては派遣社員のほうが稼げる仕事もあるでしょう。しかし、年収ベースになると、ボーナスや手当などが含まれるため、格差がさらに大きくなると考えられます。
<正社員と派遣社員の月収の比較>
正規社員 340,912円
派遣社員 255,574円
ただし、派遣社員にはお金には換算できないさまざまなメリットがあります。お金そのものに重きを置くか、それともその他の付加価値を重視するかどうか、優先順位をつけて仕事を選ぶことが大切です。
月収以外の派遣で働くメリット
自分のライフスタイルに合わせて働ける
派遣の仕事は働く期間、時間、勤務地などのさまざまな条件の中から、自分の希望に沿った仕事を選ぶことができます。正社員のように「週5日、9時から5時までの勤務」といった決まった形に縛られる必要はありません。フルタイムでしっかり稼ぎたい、結婚を控えているので3ヶ月だけ働きたい、自宅から近い職場で働きたいなど、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができるのが最大の魅力です。
プライベートと両立できる
家事や育児をしながら働くことは、想像以上に負担が大きいものです。派遣社員の場合、働く時間や休日などの融通が利きやすいので、仕事と家事
を両立しやすいでしょう。勉強や資格取得のために、プライベートの時間をしっかり確保したい人にもぴったりです。
自分のスキルを活かせる
派遣社員には、今まで自分が身につけてきた専門的な知識やスキルを活かせるといったメリットがあります。たとえば英語が得意であれば、語学力を活かせる仕事に就くことができます。しかも、自分で職場を探す手間がかかりません。派遣会社にスタッフとして登録しておけば、あなたのキャリアやスキルに合った仕事を紹介してもらえるでしょう。
仕事の悩みを相談できる
社会人であれば、誰でも悩みの1つや2つはあるはずです。正社員や契約社員の場合、仕事上の悩みや不安を上司になかなか相談できず、自分1人で抱え込んでしまいがちです。しかし派遣社員なら、派遣会社の担当者に気になることや言いづらいことを気軽に相談できます。もちろん悩みの相談だけでなく、今後のキャリアプランのアドバイスを受けることも可能です。
職業別、派遣社員の平均月収ランキング
同じ派遣の仕事でも職種によって収入が変わってきます。ここでは職種別の平均月収ランキングをご紹介しましょう。
<平均月収の高い職種ベスト10>
職種 平均月収
セールスエンジニアの営業 328,940円
金融商品の営業 328,940円
ソフトウェア開発 319,280円
事業の実施体制の企画、立案 317,100円
機械設計 294,460円
放送番組等演出 278,200円
デモンストレーション 271,180円
通訳、翻訳、速記 263,520円
研究開発 261,020円
OAインストラクション 253,800円
<平均月収の低い職種ワースト10>
職種 平均月収
建築物清掃 154,280円
受付・案内 181,700円
駐車場管理等 188,980円
添乗 203,880円
テレマーケティング 204,700円
ファイリング 208,100円
アナウンサー 213,700円
事務用機器操作 215,660円
秘書 218,160円
放送機器等操作 220,440円
(厚生労働省「平成27年度労働者派遣事業報告書の集計結果」より)
以上から、ITスキルや語学など専門知識を必要とする職種になるほど、平均月収が高くなることがわかります。反対に、未経験でも始めやすい単純労働は月収が低い傾向にあるようです。
ただ、月収の高い仕事の場合、難易度が高くてハードな現場である可能性があります。反対に、収入はそれほど高くなくても、やりがいのある仕事もあるでしょう。金銭的な面だけで判断すると後悔することもあるので、総合的に考えて自分に合った仕事を選ぶことが大切です。
派遣社員として月収アップを目指すには?
派遣社員が月収アップを目指すにはどうしたらいいのでしょうか。月収を上げる方法として、以下のものが考えられます。
給料アップにつながる資格やスキルを身につける
高度な技術や知識を身につけているほど、高収入を目指すことができます。ITスキルや語学力など専門的スキルがあれば、派遣社員であっても正社員以上の賃金を稼ぐことも可能です。最初は未経験から始められる仕事に就いて働きながら専門性を磨き、より稼げる職種を目指すというやり方もあります。
多くの派遣会社では、派遣スタッフのスキルアップを支援する制度が充実しており、無料や格安で受けられるPCスキルセミナーやビジネス講座などの研修プログラムを用意しています。給料アップにつなげるために、積極的に利用してスキルアップを図りましょう。
派遣社員から正社員になる
給料などの待遇面や安定性から、正社員になりたいという人もいるでしょう。派遣から正社員になる方法としては、「紹介予定派遣」で働くという選択肢があります。紹介予定派遣とは、派遣先企業で直接雇用されることを前提として、一定期間派遣社員として働く形態の人材派遣のことです。しかし、必ずしも正社員になれるとは限りません。直接雇用が決まった場合、月収面も含めた勤務条件について前もって確認しておきましょう。
時給の高い仕事に就く
時給の高い仕事に就けば、当然ながら月収アップを望めます。月収の高い職種ほど知識やスキルを問われるのは事実ですが、やる気さえあれば未経験から始められるものもあります。たとえば、月収の高い職種の筆頭にあげられるIT系の仕事は、慢性的な人手不足に陥っているため、経験がなくても比較的チャレンジしやすいといわれています。その業界に興味があり、勉強するのが苦でなければ、飛び込んでみる価値があるかもしれません。
まとめ
派遣の平均月収をいろいろな角度からご紹介しました。派遣社員の平均月収は25万円強と、意外と高額を稼げる印象を受けた人も多いかもしれません。
一口に派遣の仕事といっても、職種や地域によって金額が変わってきます。派遣の仕事で月収アップを図るには、専門的な知識やスキルを磨くことが有効です。
現状よりもさらに稼ぎたい方は、たくさん学んで自身のレベルアップに励みましょう。仕事を選択する際の優先順位は、それぞれの価値観やライフスタイルによって変わってきます。総合的に考えて、自分が納得できる仕事選びをしてください。
参考サイト: