結婚後、20年以上にわたり専業主婦として家庭を支えてきた永野佳子さん。
子育てが一段落したとき、彼女の心には「何か始めたい」という思いと同時に、長いブランクや年齢に対する大きな不安がありました。しかし、派遣という働き方を選び、介護の世界に飛び込んだことで、永野さんの日々は大きく変化したといいます。
「もう遅い」という気持ちを乗り越え、新たなやりがいを見つけた永野さんのストーリーは、キャリアに悩む多くの人にとって、自分にもできるかも、という希望を与えてくれるかもしれません。
今回は、彼女がどのように不安と向き合い、派遣という選択肢を通じて自身の未来を切り開いていったのかを伺いました。
目次
プロフィール紹介
永野 佳子さん
年齢:50歳
過去の職歴:結婚後20年以上専業主婦
現在の職種:派遣介護スタッフ
現在の勤務先:東京都内の特別養護老人ホーム
現職の勤務年数:3年
これまでと今
結婚してから20年以上、永野さんはずっと専業主婦として家庭にいました。
お子さんが2人いて、下の子が高校を卒業したタイミングで、「そろそろ私も何か始めたい」という気持ちが芽生えたといいます。しかし、長いブランクは働くことへの大きな不安につながりました。
履歴書を書こうにも、20年以上の空白に躊躇し、「自分にできることなんてあるのかな?」という思いや、「年齢的にも、どこも雇ってくれないのでは?」という気持ちが強かったそうです。家にずっといる中で、「自分が“空っぽ”になっていくような感覚」も抱いていました。
現在は、東京都内の特別養護老人ホームで派遣介護スタッフとして働いて3年になります。介護の仕事はまったくの未経験からのスタートでした。以前は「どうせ私なんて」と思っていたのが、今では「まだまだできることがある」と前向きに思えるようになったといいます。
週3日から始めた勤務も、今では週5日のフルタイムになり、収入も安定して、ちょっとした貯金もできるようになったそうです。仕事では「必要とされている」と実感できる瞬間にやりがいを感じ、これからの目標も明確になっています。
働き始める前の状況と悩み
「働くことへの不安は、本当に大きかった」と永野さんは振り返ります。20年以上のブランクがあり、「自分にできることなんてあるのかな?」という自信のなさ、「年齢的にも、どこも雇ってくれないのでは?」という懸念がありました。履歴書に大きく開いた20年以上の空白期間を前に、尻込みしてしまったといいます。
また、家にいるだけでは「自分が“空っぽ”になっていくような感覚」があり、生活面でも夫の収入だけでは不安があったため、「自分も経済的に支えになりたい」という経済的な自立への思いも、働く大きな動機となりました。
働くことを決めて、最初は何から始めればいいか分からず、まずは正社員の仕事を探したそうです。しかし、求人情報を見ても「経験者のみ」という条件が多い上に、「年齢不問とは言いつつ若い人向け」と感じるものがほとんどで、心が折れそうになっていた時期があったといいます。
転機と行動
正社員の求人探しに難航し、働くこと自体を諦めそうになっていた永野さんを救ったのが、派遣という働き方でした。インターネットで、「未経験OK 介護 派遣」というキーワードで検索したのがきっかけです。
検索結果に出てきたウィルオブ・ワークのサイトを見たとき、「ブランクOK」「資格取得支援あり」といった言葉が目に留まり、まさに探し求めていた条件だと感じたといいます。
「まずは話だけでも聞いてみよう」という軽い気持ちで登録したそうです。面談で対応してくれた担当の方がとても親切で、永野さんの抱える「働くことが不安で…」という気持ちを丁寧に聞いてくれました。
「最初は週2〜3日から始められる現場もありますよ」と提案してもらったとき、「これなら私にもできるかも」と希望が見えたそうです。この柔軟な働き方の提案が、派遣という選択肢に踏み出す決め手となりました。
現在の業務と働き方
介護の仕事は、永野さんにとってまったくの未経験分野でした。実際に仕事を始めてみると、最初のうちは本当に何もわからず、入居者さんの名前も覚えられず、手順もぎこちなかったといいます。しかし、職場の先輩スタッフが「焦らなくて大丈夫」と根気強く教えてくれたおかげで、少しずつ業務に慣れていったそうです。
現在では、食事介助、入浴介助、排泄介助といった身体介護から、記録の記入、レクリエーションの補助まで、幅広い業務を任されています。
1日のスケジュールは、例えば以下のような流れです。
1日の仕事の流れ
8:30 出勤・申し送り
夜勤スタッフからの申し送りを受け、入居者さんの体調や注意点、当日の予定を把握。
9:00 介助業務
排泄介助やおむつ交換、トイレ誘導を行う。居室を巡回し、入居者さんの様子を確認しながら声かけや水分補給の促しを行う。
12:00 食事介助
昼食の配膳・下膳を行い、必要な方への食事介助を実施。誤嚥に注意しながら姿勢や食事ペースを確認し、介助後は食事摂取量の記録を行う。
13:30 休憩
休憩室でお弁当やお菓子を食べながら、ケアスタッフと談笑しながら過ごす。
15:00 レクリエーションの実施やイベントの準備
入居者さんが楽しめるよう、体操・ゲーム・手作業などのレクリエーションを実施。季節行事イベント準備なども行う。
16:00 午後 入浴のサポートや、体操の時間補助
午後の入浴対応では衣服の着脱・洗体・移動の補助を行う。入浴されない方には軽い体操やストレッチなどをサポート。
17:30 申し送り・退勤
夜勤スタッフへ日中の入居者さんの様子や変化を申し送り。記録を整理し、業務の引き継ぎを行った後、退勤。
「毎日あっという間ですよ」と語る永野さん。
仕事をする中で一番のやりがいは、「入居者の方が私の名前を呼んでくれたり、『あんたに会えるとホッとする』なんて言ってくれるとき」だといいます。その瞬間に本当に嬉しくなり、泣きそうになることもあるほど。
「人に“必要とされている”と実感できる仕事なんですよね」と、介護職の魅力を語ります。体力的には大変な部分もあることは認めつつも、「それ以上の充実感があります」と笑顔を見せます。
働き始めてからの変化として、以前は人前で話すのが苦手だったのが、レクリエーションを任される機会が増えたことで、今では落ち着いて話せるようになったと感じているそうです。先日、職場のスタッフから「永野さんがいてくれて助かる」と言われたときは、心から嬉しかったといいます。
人間関係についても、最初は年齢差を心配していたものの、若いスタッフも多く皆さん気さくに接してくれ、「派遣だから」と線を引かれることがないのがありがたいと感じています。スタッフ同士でレクリエーションのアイデアを出し合うなど、積極的に関わっているそうです。
働き方の変化 Before / After

Before(専業主婦時代)
- 「自分にできることなんてあるのかな?」「年齢的に雇ってもらえないのでは?」という気持ち。
- 家にいて「自分が“空っぽ”になっていくような感覚」があった。
- 生活面で夫の収入だけでは不安があり、経済的に支えになりたいと思っていた。
- 最初は正社員を目指したが、経験や年齢の壁を感じ心が折れそうになった。
- 将来の目標が漠然としていた。
After(派遣介護スタッフとして)
- 「まだまだできることがある」と前向きな考え方に変わった。
- 収入が安定し、貯金もできるようになった。
- 仕事を通じて「人に“必要とされている”」と実感できる。
- 体力的な大変さもあるが、それ以上の充実感がある。
- 「永野さんがいてくれて助かる」と言われるなど、貢献を実感できるようになった。
- 介護福祉士国家試験や認知症ケア専門資格取得など、具体的な将来目標ができた。
これからの目標・展望
現在、実務者研修を終えた永野さんは、次のステップとして介護福祉士の国家試験にチャレンジする予定だといいます。さらに将来的には、認知症ケアの専門資格も取得したいという明確な目標を持っています。
「年齢的に遅いかもしれません」と前置きしつつも、今はもう「遅い」ではなく「まだこれから」だと思えるようになったと力強く語ります。この変化は、働くことを通じて得た自信と、仕事へのやりがいがあればこそでしょう。
派遣という働き方については、「私にとっては、本当にありがたい選択肢でした」と感謝の気持ちを述べています。時間や働き方に柔軟性があるため、家庭の事情がある人や、ブランクがある人にとっても始めやすいと感じているそうです。
おわりに
「一歩踏み出す勇気をくれた派遣という仕組みに、心から感謝しています」。
永野さんの言葉からは、自身の状況に合わせて柔軟に働き方を選べる派遣が、新たなキャリアをスタートさせる上で大きな支えとなったことが伝わってきます。年齢やブランクを理由に諦めず、「まだこれから」と未来を見据える永野さんの姿は、私たちに多くの気づきを与えてくれます。
※本記事に登場するスタッフのお名前は仮名、写真はAIによるイメージ画像です。実際の取材内容に基づき構成しています。