「派遣=有期雇用」のイメージをお持ちの人もいると思いますが、現在は無期雇用で働く派遣社員も登場しています。「無期雇用の派遣社員ってどういうこと?」と疑問に感じる人もいるでしょう。そこで本記事では、派遣の無期雇用制度の概要、メリット・デメリットを紹介しつつ、有期雇用派遣社員との違いにも触れていきます。
目次
派遣の無期雇用制度とは、どのような制度?
まずは、派遣の無期雇用制度の概要を詳しく見てみましょう。
雇用期間が定められていない派遣社員のこと
派遣の無期雇用とは、労働期間が定められていない派遣社員を指します(=無期雇用派遣社員)。契約更新期間が定められておらず、有期社員と比べ雇い止めに遭う確率が低いです。
無期雇用派遣社員として働く方法は?
無期雇用派遣社員として働く方法は、大きく2つあります。
・無期雇用派遣社員の求人に応募する
派遣会社によっては、無期雇用派遣社員を募集しています。派遣会社の審査に通過した人は無期雇用派遣社員として働けます。ただし、派遣会社が実施する書類選考・面接に合格しなければなりません。
・有期雇用契約者として5年働き、無期雇用派遣社員になりたい旨を派遣会社へ伝える
有期雇用契約者で5年間働き続けた人は、派遣法の「無期転換ルール」が適用されるため無期雇用派遣社員になれます。ただし、一部の高度専門職や定年後に有期雇用として働く場合など、無期転換ルールが適用されないケースもあるのでご注意ください。 注)無期転換ルールとは有期雇用で5年以上働いた場合、無期社員(正社員・無期雇用派遣社員)に転換されるルールのことです。
正社員と無期雇用派遣社員の違いは?
正社員と無期雇用派遣社員ともに雇用期間の定めはありませんが、雇用形態は異なります。この章では、2つの雇用形態の違いを見てみましょう。
雇用元
正社員の雇用元は勤務先企業ですが、無期雇用派遣社員の雇用元は派遣会社です。無期雇用派遣社員は派遣会社から出向しているだけなので、勤務先企業からすると外部要員になります。
出世の有無
正社員は職場内で出世できるチャンスはありますが、無期雇用派遣社員は基本的に出世できません。ただし、一部派遣会社では昇給制度が設けられており、ランクに応じて給与が変動するシステムもあります。
ボーナスの有無
正社員は勤務先企業からボーナスが支給されますが、無期雇用派遣社員にボーナスは支給されません。ただし、派遣会社独自でボーナスを支給しているケースもあります。無期雇用派遣社員で働くときには、前もって派遣会社に確認しておきましょう。
派遣社員の有期雇用と無期雇用の違いは?
無期雇用派遣社員ではなく、有期雇用派遣社員で働いている人もいます。両者とも派遣社員ですが雇用形態は若干異なります。何が違うのか見てみましょう。
雇用期間
有期雇用派遣社員は雇用期間が定められており、無期雇用時と比べ雇い止めに遭う確率は高い反面、自主退職がしやすいです。一方、無期雇用派遣社員の場合は雇用期間が定まっていない分、雇い止めに遭う確率は低いですが、自主退職するときのハードルが高いです。そうはいっても、無期雇用派遣社員でも自主退職することは可能です。自主退職するときは下記のことに注意してください。
派遣会社の担当者へ退職する旨を伝える
勤務先企業の社員ではないため、退職する旨は派遣会社の担当者へ伝えてください。ただ、一方的に電話越しで退職したい旨を伝えると派遣会社の担当者へ不快感を与える恐れがあるため、直接派遣会社の担当者と会って話すことをおすすめします。
退職する旨を退職希望日の1カ月以上前に伝える
退職希望日の1カ月以上前に退職する旨を伝えましょう。民法第627号では退職希望日の2週間以上前に退職する旨を伝えることとなっていますが「社会保険関連の手続き」「業務の引継ぎ」「あなたの代わりとなる人材の募集」「シフトの調整」など、勤務先企業・派遣会社側でやるべきことはたくさんあります。勤務先企業や派遣会社側への配慮の意味でも、日にちに余裕を持って退職する旨を伝えましょう。
ただ、派遣契約によって退職時のルールは異なります。派遣契約を結んだときには、退職時のルールを確認しておきましょう。
退職理由を明確に伝える
退職理由を明確にすることで、労働条件をよくしてもらえる可能性があります。「給料が安いから辞めたい」という理由であれば、月給を上げてもらえるかもしれませんし「人間関係がこじれた」という理由であれば「勤務地の変更」or「勤務先企業担当者への相談」をしてもらえるかもしれません。「相談しても無駄だろう」という気持ちを持たずに明確に伝えてみてください。
試験の有無
有期雇用派遣社員の求人へ応募した場合、就労前に企業担当者と顔合わせはしますが書類選考・面接試験はありません(紹介予定派遣を除く)。しかし、無期雇用派遣社員の求人へ応募する場合は、書類選考・面接試験を課されるケースが多いです。
無期雇用派遣社員のメリット・デメリット
無期雇用派遣社員として働くメリット・デメリットを見てみましょう。
メリット
・月給制の案件が多い
月給制であれば1カ月間の勤務日数に関係なく、一定額の給料が毎月支給されます。年末年始やゴールデンウィークなど、出勤日数が少ない月でも同じ給料が支給されるのは嬉しいですよね!
・幅広い業務を経験できる可能性がある
無期雇用派遣社員として同じ職場で長期間働き続け、いろいろな業務を任せてもらえればスキルアップにつながります。正社員での転職を考えている人は、仕事に関するスキルが身につけば就職活動で役立つ可能性もあります。 また、勤務先企業の社員として働きたい場合は、雇用元の派遣会社に求人を紹介してもらえるケースもあるので相談してみてください。
デメリット
・職場を選べない
無期雇用派遣社員は、派遣会社から指示された場所で働かなければなりません。場合によっては、職場(勤務先企業)が急遽変わることもあるため臨機応変に対応する能力も必要です。 無期雇用派遣社員で働いているときに、職場を変えてほしい旨を派遣会社へ伝えても替えてもらえるとは限りません。数年間同じ職場で働き続けなければならないこともあるのでご注意ください。
・勤務先企業の福利厚生を利用できない
無期雇用派遣社員は勤務先の社員ではないため、勤務先企業の福利厚生は原則使用できません(勤務先企業によっては、無期雇用派遣社員が利用できる福利厚生を用意している場合もあります)。例えば、勤務先企業が指定する宿泊施設を社員が格安で利用できても、無期雇用派遣社員の場合は利用できないということです。 ただし、無期雇用派遣社員は派遣会社が用意している福利厚生であれば利用できます。勤務先企業よりも派遣会社の福利厚生の方が充実しているケースもあるので、慎重に派遣会社を選びましょう。
有期雇用と無期雇用のどちらがよいか見極めよう
有期雇用・無期雇用ともにメリット・デメリットがあるため、ライフスタイルに応じて働き方を考える必要があります。将来を見据えた働き方を選択すると、あなたによい影響を与えてくれるかもしれません。派遣会社の担当者へ相談しながら働き方を決めてみてはいかがでしょうか?
参考サイト:
参考書籍:
有期労働契約の無期転換がわ