【スタッフインタビュー Vol.01】難しい状況をやりがいに変えて

現在、病院勤務で活躍している先輩スタッフさんにインタビューを行いました。

仕事を始めたときはどんな気持ちだったか、この先どんな風に壁を乗り越えていったらいいか、周りの方と良好な関係を築くにはどうしたらいいか……。
そんな悩みを抱えている方へのヒントとなるよう、先輩スタッフさん自身が体験したことを話していただきました。

今回は、病院の受付で活躍している鈴木さん(仮名)のお話です。
※仕事内容:病院受付(内科、精神科)

鈴木さんの仕事とは

――鈴木さんは病院勤務だと聞きましたが、具体的にはどんなお仕事ですか?

現在の勤務先は、内科と精神科で合わせて約360床の入院施設がある大きな病院です。私は外来受付と入退院の手続きをしています。
実は5年前まで契約社員として勤務していたことのある病院で、戻る前は整形外科や産婦人科で看護助手などもしていました。

――最初に病院で働くことになったきっかけは何ですか?

10年ほど前、当時登録していた派遣会社から紹介されたことがきっかけでした。
元々は接客のお仕事をしていて人と接するお仕事が好きだったことと、医療事務の資格などは必要ないということだったので挑戦してみようと思ったのです。

複数の病院を経験

――いくつかの病院勤務の経験をされている鈴木さんですが、新しい環境で働くときに不安や困ったことなどはありましたか?

病院や診療科目、担当するポジションによってやることが全く違うので、その都度新しく覚えていく必要があります。今の病院に戻るときも、以前は使っていなかった電子カルテが導入されていて、覚えられるか不安でした。
また、スタッフが変わっていたのでうまくやっていけるかな、という不安はありました。

仕事をする上で大切なことは患者さんの気持ち

――では、病院勤務をする上で何か共通して大切にしていることはありますか?

病院に来られる患者さんは、具合が悪い方なので、気持ちを汲み取ることが大事だと思っています。

たとえば、お年寄りに車椅子を用意するといったように、患者さんから言われなくても必要なことがないかを考えます。視野を広く持ち、常に全体の状況を見るように心がけています。

とくに、精神科は、患者さんが急に危険な物を取り出す、物を投げるといった可能性があるところです。そのため、患者さんの様子を見て、常に緊張していないといけない状況は独特かもしれません。

他の科には他の科で注意しなければならない点は変わってきます。
状況に応じて学んでいくことを意識し、対応できるようにしておくことを心がけています。

――確かに、病院は患者さんの様子を気にしていなければならないので大変ですね。

対応が難しい場面では仕事仲間と連携をとる

――患者さんの中には対応が大変な人もいたのではないでしょうか? そういった患者さんの対応となった難しい場面では、どう乗り越えていますか?

正直、そうした難しい場面を挙げたらキリがないくらい多くあります。
何か不満があればそれに合う対応ができるのですが、理由のないことや、病院側に非のないことで急に怒り出したりする方もいます。そういったことに耐えられない方は1週間程で退職してしまいます。
また、そういった場面に多く接していると、自分が精神的に追い詰められたりする可能性もあるようです。

特に精神科だと、患者さんの妄想や幻聴などの症状からありえないようなことをおっしゃられることも多いです。
患者さんは興奮してお話しされているので、そういう時は別のスタッフが横から冷静にフォローに入るようにしています。

たとえば、「この人が私の保険証を盗った」と言う方がいたら、横のスタッフが「いえいえ、あなたの保険証はちゃんとここにありますよ」と見せてあげたりとか。
1対1だと興奮されている方も、複数人数で対応することで段々と落ち着いてもらえるのです。

こうしたノウハウは、病院ごとに様々だと思います。
ですが、共通して言えることは、常に周りの状況に気を配り、スタッフさんと連携をとることがとても大切だということです。

――なるほど。対応する側の精神にも負担がかかりそうですね。鈴木さんは、そんな厳しい場面をどう乗り越えているのでしょうか……その強さや前向きさはどこから来ているのですか?

私は、元々人とコミュニケーションをとることがとても好きな性格なんです。
急に理由なく怒られたりなど、こちらが悪くないのに……と悔しい思いをする場面はありますが、患者さんは普段はとても素直な方たちです。諭すようにお話しをし、丁寧にご説明をすることでわかってもらえます。

相手の背景や事情を察しながらその方に合わせた対応をすることにやりがいを感じ、モチベーションに変えることができるから続けられているのだと思います。

パソコンなど得意でないこともありますが、人と接することに関してだけは自信を持っているので、難しい状況でも率先して自分が対応するよう心掛けています。

――元からコミュニケーションをとることが好きだったのですね。では、スタッフさんとの連携を保つためにもコミュニケーションを大切にしているのでしょうか。

もちろん、コミュニケーションは大切です。ただそれだけではなく、信頼関係を築くことが重要であり、お互いを理解する必要があります。
そのためには、自分の考えを持ちつつも、まずは自分自身が心を開いて柔軟であることだと思っています。相手がどうしたら自分に興味を持ってくれるのか、どうしたら悩みを相談してくれるかを考えて接するように心がけています。

――鈴木さんは、難しい状況を精神的な負担と思うのではなく、やりがいに変えているのですね。なかなか簡単にできることではありませんが、どんな仕事の方にも参考になるお話です。

まとめ

――病院の仕事で、ほかにもやりがいを感じるところはありますか?

患者さんやご家族から感謝されることがやはり一番嬉しいです。
入院施設がある病院の場合、手続きで接する時間が長かったり、面会に来るご家族と頻繁に接する機会も多いため、気軽に話しかけていただけるようになります。
入院期間が長期に渡るとご家族も不安になられていることが多いので、誰かに話を聞いてほしいという方がとても多いです。

今の病院では少し特殊ですが受付の横に相談窓口というものを設けており、先生やケースワーカーが対応する一歩手前の「ちょっと話を聞いてほしい」の段階で受付担当者がご相談にのる場を作っています。
専門的なカウンセリングではありませんが、ゆっくりとお話しを聴くことでご家族の不安をやわらげられているのかなと思います。

――治療などだけでなく、そうした話を聞いたりすることで不安を和らげるというのも大切なことですよね。

それに、自分自身も患者さんやご家族と心の距離が近くなるので、退院なされたときはとても嬉しいですし、「支えになってくれてありがとう」「あなたがいてくれてよかった」と仰っていただくと、役に立つことができたんだな、とやりがいを感じます。

――とても嬉しい言葉ですね。これからもお仕事頑張ってください。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えての感想

難しい場面に遭遇することが多いお仕事でも、前向きにお仕事をされている鈴木さん。
丁寧なコミュニケーションで、難しい状況さえも自分自身のモチベーションに変え、患者さんやご家族の喜びをご自身の喜びとしてお仕事をされていました。
鈴木さんのお話からは、患者さんやご家族と接するときも、病院内のスタッフと接するときも、まずは「自ら心を開く」ことで信頼を得ていらっしゃるのだなと感じました。

新しくお仕事を始められたみなさんにも、参考になるポイントがあったのではないでしょうか?

まずは今自分自身がどんなことに不安を持っていて、これからどんな風になりたいのかをイメージしてみましょう。
もちろん、一人で悩む必要はありません。誰かと共有して自分の状況を理解してもらうだけでも、気持ちが落ち着くこともあります。些細なことでも、ぜひ担当コーディネーターに相談をしてみてください。

きっとみなさんが自分らしく活躍できるヒントがどこかにあるはずです。
それを一緒に探していきましょう。