SIerに将来性はある?今後も必要とされる理由と市場価値を高める方法

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この記事でわかること

  • そもそもSIerとは何か
  • SIerの課題と今後必要とされている理由
  • ITエンジニアが市場価値を高めるための対策
編集者プロフィール
ウィルオブテック事業部
早川 直良

エージェント歴13年。これまでコールセンター、オフィスワークなど幅広い領域にて、約5万人の転職支援実績がある。現在はIT領域に特化し、これまでのエージェント経験を活かした中長期的なキャリア支援を強みとしている。

システム開発や導入を請け負い、年収アップも期待できると話題のSIer。しかし昨今では、SIerの将来性を疑問視する声が目立ち始め、不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、SIerの将来性が不安視される要因と、今後の展望、またSIerでエンジニアが生き残るためには何が必要かについて紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

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SIerとは?歴史やSEとの違いを解説

そもそもSIerは、どのような職種を指すのでしょうか。ここからはSIerの概要や混同されがちなSEとの違いを詳しく解説します。

SIer(エスアイヤー)の概要

SIer(エスアイアー)とは、複数のハードウェア・ソフトウェアを駆使して、部門横断型のITシステムを生み出すSI(システムインテグレーション)に「~をする人」という意味のerをつけた和製英語です。

具体的には、システムの統合者となり、ITシステムに関わるコンサルティングから開発・運用までをワンストップで管理する企業を意味します。

SIerの歴史

SIerは、1987年に当時の通商産業省が「システムインテグレーション認定制度」を創設したことから広まるようになりました。

その当時、世界的に業務のIT化が進んでいたのですが、多くの日本企業は、資金不足やノウハウの欠如から遅れをとっている状況でした。

そこで通商産業省が日本企業のIT化を進めるために、打ち出したのが「システムインテグレーション認定制度」です。システムインテグレーション制度に登録した日本のSIer は200社を超えると言われます。

この制度により、日本の企業が自社のシステム化を信頼性の高いSIer に外注できるようになり、資金やノウハウなしでもシステムの投資ができるようになりました。

90年代にはインターネットの急速な普及やWindows の登場などにより、業務のIT化がより進みました。SIer 大手のネットマークス、ユニアデックスなどが創設されたのもこの時期です。

SIerとSE・SESとの違い

SIerと似た言葉にSE(システムエンジニア)やSES(エスイーエス)というものがあります。SIerが「システムの開発・運用を請け合う企業」であるのに対し、SEとは「システムの設計や開発を行う技術者」を指し、多くのSEがSIerに勤務しています。

一方SESとは「エンジニアをクライアントに派遣するサービス」のことです。主にクライアントの元へ客先常駐し、エンジニアの労働時間に応じて対価を支払ってもらいます。

SESよりもSIerのほうが仕事の幅が疲労、上流工程から携われるというメリットがあります。SIerとSESの違いをより詳しくしりたい方は、ぜひ下記の記事もチェックしてみてください。

▼関連記事
SIerとSESの違いについてはこちらのSIerとSESの違いを紹介!契約形態や必要スキルなど様々な観点で徹底比較でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。

SIerに「将来性がない」と言われる理由

昨今では、「SIerには将来性がない」「SIerは”オワコン”だ」という声が一部の人が声高に主張しているという現状があります。

これは、SIer というビジネスモデルが時代にそぐわなくなってきていると推察できます。以下の項目で、「SIerに将来性がない」と言われる原因について詳しく見ていきましょう。

開発スキルが身につきにくい

まず、SIer に勤めていてもスキルが身につきにくいという可能性があります。SIerはシステムに関する高度なスキルを持ち合わせていると認識されがちです。

しかし実際には、技術的なスキルが要求されない顧客との調整や資料の作成、納期管理などディレクターのような作業がメインとなる場合もあります。

このように事務的な管理作業がメインになってしまうと、プログラミングやシステム設計・構築など専門スキルを習得する機会が少なくなってしまいます。

エンジニアとしてスキルアップを目指したい人にとっては、業務内容が物足りなく感じてしまうでしょう。

クラウドサービスの普及

SIer の将来性に疑問符がつく原因として、次にあげられるのがクラウドサービスの普及です。

SIerがもっとも得意としているのは、企業のニーズにあわせた独自のシステムをゼロから開発することでした。

しかし、Amazon AWSやGoogle Cloud Platform など、大手企業のクラウドプラットフォームサービスや、PaaS・SaaS※とよばれるサービスなど、一からシステムを開発しなくても使える既存のサービスが次々と登場しています。

クラウドサービスには使いたいサービスのみ利用できるという柔軟性も持ち合わせており、多くの企業のニーズを満たしています。さらにコスト面も優れているため、自社システムを開発するよりも、クラウド型サービスを採用する企業が増えているのです。

※PaaS
「Platform as a Service」の略で、ソフトウェアが稼働するための環境(ネットワーク・ハードウェア・OS)をインターネット経由で提供するサービスです。
※SaaS
「Software as a Service」の略で、インターネット経由でソフトウェアを使用するサービスです。ユーザーは必要なソフトウェアのみの利用が可能です。

加えて、SIer にとって大きな利益をもたらしていたシステムの運用や保守も、クラウドサービスにとって代わられているという現状があります。

企業が自社内にサーバーハードウェアを設置するオンプレミスと比べ、クラウド型のサーバーであれば、運用・保守を行う手間が省けます。SIerとしては、運用・保守料の利益を失い、大きな損失になりかねません。

優秀な人材不足

従来SIerは多くの優秀なエンジニアを多数雇用できていたため、大きな案件の同時進行が可能でした。

しかし昨今では、労働者人口の減少に伴い、慢性的にエンジニアが不足している状況です。みずほ情報総研の調査データ※によれば、今後約16万人~約79万人のIT人材不足が予測されています。

参照元:みずほ情報総研「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)-IT人材需給に関する調査-」

SIerのエンジニア不足の原因として、「スキルアップが難しい」「労働環境がよくない」といった職場環境の問題が多く指摘されています。職場環境が改善しなければ、優秀なエンジニア達はSIerを敬遠してしまうのは当然です。

優秀なエンジニアの獲得が難しくなっていることは、IT業界におけるSIerの競争力に陰りを落とす要因のひとつともいえるでしょう。

多重下請け構造による格差

以前から問題となっているSIerの雇用形態として、多重下請け構造が挙げられます。多重下請け構造とは、顧客から直接依頼を受ける「元受け企業」の下に、一次・二次・三次受けという多数の下請け企業が連なっている状態のことです。

多重下請けでは、最下流の下請け企業の待遇がもっとも悪くなる傾向にあります。その結果、下流で実際に作業をするエンジニアの労働環境は過酷な上に、高収入は期待できません。また業務の幅が限定されており、スキルアップを図るのも難しい状況です。

しかし昨今の働き方改革に伴い、世間からも批判を集めているため、多重下請け構造のビジネスモデル自体が見直しを求められています。

国際競争力が弱い

SIerというビジネスモデルは日本国内特有であるため、海外進出がしにくいのも懸念点として挙げられます。

というのも海外では、システムの一部を外注することがあっても、開発から運用まで、すべてを外注するケースは非常に稀です。

IT業界は欧米諸国をはじめとした海外がリードしており、日本のビジネスモデルが採用される可能性は低いことが予測できます。そのため、SIerの将来性が危惧されているのです。

SIerが今後も必要とされる理由

ここまで、SIerの将来性が懸念される問題について触れてきましたが、結論としてSIerがすぐになくなってしまうわけではありません。

その証拠として、SIerの市場規模は近年も成長を続けています。IT専門調査会社「IDC Japan」の予測によれば、2021年以降にはSIの案件の再開などにより設計・構築セグメントの2020年から2025年のCAGR(年平均成長率)は3.0%になる見込みです。

※参照元:IDCJapan株式会社「国内ITインフラストラクチャサービス市場予測を発表」

ここからは、SIerが今後も必要とされる理由について掘り下げます。

官公庁・金融機関からの大型案件発注

まず、SIerは官公庁・金融機関などから大型案件を定期的に発注される傾向にあります。セキリュティ面が特に重視される官公庁・金融機関の大型案件は、信頼と実績のあるSIerでなければ受注が難しいといわれています。

今後も官公庁・金融機関からの案件受注が、SIerの収益に大きく寄与すると予測できるでしょう。

DX需要拡大による追い風

DX(デジタルトランスフォーメーション)需要が増している点も、SIerにとって追い風となっています。DXは、2004年にスウェーデンのウオメ大学教授が打ち出した「ITの浸透が人々の生活をよい方向に変化させる」という概念に基づくものです。

DXの主な成功例としては、「クリック一つで注文ができるインターネットショッピング」「銀行のオンラインバンキングサービス」「並ばずにタクシーを手配できるタクシー配車サービス」などが挙げられます。

企業がDXに対応するためには、古いレガシーシステムを更新し、スマートフォンからでも予約ができるプラットホームへ移行していくなど、大幅なシステムの入れ替えが必要です。

大規模なシステム移行をする際、長年のシステム開発・管理のノウハウと経験の蓄積があるSIerが頼りにされるでしょう。新しいシステムの選定や導入に関して、コンサルティングの役割が求められることもあるかもしれません。

働き方改革による労働環境の是正

現在は働き方改革により、長時間労働の是正が進んでいます。多重下請けについても、2重派遣の禁止など厳しく取り締まれりが行われています。そのため、ブラックな職場環境が原因となるエンジニア離れは、改善が見込まれるでしょう。

今後は時代の流れに合わせて「SIerはシステムの専門家である」という強みをより強化していけば、たとえIT業界のトレンドの移り変わりが早かったとしても、形を変えてサービスを提供し続けられます。

SIerの将来性が不安なITエンジニアが今できることとは?

SIerの将来性に怯えるのではなく、今後を見据えてITエンジニアとして市場価値を高めていくことが大切です。市場価値を高めるために具体的に心がけたいことを主に5点挙げていきます。

専門スキルを培う

前提として、専門スキルの習得は欠かせません。専門スキルがあればライバルよりも一歩リードしたキャリアの形成が叶います。

専門スキルの選択については、需要の増大が見込まれる分野に目を向けて培うのが効果的です。

例えば、昨今であれはIoT・AI などの分野です。IoT・AIの開発に現在はPythonが多く採用されているので、Pythonの習得を優先的に行うと良いでしょう。

またWeb系エンジニアも、ソーシャルメディアやインターネットショッピングなどの利用者が増えていることから、安定した需要があると考えられます。

PHPやJava でのバックエンドエンジニアとしてのスキルを身につけ、さらにフロントエンドエンジニアとしてJava Scriptをはじめ、広い範囲で活用できる言語をマスターする方法がおすすめです。

特にWeb開発系は若い従業員が多い傾向にあり、年功序列制による風通しの悪さがなく、フラットな職場で働きたい人にとってはうれしいポイントです。

そのほか、プログラミングスキルがあれば、マネジメント職に就いた場合、エンジニアと技術的な話をする際に役立ちます。

▼言語「Java」については
こちらのJavaの将来性は今でも高い?Javaエンジニアに必要なスキルも紹介でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。
▼言語「COBOL」については
こちらのCOBOLの将来性は? 特徴や今後エンジニアが身につけるべき知識を紹介でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。
▼言語「PHP」については
こちらのPHPの将来性はある?現在のPHPエンジニアのニーズを詳しく解説!でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。
▼言語「Python」については
こちらのPythonの将来性は高い?メリットやできることも合わせて解説!でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。

副業でスキルを高める

もし、会社でどうしても技術的な工程に携われず、事務的な作業をやらなければいけないという場合は、副業でスキルを高めるという方法もあります。

報酬条件を高く設定しなければ、「スキルが低くても受注できる案件」も見つかるはずです。案件をこなしていくうちに、自然とスキルアップし、実績としてアピール材料をつくれるでしょう。

しかし、副業をする際は、会社の就業規則をきちんと確認してから始めてください。また、本業が疎かにならないよう、注意が必要です。

▼関連記事
エンジニアの副業についてはこちらのエンジニアの副業事情を紹介!メリットや案件の探し方や注意点でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。

マネジメントスキルを身につける

上流工程やプロジェクトリーダー・プロジェクトマネージャーなど、プロジェクトと人をまとめられる能力を持つ人は、常に多くの企業が求めている人材です。

プロジェクトリーダーが持つ交渉力やリーダーシップ能力などのヒューマンスキルは場数を踏んで身につくものでもあるため、一朝一夕には築けません。このスキルを身につければ、ほかの人と差をつけられるでしょう。

さらに、プロジェクトマネージャーは予算配分や納期管理など収益に関わるケースも少なくありません。統括的なマネジメントスキルを身につければ、年齢を重ねても市場価値が高い人材として重宝されます。

▼プロジェクトマネージャーの転職については
こちらのプロジェクトマネージャーに転職するには? 向いている人や将来性を解説でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。

独立する

SIerでシステム開発や導入を担当して経験やスキルを積んだあと、フリーランスとして独立するという選択肢もあります。フリーランスであれば、会社や上司の意向に関係なく「自分がやりたい」と思う案件に絞ることも可能です。

ただし独立するためには、専門知識が必須になります。業務に欠かせない知識はもちろん、確定申告時に必要な税務や法律関係についてもおさえておきましょう。

また、フリーランスを取り巻く状況は日々変化しています。自分の身を守るためにも、自主的な情報収集が必要です。

自社開発を行う企業に転職する

市場価値の高いエンジニアを目指すのであれば、自社開発を行う企業に転職する方法もおすすめです。自社開発企業は高いスキルが求められるため、その分エンジニアの質も高い傾向にあります。

また、新しいスキルを学習する機会も豊富に設けられています。働きながら着実にスキルアップできるのは、大きなメリットと言えるでしょう。

ほかにも自社開発企業は、実力や実績で仕事の評価してくれる傾向が多いため、向上心やモチベーションを維持しやすいのも魅力です。

▼関連記事
SIerの転職についてはこちらのSIerからの転職おすすめのキャリアパスは?転職先の選び方でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。
SIerと自社開発の違いとは? 必要なスキルや転職での注意点を解説」でも詳しく解説していますのでぜひ、参考ください。

まとめ

今回は、SIerの将来性がないと言われる原因やSIerが今後も必要とされる理由、ITエンジニアとして市場価値の高め方について解説しました。

SIerは優秀な人材不足や海外進出が難しく将来性が懸念される一方、官公庁・金融機関からの大型案件やDX推進が追い風となり、すぐになくなってしまう可能性は低いでしょう。

とはいえSIerに限らず、技術進歩のスピードが著しいIT業界で生き残るには、自己努力が欠かせません。自分に必要なスキルを着実に積み上げていくことが大切です。

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よくある質問

Sierは将来性がある仕事でしょうか?

はい。将来性のある職業といえるでしょう。「SIer には将来性がない」という声もありますが、今後は時代の流れに合わせて、システムの専門家という強みを強化していけば、IT業界のトレンドの移り変わりが早かったとしても、形を変えたサービスを提供していける見込みが大いにあります。詳細は「SIerが今後も必要とされる理由」で説明しているので確認ください。

Sierが市場価値を高めるために身につけるべきスキルはありますか?

キャリアのスタートの時点から、専門スキルを身につけていくか、それともマネージメントとして管理能力を身につけるかなど、何を強みとするかにつき大まかな指針を持っておいたほうがいいと言えます。将来を見据えて「経験を重ねる=仕事のキャリア」働き方を選ぶことは、非常に大切です。そのためには受け身ではなく、主体的にキャリア形成を行う必要があります。詳細は「市場価値を高めるための対策」で説明しているので確認ください。

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